第37話 次元の狭間の獣
「ナノ、オルトたちはどこら辺にいる?」
一応ステーション内に侵入することはできたが流石にちょっと広いんだよな。
『右手の廊下を突っ切った場所です。移動込みで5分、カレアさんの場合なら2分もいりませんかね』
「了解」
思ったより掛かるな。すぐに向かわなければ。
「ティル、どのくらい進んだ?」
『ぼちぼちかぁ?多分だが半分くらいだな』
結構行ったな。思ったよりもこの中狭いのか?
「わかった」
足に力を込めとりあえず走った。ステーション内はやはり人の気配が少ないという印象だ。たまに警備をしている一個小隊の足音が聞こえるだけでなんかよくわからん。
「ティル」
いつの間にか追いついたがティルは廊下の奥を指差す。
「あれをどうにかしないと進めないぞ」
指を刺した方向にいたのはまさかのサボりをしている分隊だった。
「んなところでサボってんじゃねぇての」
ここにきて厄介なのがきたな。ここの廊下は大幅なショートカットになるためだけにここの廊下を進みたいところだがざっと六人確認できる。ステーション内での戦闘はできるだけ避けたいのにそうはさせてくれない状況下にあった。
「ティル、消音拳銃は持ってきてるか?」
「持ってきてはいるが流石にバレそうだぞ、まぁそれもそれでおもろそうだからいいか」
ティルは拳銃を構え、俺に行けと顎で指す。俺も頷き、気づかれないように敵に接近する。ちょうどいい間合いに入った時にティルが発砲し始めた。
「誰だ!ぐあ!撃たれたぞ!」
「目標発見!ぎゃああ!」
変に騒がないでほしいと思いながら一人の背中に目掛けてコスモスを振り下ろす。これで多分周りも気づき始めるだろう。
「ティル、走るぞ!」
「へぇへぇ」
宙域で戦闘して、そのすぐにまた戦闘に入って流石に精神的に疲れてくるな。
追われながらもオルトがいると思われるエリアへと近づいている。たまにティルは後ろに発砲し、俺は飛んでくる弾を弾いてできるだけ被害を最小限にする。
「ああ!弾切れた!いらんわこんなもん!」
ティルが弾の切れた拳銃を横から出てきた帝国兵に投げつける。投げつけられた兵士は怯み、それを見逃さず斬り抜けて敵を倒す。できるだけスピード重視で攻撃しているためもしかしたら浅かったかもな。
「OS-XXはまだ温存だ!まだ実弾持ってんじゃないのかよ!」
ビームを放とうと銃口から眩い粒子が漏れ出しており、ビームをいつでも放てるように縮退させている。
「んあ?仕方ねぇな、つっても予備のマガジンはねぇからこれも弾切れ次第って感じだな」
そう言いながらズボンの間にしまっていたもう一つの拳銃を取り出す。
「待て、今なんて言ったんだ?予備のマガジンを置いてきた?」
シト戦も視野に入れていたため、実弾をここで使うのは勿体無い。
「ああ、そりゃあ銃を3丁持ってきてんだ
「わかった。牽制程度のビームにしてくれ」
やれやれとため息を吐きながら空いたホルスターに拳銃をしまい、OS-XXに切り替える。
「んじゃまぁ景気付けに一発」
一瞬振り向き、トリガーを弾く。決して狭くもないし暗くもない廊下が眩い一閃によってものすごい光量に照らされる。追っ手はその光量によって一瞬だけ怯む。
「こういう使い方もあるんだわ」
得意げにいうコイツの顔を殴りたい。
「そろそろだ。本格的な戦闘準備しろ」
全力でオルトの声が聞こえた方向へと走りエリアに突入した。
「ヴェル!まだ君は!」
ヴェルがどうやら様子がおかしい。オルトがヴェルに駆け寄ってはいるが状況があと一つのピースがないままの状態で少々頭を回転させる。
「ヴェルはやられたのか?」
この状況で行き着く思考は単純になってしまうが、これが一番妥当な判断だと頭の中で回答が出る。
「あははは!ついに覚醒しましたよ!」
何やらクラウンのやつの調子がいつもより3倍増しで狂っている。
「ラプチャー。次元の狭間の怪物よ!」
ヴェルの方へ目を移して見るともはや別人になっている。いや、人なのか…?肌は異様に白いし、足には異空間につながる穴ができている。あそこから一瞬で太刀が出てきているところは見えたがどういう仕組みだ?いや、そんなことを考えている場合じゃない。
「オルト下がれ!」
咄嗟に駆け出して防御を行ったためオルトスレスレにヴェルからの攻撃が落ちる。
「カレア!?ていうかなんだよこれ!」
なぜヴェルに攻撃されているのかわからないとかそもそもヴェルが何かになったとかで混乱している。
「わからない。けど、とりあえずお前はクラウンの方へ行け。ここは引き受けさせてもらう」
ギリギリの状態で防御した太刀を弾き返そうとしたが、太刀が重く思ったよりも返せなかった。
「ヴェルはどうするんだよ。ここで止めないとじゃ……」
オルトが色々と言いかけていたがそれを掻き消すようにオルトに叫ぶ。
「これはうちのクルーの問題だ!だからオルト、追いかけろ」
最初よりかは間合いをとれたがどうにもあのヴェルをどうにかできる気はしないけど、どうにかしなければいけないと自身に言い聞かせてもいた。
「わかったすぐに片付けてくる」
「カレアくんヴェルちゃんをお願い!」
二人はいつのまにかこのエリアの奥の方へと姿を消していたクラウンを追っていく。
「ティル、援護を頼む。どうにか正気に戻せるかどうかは試してみるから」
「任せとけ」
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