第35話 ガラウーヴァ帝国領宇宙ステーション

 すぐさまガラウーヴァ帝国の中枢、帝国星域ガラウーヴァの圏内に出てきた。

『信号キャッチ。衛生ステーションに件の【B-S.L.R.Gビースレッジ】が設置されています。これはあの放映されていたものと一致します。すぐに準備を』

 ナノからあの兵器の位置が特定される。

「よし、ステーションにつけるぞ」

 TenCryは少しずつ目的のステーションに近づいている。周りにはたくさんの帝国機が散見されるが、この船の信号を輸送機と偽りバレていないという状況だ。

「そろそろ危ない気がするんですが」

 クラウンの件なのに思った以上ヴェルが慎重になっている。

「大丈夫だと思うが、心配になるなよ」

 カレアがそう言い切ろうとした瞬間船内にアラームが響き渡る。

「バレてら」

「マジか」

 カレアとティルはいけると思っていたようで拍子抜けしたような反応をしていた。

「じゃあ、一旦二手に別れよう。俺とティルは敵機の迎撃と数減らし、オルトとヴェルはそのまま突入って感じか」

 トリラはこの船にいてもらうって形か。その方が安心ではあるが。

「私もいくわ。責任を果たしたいの」

 そう、トリラはそうは望んでいない。たとえここの誰もが反対しようが曲げない意思を持っていた。

「そうね、言いたいことはわかるわ。所詮私は非戦闘員。でも、このまま指を咥えて待っているなんてできないの」

 あくまでもこの戦いで自身の責任を果たすよう動くために一緒にくるというトリラらしいことだ。

「まぁそうだな。それならオルトに任せればいいか」

「ああ、任せとけ」

 守るためならどんなことがあろうと絶対に守り抜いてみせるさ。

「じゃ、また後で」

 そうカレアが言うとみんなは頷き返し、各々が行くところへと足を運んだ。

「オルトさん、あたしはアイツを真っ先に殺します」

 またヴェルはあの時の目つきになる。憎悪で何もかもが濁ってみえるあの目。

「言っても聞かないと思うけど、まぁそうだな、あまり思い詰めない方がいいと思う」

 思っていたことと違うようなことを言われたような顔をしてこちらを見つめてきた。

「いえ、なんで止めないのかなって思って。そうですね、頭に残しときます」

 後ろでトリラがニヤニヤしながら近づいてくる。

「オルトもいうようになったね。私は嬉しいよ」

 トリラが何や親のような顔になっている。やめてくれよそんな顔。

「そうかい」

 少しずつ目的のステーションに近づいているのを感じ、少しずつ緊張してくる。

Re/RiseTwelveリライズトゥウェルブ発艦する』

Leollion Plusレオリオン プラスいくぞ!』

 二人は回線で迎撃に出始めることがわかる。あの二人ならどうにかなりそうだがどうなることやら。

「こっちもいくよ」

「うん」「はい」

 そう言って船のハッチを開けた。

「思ったより人はまだ来ていないみたいだな」

 ステーション内はあのラボの時とはいかないが随分と人がいないように感じた。

「アイツのことですから、奥の重要なエリアにこもっています」

 拳銃を片手にまわりに睨みを効かせながら、ヴェルにそう告げられる。

「怖いけど、いくよ二人とも」

 トリラは率先して先に進んでいく。危ない橋を渡っているのはトリラ自身わかっていると思う。それでも、彼女の覚悟が責任を背負っているからこそ今は気を張っているのだと思う。

「トリラさん、そこ少し待ってください」

 ヴェルがそう言いながらトリラを壁の方へと誘導する。するとすぐに一個小隊が十字路を横に突っ切って行った。

「ありがとうヴェルちゃん」

「大丈夫ですよトリラさん。さあ、先へと向かいましょう」

 二人は手を取り合って先に進もうとしていた。

「そうだな」

 こんな形じゃなかったらなんて考えてしまった。考えても無駄なとあるIF。まだ可能性があるなら平和な日常でこの二人は過ごしてほしい。

「そう考えて何が悪いんだ」

 二人には聞こえない程度につぶやく。

「何か言った?オルト」

 トリラが顔をのぞいてくる。かけていたメガネが落ちそうになるくらいにまで屈んでいる。

「なんでもないさ。さあ先に行くよ」

 トリラに笑顔を返す。ちょっと顔に出ていたのかな。

「そうね」

 少しずつ奥へ奥へと歩みを進めている。着実にクラウンの元へと近づいている。

「アイツは絶対に」

 正直ヴェルと似たような感情を一回クラウンに向けている。あの感情に身を任せていたら多分堕ちていたと思う。でも、あの感情を経験したからこそその先に行けた。だから、もう。

「ここか」

 みんなに緊張が走る。廊下を昇ってきていた後にここに出るのはあの時のようだ。

「いない…」

 大広間で確かにあの時見た映像の兵器の一部が見える。ここにいるはずなのに、どこに行ったんだ。

「どこに行ったんだ。どこに!」

 ヴェルは血眼になってクラウンを探していた。憎悪と怒りを振り撒きながら、どこかにアイツがいるんじゃないかと夢中になって。

「あの中にまだ人が」

 B-S.L.R.Gと呼ばれる兵器そばにカプセルがあり、その中にはまだ人が居た。いや、違うな。居るというよりももはやモルモットと一緒のようにそこにあるものとして置かれていた。

「オルト、行こう」

「ああ」

 トリラと共にその場から収容されている人の元へかけようとした時、後ろから悲鳴が聞こえた。

「きゃああ!」

 反射的に振り返り悲鳴の主を見るとヴェルがいた。いや、その後ろには。

「クラウン!」

 クラウンはヴェルから拳銃を奪い、ヴェルの腕を拘束した状態にいた。そして、ヴェルに何か薬剤のようなものを打とうとしていた。

「やめろ!やめろぉぉ!」

 止めに入ろうと駆け始めるも、そうはさせてはもらえなかった。

「あああああ!がああああ!」

 何かを注射されたヴェルはもがき苦しみ始め、少しずつ少しずつ皮膚の色が変容していた。

「いいですね。いい声だ。そうだと思いませんか?オルトくん?」

 またヤツはオレの名をよんだ。呼びやがって。

「オマエを…ああああ!絶対に!」

 こんな状態でもヴェルはまだ戦っていた。もがき苦しんでいるが、自身を蝕む何かと戦いながらクラウンを見つめていた。

「ヴェル!まだ君は!」

 どうにかヴェルには駆け寄りはできたものの、オレではどうにもできない状態になっていた。

「あああッ!ぐゥああああ!」

 叫び声の声量がだんだんと増していき、ヴェル自身も変異し始めていた。

「うわ!」

 ヴェルが急にこちらへと攻撃をしてきた。いや、あれはヴェルなのか?

「あははは!ついに覚醒しましたよ!」

 ヴェルは少しずつ叫び声が小さくなっていき、聞こえなくなってきたと思ったらいつの間にか5Mくらいの大きさになっていた。肌は白すぎるというくらいに白く、足はどこかに繋がるに半ば入っている状態で、どこから出てきたのかわからない大きな太刀を持っていた。

 覚醒だって?これが?

 「ラプチャー。次元のよ!」

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