EP12 デスティニーホライゾン -Destiny Horizon-
第33話 別れ道
いつの間にかもう半月経とうとしていた。いまだにメノアさんに勝てないでもいる。
「どあああ!」
確実に当たっている挙動の攻撃も全て躱されるか返される。そしてこのようにぶっ飛ばされるまでがセットだ。
「確実に良くはなっている。私を捉えた攻撃も多くなってきているのは確かだ。もう少しだな」
褒めてくれるのは嬉しいのだが、こうも当たらないと流石に悔しい。
「ありがとうございます。でも、まだ届かない」
もう少しとは言ってくれたけれど、どうにも当たるビジョンが見出せない。
「もう少し相手を見ることだな。カレアなんかはよく見ているな。攻撃する合間合間を視覚的、感覚的に捉えている。そのくらいになれとは言わないが頑張って見定めろとしか言いようがない」
戦闘経験値の差はやはり縮みそうもないな。自身の強みとそれを活かすような戦い方はまだまだ詰めが甘いように思える。
「そうですか、もう少し頑張ってみます」
そう言いながら次へ頑張ろうとしたところでカレアから回線が繋がる。
「どうしたんだカレア?」
ここ最近は緊急で繋ぐなんてそんなことはなかったんだがいきなり連絡してくるなんてどうしたのかと少々焦る。
『少しいいか?ちょっとまずいことになったのかもしれない。いやマズイな。セーフハウスまできてくれ』
話している口調がなんだかいつもよりも緊張感のあるもので、多分良くないことが起こっているんだと思う。
「メノアさん、すみません。カレアが呼んでて!」
「ああ大丈夫だ。行ってこい。何やら重要な要件なんだろう?」
「ありがとうございます!」
頭を深くさげ、その場を後にした。
しばらく走った後、セーフハウスへと入っていく。
「どうしたんだカレア!」
走ってきたものだからめちゃくちゃ息が乱れて声が大きくなってしまった。
「とりあえずモニターみろ、それからだ」
そこのモニターに流れていた映像に映っていたのはみていて腹が立つヤロウ、クラウンだ。なぜそこに映っているのか最初は分からなかったが、少しずつその映像が進むにつれてわかってきた。アイツはついに自身の最高傑作をつくったのだろう。クラウンの後ろに聳え立つその最高傑作の名前は【
「アイツは…、こんなものをつくるために…!」
怒りと強い嫌悪感が共に自身の身体を駆け巡る。アイツは本当に碌なことをしないと知ってはいるが、ここまで外道だともはや憎しみなんてものは湧かない。アイツはどうにもならない。そして、どうすることもできない。きっと、止めるには殺すして止めるということをしなければいけない。そう考えていた。
「ねぇみんな、今から無謀なことを言うわ」
一緒になってみていたトリラが口を開いたかと思ったら、なんだかマジですごいことをいうと感じる。
「あの人たちを助けるなんてことはできないのかな?」
かなり無茶なことを言っている。そう本人でさえ自覚しているという感じでもある。
「そいつぁ無理な話だ。今度こそ死ぬかもしれねぇ、もしかしたら誰も帰ってこれないなんてこたぁあるかもだ」
「そうだな、ティルのいうとおりだ。もう少し事態が沈静化するまで隠れていた方が絶対にいい」
二人はこの事態をしっかりとした意見でみていた。正直オレはアイツをぶん殴りたいと思っていたが、やはりこういった時の冷静さはこの二人ならではというものだ。
「そうよね。わかっt」
トリラがそう言いかけていた時、事態が最悪の状態になってあらわれる。上空で大きな衝撃波が発生し、地面が大きく揺れた。
「なんだ!」
カレアが揺れている床を気にせず外に向かうと呆然と立ち尽くしてしまった。カレアに続いてみんなで外へ出て上空を見上げると近くにある星メルグリアが煌めくようにそこから衝撃波を出した跡が見えた。
「ティル、アレって」
「ああ、そうだ」
再び室内へと入りモニターで放映されている映像を観ると、そこには何かに撃ち込まれた跡と思わしき爆発の跡と成層圏にまで登る大きな土煙をあげたメルグリアだった。
「そんな」
「アイツが」
モニターに映る光景は衝撃的なもので、モニターを観ているこの場のみんなは緊張の張った空気でモニターの光景を凝視していた。
モニターの映っている場面が変わり、またクラウンが映る。クラウンへと映像が切り替わり、メルグリアへの攻撃を実行した兵器も映っていた。
「アレがやったのか?」
カレアから久しぶりに感じる殺気が漏れている。
「なぁ、トリラのいう助けるってやつにあのバカみたいなものを破壊するってのも入ってるよなぁ?」
ティルもいつにも増して目がギラついていた。この二人相当怒っている。
「そうね。私もアレはほっとけないけれど、私たちは一般人よ?それこそ星間同盟が対処なんてことは…」
「ないな。アイツらは関与できない。同盟の中に帝国の思想を許した人間がいくらかいる中でこの状況はあまりにも都合がいい。EOE能力の兵器なんて同盟側も無視はできないが、どこまで腐っているかは未知数だ」
「そうだな。しかもわざわざアイツはメルグリアに砲撃した。これは当てつけだろ。そりゃあ、乗るしかねぇよなぁ?」
怒りが最長点に達している二人はどうにもやる気のようだ。
「死ぬかもしれないって、さっき言って…」
「そうだな。だが、今回は命を賭けよう。それだけの価値と力を示してやる」
もうここまでいったら聞かないし止まらないのだろう。
「わかった。行こう」
覚悟はできている。クラウンはオレたちがどこへ居ようとカレアたちを呼び寄せるためにメルグリアに砲撃した。向こうの懸念点はカレアたちが動かないということだ。それを喧嘩を売ったという形で示せば必ずくると判断したのだろう。
「アイツはやっぱり殺さないと、でもどうやって?」
ヴェルは物騒なことを先程から呟いているが、相当なものをクラウンに向けている。
「じゃぁ、まぁいこーぜ。アイツを殴んねぇと気がすまねぇや」
そう言いながらティルはこの場を後にする。
「ああ」
カレアも続き、オレたちもこの場を後にする。ここにまた帰ってこれると信じて。
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