EP15 エントリーオブエターナル -Entry of Eternal-

第42話 届かないなら届くまで

 棒立ちのクラウンに対して拳を振り抜き、今までの怒りや憎しみを超えた一撃を放とうとしていた。コイツを止めればもう終わりなんだ。そう言い聞かせながら。

「オルト!」

 トリラからの警告でハッとなった。クラウンの背中から何やら黒いモヤが立ち込めていた。いや、それだけでとどめとくにはどうも禍々しすぎる。

「何を…!する気だ!」

 急いでバックステップで距離を取ろうとしたが一足遅かったようで、元々いた場所から気付いたらその位置が見えるくらいに移動していた。いや、クラウンから喰らった攻撃によってぶっ飛ばされたと言ったところであろう。ぶっ飛ばされた身体は盛大に壁に打ち付けられ呼吸ができなくなる。

「クヒュゥ…、があ!呼吸を、しろ…!」

 当たりどころが悪かったらしく、どうにも呼吸がうまくと整わない。

「オルト!?」

 慌てた表情でトリラが駆けつけてくれたが、多分俺が吹っ飛ばされた瞬間が見えなかったのだろう。シト以上に速い。アレだけ視界から外すなと叩き込まれたはずなのにいつ攻撃されたのかがわからなかった。

「トリラ、大丈夫。何だよあれ。もっとヤバいのだったのかよ」

 正直いうと勝ち目が湧かないくらいにはこの一撃で分からされたと思う。それこそ次元が違うなんて言葉が正しいかもしれない。

「弱気になっちゃダメよ。今から能力を使うわ。いけるよねオルト」

 トリラからEOEのパスが通い先ほど負ったダメージが回復する。みなぎる思いと覚悟をその身に宿す。

「ああ、そうだな。ありがとうトリラ。すぐに決着をつける」

 この戦いがどう転んでもトリラは見届ける意気込みでここにいる。それを尊重してオレはこの場にいる。もはやトリラを守っているとは逆で、トリラから守られているなんて思った方がいい気もする。

「いくよ」

 オレも覚悟を決めクラウンに飛び込む。ここでコイツを再起不能にしなければもっと被害が出る。いや、オレ関連で広がっているとも考えれるが、そこは変に考えないようにしなければ。まずクラウンの顔に一髪殴ろうとするが、あっさりと拳を手のひらで止められてしまう。

「あははは!そうはいきませんよ!もっと力を解放しなさい!そうでなければ私は超えられませんよ!」

 拳や蹴りを繰り出すが全てをいなされてしまう。まさに余裕という言葉が当てはまるだろう。どうにかこれを打開したいと思っていた矢先に能力での強化がまたされる。

「トリラ!?」

 突然、さらに強化を施されて驚く。

「もっと持っていって!私の思いを!力を!」

 さっきよりも二倍、三倍くらいになる強化になって、身体のあらゆる機能の向上が手に取るようにわかる。

「ああ!ッラアァ!」

 またしてもクラウンに攻撃を仕掛ける。今までの攻撃とはわけが違うくらいには攻撃の質が段違いだ。それでもまだ届かない。すんなりと攻撃を躱されて距離を取られる。

「ええ、大変よくなってきました。でも、まだ出せますよ。ですが、それよりも先は未知領域。使ってみせるのもいいですけどね」

 何か挑発的な口調でトリラを唆すように告げる。

「バカが!そう簡単に乗るわけないだろ!オマエはこれ以上何も喋るな!」

 クラウンが喋ったことをかき消すように叫ぶ。振っても当たらない攻撃を何回も当てようとクラウンに向けて放つが、そう簡単に当たるわけもなく全ていなされたり返されたりする。そんな勝機も見出せないことを続けた。

「オルトくん、私は残念ですよ。もうそろそろ私も仕掛けますね」

 クラウンはそう言った途端に素早い攻撃を仕掛けてくる。ギリギリ防御は間に合ったがすかさず連撃を仕掛けてきたため次の防御が間に合わず攻撃をもらってしまった。そこからはとてつもない速度で攻撃が継続される。腹部に手刀での突きからの膝蹴り、回し蹴りから首根っこをを掴まれて地面に勢いよく叩きつけられた。

「あがッ!」

 こちらの攻撃が当たらないとかそういうレベルならまだ良かったが、クラウンの攻撃性能はオレより遥かに上をいっている。幸いなことに地面に叩きつけられた時ギリギリ意識は保てていたが、すぐには立ち上がれないほどのダメージを受けていた。

「そこで見ていてください。そこの能力者から全てを絞り出してあげますよ」

 オレにそう告げるとクラウンはトリラの方へと身体を向け進んでいく。

「待て!」

 ダメージが思ったよりも重かったようで這いずってクラウンを追っていく。

「アナタには負けないは絶対、オルトと私の力でアナタを【倒す】」

 またしても今までよりも強い能力のパスが繋がる。いつも以上にトリラの思いや覚悟が身体を駆け巡り、トリラと同化しているくらいの認識になる領域まで来ていた。

「オマエは通さない!」

 さらに強化された恩恵によって立てなかったほどの痛みが消え、トリラとクラウンの間に割ってはいる。

「ええ、その調子です。もっと!もっと!!」

 クラウンは興が乗ったと言わんばかりに自身の狂気を剥き出し、オレに攻撃を仕掛けてくる。だが、クラウンの攻撃を見切れるほど身体の機能が向上していた。すぐにクラウンからの攻撃を弾いてカウンターと言わんばかりにアッパーをクラウンの腹部に命中させる。

「喰らえ!」

 拳は腹部にめり込み、クラウンを吹き飛ばすように薙ぎ払う。吹っ飛ばされたクラウンはまだまだ表情は余裕なようでしっかり受け身を取り、またこちらへと攻撃を仕掛けるために向かってくる。

「ええ!ええ!!もっと楽しませてください!!!」

 自身の欲望が爆発するかのようにこちらに連撃を仕掛けてくる。最初の方は防御はしっかりとできていたが、中盤に入ってくるにつれてだんだんと防御がギリギリになってきているのがわかる。

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