第33話ギミックボス系神獣

「私だけで神獣討伐とか無理じゃないかしら」


私は姿勢を低くして。物音を立てないように止まっている。巨大ネズミたちは私の事を認知できていないようだがボスネズミのこいつは私の事を認知している。こちらを見ている。


「キーーー!」


ボスネズミが叫ぶと巨大ネズミたちが私の方を向いて酸を吐き出す。


「鳴き声で場所を伝えてるのね」


無形の釣り竿エレフェリアロッド


私はボスネズミに向かって透明な刃を飛ばす。けれどもボスネズミに攻撃は効かなかった。


「固い? いえ、なんだか別のなにかに防がれたような」


まるでそれは透明な何かに阻まれたかのようだった。私は釣り竿の位置を正確に把握できる。だからわかる。あのボスネズミの皮ふにぎりぎり届いていない。


「なにかしらのギミックがあるってこと?」


キーになりそうなのは、ボスネズミが動かないこと。巨大ネズミを使った攻撃、周りに錯乱した瓦礫。これはもしかして巨大ネズミの酸をボスネズミに当てる? そうだ確かこのネズミたちは目が見えていない。それなら行けるかも。


私はボスネズミと巨大ネズミの間に立つ。


「キーーーーー!」


ちょうどよくボスネズミが叫ぶ。目の前の巨大ネズミも酸を吐こうとしている。私は巨大ネズミから酸が出るのを確認してギリギリのタイミングで避ける。


「キ、ギーーーーーーーーーーーー!!!!」

「苦しんでる!」


私は釣り竿を一本の大きな剣の形にしてボスネズミに向かって振り降ろす。けれどもまたあのボスネズミには攻撃は届いていないようだった。


「一回じゃ足らないの?」

「ギギギーーーー!」


すると巨大ネズミが3匹から6匹に増えネズミたちが走り始めた。


「これは...難しそうね」

「キーーー!」


《飛翔》


私は空に逃げる。


「ギイィ! ギギャアアアアアアア!」

「え? なに? 偶然当たったの?」


ボスネズミはよろよろになって立っているのもギリギリのようだ。すると巨大ネズミたちがその場から逃げるように立ち去っていく。


「見捨て...られた?」


巨大ネズミたちは地下から地上へと昇って行く。自分たちよりも弱い奴らが蔓延る地上へと。


地上へと巨大ネズミは上がると疑問を抱く。一匹たりとてネズミがいないのだ。


「おや、1段階上のネズミたちが逃げ出してきたのか。じゃあさよなら」


その言葉とともに聞こえる爆音。これは地下深くにいる咲には聞こえ、外にいた離兎達には聞こえなかった。そして、この島にはボスネズミ以外居なくなった。


「今のは? 地盤が緩いの? 急がないと」


私はボスネズミと私の間に透明な盾を挟む。そしてネズミを取り囲むように壁を作る。ネズミは今だよろけている。その間に仕留める。ネズミを取り囲んで上から大量の大鉈を用意する。


「行け!」


その無数の刃は重力に従いボスネズミの元へと落ちて、落ちて。突き刺さった。


「ギーーーー! ギュギャギャ! ギ...ギ......」

「...倒したのかしら?」


私は念には念を込めてもう一度透明な剣を突き刺した。けれどもネズミからは嘆く声一つ聞こえず私の行動は完全な死体撃ちとなった。


『やあお疲れ様』

「ぬぎゃきぽひゃりゅ!?」

『君の母国語かい? それは』

「私は生まれも育ちも日本よ。それで、このボタンを押せばこのカプセルが開くのかしら」

『やってみれば?』

「他人事ね」


私はためらいもなくボタンを押す。もうはやく帰りたいという気持ちが強いからだ。カプセルが開き中から一人の男の子が出てくる。


「う、う~ん。誰かな僕を起こしたのは」

「私は咲、あなたの名前は?」

「先に君の名前を教えてくれてありがとう咲くん、僕の名前はハーム・ストリングス。天才研究者さ」

「僕、何歳?」

「ああ! 今僕の事ガキとか思ったんだろ! 僕はこれでも32だよ!」

「ええ!?」

『(人は見かけみよらずだね)』

「それでだよ。この島に大量発生した神獣はどうなったんだい?」

「そこに親分の死体があるわ」

「なんと! この傷。まさか君が倒したとでもいうのかい?」

「そうね。とりあえず私たちのいかだに戻りましょう《帰宅》」

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