EP11 ストレイトラベラー -Stray Traveler-

第30話 惑星メルゲデル

 少しの間EOEの空間にいたが思ったよりもすぐにメルゲデルと思わしき星の前に出る。

『船長つきましたよ。起きてください』

 ついたと同時にナノからのアラームによりティルが起きる。

「ああ、もうそんなか。わかった」

 身体を起こしながらこの船の回線のチャンネルをいじるスイッチをいじる。

「これだったか?いやぁ?これかぁ?」

 随分手こずっているようだ。

「ティル君、手こずっているところ申し訳ないけどカレア君の様子見に行くね」

 トリラはそう告げると医療エリアの方へと足を向ける。

「ティル、手伝うよ」

 思ったより難航しそうだったので助けに入る。

「ここら辺だったんだが、お、ついた」

 助けに入った瞬間に望みのものに辿り着けたようだ。回線がつながったのを確認し、すぐさま近くに付属しているヘッドセットをつける。

「こちらTenCryのティレビア・ナーファードだ。聞こえるか」

 ティルが珍しくしっかりとした口調で喋っているところを見て少し驚いてしまった。

「ああ、久しぶりだな。ちょっとな、少しの間駐留することになるけどいいか?」

 回線の向こう側の人物の声は聞こえないがどうやら話はいい方へ進んでいるようだ。

「助かる。今から着陸に入る。信号を出しておいてくれ。以上」

 ティルは回線をきりつつ操縦席の方へと向かい、すぐに大気圏へ入る準備をする。

「いくぞオルト。少し揺れるかんな」

 そう告げると窓の外が段々と赤みがかってくる。

「ああ」

 


「着いた」

 まだ着陸はしていないが着陸シーケンスを始めているところだ。

 ここにくるまでに嵐が起きている雲に突っ込んだりして船が思ったよりも揺れて正直メンタル的に疲れた。

「オルト、カレアの様子を見てきてくれ」

 ティルは着陸するためにここから離れられないからなのか医療エリアに向かわされる。

「まぁ心配だよな。疲労の負債が溜まりすぎてるよな二人とも」

 そう呟きながら医療エリアに向かうと。

「もう大丈夫だから!」

 部屋から大きな声が聞こえた。

『まだもう少し入っててくだいよ!内臓のダメージ回復しきってないんですから!』

「そうですよ、睡眠薬打ちますよ!」

 部屋をのぞいてみるとカレアがナノとヴェルに追われていた。

「オルト、カレア君を止めてよ。もう困っちゃって」

 トリラが難しい顔をして駆け寄ってくる。

「なんかすごい状況だな」

 面白い状況なのだが、みんなが困っているのでさっさとカレアを止めるとしよう。

 さっきティルに教えてもらったガントレットの機能を使うためにガントレットを展開する。確か親指で手のひらを2回叩くんだっけ。

 手のひらを2回叩き指先をカレアに向けると牽引ビームが指先から照射される。カレアはたちまち動きが鈍くなり少しずつカレアを動かすように棺桶の方へ指先を向ける。

「重いな。戦闘で使えないなんて言ってたけどそういうことか」

 ティルから聞いた話、実際のところこれで何でも運べるらしい。が、一部重量は緩和されるがしっかりと重量を感じるし、動いているものだと当てづらいなどがあり、戦闘には向かないらしい。そもそも人間が撃つような代物でもないようでカレアでギリギリと言ったところだ。あまり重いものに照射すると指がへし折れるらしい。

「わかったから!もう少しなんだな!」

 カレアが渋々了承し、牽引ビームを切る。するとカレアは嫌そうな顔で棺桶に入っていった。

「ああ、気持ち悪い」

 棺桶に入ったカレアがつぶやく。正直めちゃくちゃ賛成するが機能が良すぎてこれに変わるものは大きすぎてこの船に置けないと思う。

「カレアー、調子どーだぁ?」

 ティルも着陸が終わりこちらにきた。

「いいと思うか?」

「みりゃあわかるわ」

 皮肉を言うカレアとケラケラと笑う対比がなんとも言えない空気感だ。

「先行ってるぜカレア。あとで合流な」

 そういうとここを後にすように部屋を出る。

「オレらも行くよ。あとは頼むよナノ」

『任せてください』

 ティルの後を追うように医療エリアから出る。ヴェルは残りたそうだったが、ナノに任せる方向でいくようだ。

 少し移動しハッチまで移動してきたが、まだ船のハッチが開いていなかった。

「どうしたんだティル?開けないのか?」

 不思議に思い質問したところ、ティルの顔色があまりいいとは言えない状態だった。

「いやなんでもない。外にあまり会いたくない奴がいるんだけだ」

 どこか怯えている状態だったがその時ハッチから激しく叩く音が聞こえた。

「わかったから!開けるわ!」

 ティルは外からの圧力によってハッチのボタンを押した。開いていくにつれて外の光が船内に入ってくる。そして、ティルの会いたくないという人物の影も段々と鮮明になっていった。

「久しぶりだな。ナーファード」

そうティルの名前を口にしたのは女の人だった。

「久しぶりだ、メノア。相変わらず荒々しいな」

「ほう、侮辱ならいい度胸と認めてやろう。決闘でいいか?」

 ティルへすごい剣幕で睨みをきかせる女性が会いたくないと言っていた人らしい。

「勘弁してくれ、そうだ紹介がまだだったな。このゴリ…、女はメノアだ」

「メノア・ジュラーク=ラスタムだ。メノアでいい。よろしく頼む。随分とティルが世話になっているようだな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る