EP14 ブレイズハート -Blaze Heart-

第39話 因縁の終結

「聞こえなかったのか?いいご身分だって言ってんだ!!オマエは絶対にここでここから先の全てをオレが止めてやる!」

 ガントレットを展開しながらそう叫ぶ。もうなりふり構ってはいられないな!

「それがアナタの答えですか。わかりました。行け、シト」

 クラウンがフィンガースナップをするとどこからともなくシトが現れる。シトももうあちこちの外装がボロボロなのに気づく。整備すらまともにしていないのか?

「アアアアア!」

 シトの殺意を咆哮とともに受け入れる。肌に伝わるヒリヒリとした感覚。嫌いで嫌いじゃないこの感じ。向こうの闘志も本物だ。

「それでもオレは容赦はしない!」

 お互いに戦闘体制に入る。

「オルト!EOEは大丈夫なの?」

 そうトリラのバックアップは今現在されていないのだ。でも今はいらない、コイツとはしっかりやり合わないといけない。

「まだ大丈夫だ。いくぞオレ!」

 コイツにEOE能力のバックアップなしでは無謀だ。オレだってそう思う。でも覚悟を掲げている状態でどうこの状況を打開するかなんて決まってんだろ。

「戦えば分かる」

 互いに攻撃を放ち互いの攻撃を放った拳に命中し、あたりに鈍い金属音が鳴り響く。

「ッァ…」

 やはり力負けはしているがそれでも互角とまではいかないままでも以前よりずっと戦えている。

「こんなもんか?これじゃあ話にならないな!」

 鍔迫り合いならぬ籠手迫り合いを余っている左手でシトの攻撃をしているデカい腕部に向けて下から打ち込み、この状況をぶち壊す。

「!?」

 前にこんな攻撃をもらって学習はしているがオレ単体でできないと考えていたんだろ。そいつは飛んだ計算違いだな!

 避けられることを承知で次の攻撃に繋げる。まだ攻撃する勢いは残っていたのですぐに攻撃を放つことができたが、案の定、サイドステップで避けられる。

「そうかよ!」

 スッテプを確認後また追撃を仕掛ける。今度は見逃さない絶好のチャンス。

 師匠から教えてもらったこの目の使い方と自身で編み出した身体の使い方により、もっと確実に仕留めれる。

衝撃波インパクト!」

 ヤツの加速は十分速いがオマエの加速はこちらも擬似的に再現ができるんだよ!

「突破!」

 これでオレとの差は純粋な力のみ!それなら軽く凌駕してみせる。

「いくぞ」

 衝撃波で加速した拳で攻撃を放つ。シトもこの攻撃は確認しているらしく腕部の武装でガードをしてくる。だが、それはお見通しだ。放った拳が腕部の兵装に命中し弾かれるが、その衝撃を利用し手のひらが開かれる。

「捕まえた」

 左腕部の兵装の隙間にガントレットの硬質な素材と推進でしっかりと指をめり込ませる。これで簡単には離れられなくなった。

「もらった」

 吸着と衝撃波の両方の機能を同時に使いシトの腕部の武装を破壊した。正直指が千切れるかと思ったがなんとかなったからトントンってことで。

「??!!」

 シトも腕部の兵装の一つが破壊され混乱している。そりゃ破壊されるのは初めてだろうよこんな硬くて頑丈なもの!

「まだまだいくぞ」

 腕部の武装が剥がれたことによってシトの肌が露出している。その腕はオレの腕そっくりで、やはりコイツはオレだと再認識する。

「ーーーーー!」

 向こうも激昂しこちらを迎え撃つ構えになった。それでもお構いなしに突っ込んでいく。あのキモい挙動の正体はデカい腕の使用によって生じる爆発的な瞬発力。ならばそれを一本貰っちまえばその爆発的な瞬発力は使えなくなる。

「だから正面突破でスピード勝負に出る!」

 衝撃波を使用しながら高速でシトへと突っ込んでいく。今度は蹴りから入った。衝撃波を生かした回し蹴り。これはもう一本の腕部の兵装で防がれるが身を翻すようにそれを蹴り上げ宙に舞う。この体勢からならいける師匠の見様見真似で形にした奥義。

!」

 標的を噛み砕くように相手を狩りの対象とし、こちらが絶対的捕食者と相手に信じ込ませるような威圧で封じ込ませる。そして、

「あああ!グウゥゥ!」

 相手を一撃で破壊するほどの威力をお見舞いする。

 見事命中し、シトが膝から崩れ落ちる。

「倒せた…オレは…」

 あれだけ最初手こずって能力ありきで戦ったのにもかかわらず、今は能力なしの全てを出し切った全力でぶつかって勝てた。

「大丈夫か?オレ」

 ハッとなってオレもといシトの元へと駆け寄る。

「ーーッ」

 一応呼吸はあるようで少しホッとする。マスクのせいで何かを言っているが聞こえずらかったのでマスクを外す。

 やはりマスクの下はオレの顔だった。正直いまも信じられないが見ているものは現実なので受け入れるしかないと思う。

「ヨォ…オレ」

 満身創痍のオレはオレに話しかけてくる。殺気はないので単純にしゃべりたいのだろう。

「ああ、オレ」

 近くに腰を落とし、オレの声が聞こえやすい位置に身体を持っていく。

「まず…謝らないとな……操られて…いや、言い訳には…ならないな」

 クラウンの言っていた死体を動かしているなんて思えないくらいしっかりと生きていた。

「いや、不本意だったんだろ。それを責めることはできない」

 正直最初戦った時はそんなことは思ってはいなかったが、今は今の状態のシトのことを少しずつ知っていったため最初の頃の怒りとかはない。

「そろそろ多分オレは死ぬ。これは絶対だ。だからトリラのこと…オマエに託す」

 そう言い切ったあたりで壊れていなかったもう一方の腕部が停止したかのように力なく動かなくなった。そして、少し笑みを浮かべた状態で息を引き取った。

「ああ、託された」

 守ってみせるさ。オマエが望んだことを、殺意の中にあった本音を。

「シトを倒しましたか。ええ、それでこそ私が求めた主人公です」

 クラウンは何かの機器をひらひらさせながらこちらに語りかけてくる。

「オマエはこれを望んでたのか?」

 そのひらひら振っている機器が気になりはしていたがそんなことはすぐに答えが出てくるだろう。

「そうですねぇ、オルトくんがここで殺してくれればよかったんですけど、いえ、死人ですから殺すというのは間違いかもですねぇ。まぁ、こちらで対処をしときましたよ」

 あの持っていた機械はシトを殺すためのヤツだったのか。

「もうオマエ以外はいないな。歯ぁ食いしばれよ」

 怒りは湧いてきたし、憎悪だって湧いてくる。だがそれを容認してしまってはいけないと感じて抑えるように吐き捨てる。

「さあ、来てください。私を楽しませてください!」

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