第31話ベタすぎるバレ方
くやしくもこの服の効果は本物なのだろう。ためしに一度ネズミ神獣の近くを歩いてみたが私の耳には足音は聞こえずネズミたちも反応しない。今度は少し声を出してみたが反応はない。これで反応があれば欠陥品として返せると思ったのに。
『(神の力を侮るなよ)』
何だろうか? 今一瞬嘲笑うような感情が私に向けられた気がする。
「それにしてもここ絶対普通なら寒いわよね。すごい霧みたいなの見えてるし」
『その服、ちゃんと防寒対策できてるんだなぁ』
「無駄にすごいわね。む!だ!に!」
『それを強調されてもねぇ。というより防寒対策できるのは無駄じゃなくて普通にすごくない?』
「それ自分で言うものなの?」
そんなことを呑気に話しながらネズミ(神獣)の横を通り過ぎて部屋の捜索へ向かう。そして今回からは資料とかそのあたりは一時的に収納しておくことにした。そうじゃないと読んでいる間に日が明けている可能性もある。からそうならないための対策だ。
「ちょっと不気味」
『君は独り言が多いね』
「悪かったわね」
『悪くはないさ。それに話し相手なら僕がいる』
「あまり話したくないわ」
『つれないね~』
私はそそくさと歩く。ここは島の真ん中にあった平屋の地下だ。地下はなんだか洞窟みたいな雰囲気を感じる。あと気温はあのバックヤードにある冷凍室くらいだと思う。
~~~~~~
一体どれほど潜っただろう。体感だともう20回くらいは地下に潜ったんじゃ?
『君これに気づかないのかい?』
「え?」
『これ無限に戻されてるよ』
「嘘」
そうだ。先ほどから同じ位置にネズミが居たりした。なにより景色が変わらなかった。そういうふうに設計していただけかもなんて思ったがそんなことは無かったのだ。
「つまりどこかでその機能を停止させる必要が?」
『あるぅ』
「どこか教えてくれない?」
『やだよぉ』
「そう言うと思った」
ネズミが周囲に常時いるからナビゲーターさんに聞くことはできない。私は周囲を見渡し有一確認しなかったネズミが大量に群がっているところに向かう。ここは私が見逃していたわけではない。生理的に拒絶したのだ。
「この奥に行くしかないってわけね《飛翔》」
私はネズミたちの頭上を飛んで奥へと進む。奥へ進むとそこには人間ほどの大きさのネズミがいた。
「あれのとなりにあるあのボタンが例のなの?」
『そうっぽいねぇ』
「私嫌よ。ここからでもかなり匂うのにこれ以上近づくのは無理」
『努力「無理!」
『しょうがない。てってれ~んファ〇リーズと消〇力~~』
「それだけじゃこの空間は時間かかるわよ」
『×50~』
「それだけの数どこから出てきたのよ」
『秘密だね』
「盗んだとか?」
『......』
え? 嘘でしょ? まさか本当に盗んだの? それにしても効果すごいわね。もうにおい楽になって来たわ。
「これなら」
私はゆっくりとボタンのもとに近づく。すると突然巨大ネズミが動き出し始めた。
「ひっ」
『あれは...喋ったらバレるよ』
「な、(なんで? この服のおかげでバレないんじゃないの?)
『あいつはそこら辺にいた神獣の上位互換的存在でその服でも会話程度の音ならぎりぎり聞かれるんだよ』
そのネズミは私が先ほどまでいた位置を見ている。見ていると思ったら急に口を開き口から何かを吐き出した。強力な酸だ。先ほどまで私のいた位置をドロドロに溶かしている。
『静かにあそこのボタン押しに行こうか』
(そうする。そうしないと死ぬ)
『ww』
(人の命がかかっている状況なのによく笑えるわね)
『いい性格だろ?』
(ええ。ホント)
私は細心の注意を払いながらボタンに近づく。すると足元で、いや後ろの方でミシリと嫌な音がした。私の出した音じゃない。その後ろには別のネズミがいて木の上に乗ったことでそこから音がしたのだ。
そして巨大ネズミはこちらを向いた。向いて口を開けようとしている。
(ああなんでこんなベタなピンチの陥り方するのよ)
『運がないねぇ』
《飛翔》私は急いでスキルで飛びそのままボタンを押して急いで戻る。
「最初からこうしてればよかったわね」
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