第40話 その先を見通すため

 ヴェルの攻撃を防ごうと防御の体勢をとったがそれすら掬い取るように奥へと弾き飛ばされる。

「いッ!」

 弾き飛ばされた勢いが強すぎて壁に背中を打ち付ける。

「大丈夫かぁ!カレア!」

 援護の射撃をしながら走るティルから声がかかる。

「ああ!」

 まあそんなこともなくかなり今のでダメージが来てる。

「クッソ…」

 痛みはそうだが士気も下がっている。これじゃあ勝てるビジョンを見出すことができない。

「それでもか…!」

 言うことの聞かない身体を無理やり動かしてヴェルの方へと向かう。

「ーーーーー!」

 またあの鋭い叫び声によりまた身体のいうことを制限される。痛みとこの音圧で膝から崩れ落ちる。

「ああああ!クソ!」

 この圧から抜け出したくても抜け出さなくて叫ぶ。ティルも何回か攻撃を喰らってまともに動けていない。ここで止まったら全滅なのに!

「ーー…、ー!」

 少しずつ叫び声が小さくなりヴェルが攻撃をする構えに出る。

「まだ、これからだろ…!」

 ギリギリを楽しめよ俺。今までエッジを走ってたけど今までよりもずっと楽しいだろこの逆境。

「ッ!」

 ヴェルからの剣圧での攻撃が放たれる。痛みを振り切るようにその剣圧を弾く。

 重い!!この剣圧を受けた瞬間骨が悲鳴を上げるような重みがコスモスから伝わってくる!

「援護いくぞカレア!」

 ティルが放った光弾は受け止めていた剣圧に当て相殺してくれた。互いにエネルギー体だったためなのかはわからないが相殺できて助かった。

「援護……頼む!」

 大きく息を吸ってヴェルのところに向かうためにコスモスを構える。

「抜刃」

 ヴェルに高速で距離をつめる。勢いを殺さずヴェルに攻撃を放ちながらヴェルを助け出す方法を模索する。一撃目も防がれ、二撃目も防がれる。だがそれでもまだ攻撃の手を辞めることはできない。

射撃シュート!」

 ヴェルへと光弾を放つがヴェルの持つ太刀を一振りするだけで光弾が防がれる。が、その一瞬だけでいい、一瞬のスキを作ってくれたティルの援護は流石だ。この一撃ならいける。

「六式・一輪」

 ヴェルの胸部に目掛けてコスモスを振り下ろす。

「ーーッ!」

 見事俺の攻撃は当たりはしたがヴェルは瞬間的に攻撃に反応し、避けようとする挙動をしたため相当浅かったようだ。だが、当たりはする。ヴェルには悪いがこのまま肉薄していってティルの援護があればいける。

「ティル!精々気張れよ!」

 自身を鼓舞するようにティルに叫ぶ。

「テメェもなぁ!」

 ティルもこちらに返してくれる。ああ、そうだな。オマエがいるからここに立っている。オマエがいるからまだ戦っていられる。まだ、終わってないぞカレアビス・コーサラス。テメェの力を見せてみろ。

「まだまだ畳み掛けるぞ!」

 視界はいつもよりクリアだ。ヴェルの動きは大体見えるな。頭も以前とは段違いに鮮明だ。これ前にもあったな最近だったら研究所の時か、いやあの時以上だ。今回なら未来だって見えそうだ。

「ー!」

 コスモスをヴェルに振りかざす。向こうが殺す気でくるのなら俺だって容赦はしない。

 ヴェルが俺に攻撃を仕掛けてくる。何かを察知しこちらに殺意のこもった斬撃を俺の肩部に向けて放ってきた。

「見える。ヴェル、オマエのしようとすることは全てお見通しだよ」

 未来を見た。このままヴェルが攻撃してくるあらゆる事象を全て見た。だからわかっていた。この攻撃はブラフだってことも。

 あえてヴェルは攻撃を外し、蓮撃という形で切り上げを放ってくる。俺はバックステップをし、必要最低限で回避しながらカウンターを仕掛ける。

「射撃」

 ちょうどいいところにティルの援護射撃がヴェルへと刺さる。光弾を防ごうとそちらに太刀を向けたこの瞬間を俺は逃さない。

「ハァァ!」

 ヘビの防具の付いている左手を狙い切り落とす勢いをつけ狙う。が、これも瞬間的な反応で躱されカウンターに移行した。これでさえ避れるのか。未来を見れたとしてもこれが最善だなんておかしい話だな。

「五式・返り咲き」

 ヴェルから返された斬撃は鋭く俺の首を掻っ切る勢いで放たれた。それをコスモスを攻撃に沿わせながらこちらもカウンターで返す。ヴェルの攻撃は重たいがどこが一番力の伝わっていない部分かを見極めれば返せる。ヴェルの懐に入り腹部へと斬り上げる。が、ヴェルはバックステップをまた超反応でし、当たりはするが浅い。

「あと少し」

 徐々に徐々に距離が詰まっていっているのを感じる。攻撃を放つごとにだんだんと近づいている。

「ーー!」

 ヴェルの今度の標的はティルに決まったらしく、俺との距離を離しながらティルへと剣圧を飛ばす。

「うお!装填セット。援護頼む!射撃」

 ティルは剣圧を避けながら光弾を放ちこちらへと向かってくる。俺もその動きに合わるためにそちらに向かい、丁度ヴェルから見た重なったところでヴェルへと方向を変える。

「いけ、カレア!」

 真後ろから眩く輝く一閃が俺を超えてヴェルに向かっていく。コンビネーションアタック:二重の矢というところだろう。まずティルの放った光弾は案の定太刀で防御されるが、その防御した死角を狙い澄まし、そこを縫うように刃を沿わせてヴェルへ放つ。が、太刀での防御が間に合ってしまい当たらない。

 それでもまだ届かないのか!見誤ったか?どこかを間違えた?もう少し観察しないとダメなのか!

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