第29話これを助けというならばあなたはきっと鬼なのでしょう

「あれ...なのかな?」

「あれ...だろうな」

「ちょっと僕は遠慮しとくというか、いかだを堪能しとくよ」

「いやもういっそのこと誰もいなかったってことにして探索諦めようぜ」

「その案いいかもね」


そこのあなたもしかしてなぜ私たちがこんな会話をしているかと思いましたか? それはですね。単純にグイダの言っていた座標の地点に来てみると誰がどう見ても神獣であろう存在が複数確認できたんですよ。見た目? でっかいネズミ? そして今の会話です。


「私ちょっと《飛翔》で上空から建物の中探しに行ってくるよ」

「行ってら」

「おねがい!」


《飛翔》


最速で近くの建物まで近づいてちょっとだけ減速、一瞬で中に入って地面に降りる。


「見た限りだと数は10匹くらいだった?」


一番近くにあった建物は結構小さい。中には神獣はいないようだ。


「また資料がいくつか落ちてる。読まないとね」


私は2人が船で待っていることも忘れて資料を読み漁った。昔から私は本が好きだったからこういうのは苦じゃない。


「ふう。こんなものね」


気が付くと日は高く登っておりおそらく2時間ほどたったのだろう。


「あ、やばいやばい!」


《帰宅》


私は急いでいかだに戻る。離兎達には1時間くらいでいったん戻ると伝えていたためもう2時間たっているからあの2人だから何をするかわからない。


「突撃するぞ」

「うん」

「ちょっと待って!」

「うえ?」

「咲さん帰ってきた!」

「ごめんなさい。資料を読むのに没頭しちゃって」

「なるほどね」

「で、どうだったの?」


私は一息ついて一度落ち着く。落ち着いて閉じた目をゆっくり開いて真剣な目をする。


「この島、生きている人がいる可能性があるの」

「なにぃ!?」

「なんで?」

「読んだ資料の中にこうあったの「私は最後にあの神獣について記録を残し地下深くで迎えが来るまで眠ろうと思う」って」


「地下深くねぇ。どれくらい深いんだか」

「最下層ってことだと思うけどどこから入るのかな?」

「とりあえずそこを目指して進むのみね」

「それで神獣のことも書いてあったか?」

「ええ、あの神獣は一匹一匹はそこまで強くない。船喰いよりも少し弱いくらいなんだって」

「でも?」

「そう、でも大体10匹くらいで固まって動いてるから実質的にはとても強いんだって。でも一番問題なのはここじゃない」

「まぁだなにか問題あんの?」

「それがここにいるのは10匹の団体が10個くらいらしくて下手に手を出すと100匹に喰い殺されちゃうらしい」

「ホラー過ぎない?」


せめて透明化や音が立たなくなるスキルがあれば侵入できたかもしれないが私たちはそんなものはもっていない。え? 【影皆無デスシャドウ】があるだろうって? あのスキルはあくまでも姿がわからなくなるだけ。あの神獣は目が見えてなくて空気の流れと音で周りを把握しているらしい。


ナビゲーターさん助けて。


『助けてあげよう!』

「!! その声は」

『そう! よく夢で会う僕だ!』

「咲......大丈夫か? 精神トチ狂った?」


......


(助けてくれるってなにを?)

『これを2着君に貸そう』


すると目の前に2着のメイド服が出てきた。


(?! 何これ?)


『それはただの服じゃないぞ。消音効果に防御効果、反射効果とか色々ついてんだからね』

「なあ今なんか咲の目の前落ちてこなかった?」

「気のせいじゃない?」

「魚影だったか?」

「そうだよ」


私はそれが出てきたとき瞬時に収納をした。恥ずかし過ぎる。


(もしかしてこれが助けって言うの?)

『そうだよ。それ以外に何があるって言うの?』

(変態!)

『wwwいやでも今の持ち合わせで一番強いのそれだからというか特殊効果がついてるのそれしかないんだよねぇ』

(それでも、それでもこれだけは無理! すこしくらい弱くてもいいからほかのお願い!)

『無理だね。他のは消音効果ないし防御効果もない』

(嘘でしょ)

『本当。だからそれを使う以外捜索をすることはできない。なんならこの島攻略しないとこの島から出れない』

(出れない?)

『この島機械の力によって潮の流れが一度入ってきたら出れないようになってるの。出るためには地下にある装置を止めるしかないよ』

「嘘って言って」


こうして羞恥心との戦いが今始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る