第29話 スイング・バイ

「次なる目的地はメルゲデルだ」

 確かそこは、

「ティル君たちの故郷に近かったよね?」

 トリラが先に答えを言ってしまった。

「そうだ、トリラよく覚えていたな。超昔にファナラスのにあるハイタワーで話したことがあったけか」

 何それ知らない。オレが教えてもらったのはファナラスのにあった競技場だった。やはり少しの差異があるのがここで実感できるとは。そういえば、こんな感じで情報が食い違うのは前にもあったが、こう意識するとわかりやすいな。

「メルゲデルか、あそこらへんて確か辺境だったよな」

 あまり本人の前では言いにくいが辺境と言ってもいいほどあそこの星域は人工やらが少ないと言える。

「そうだ。クソ田舎すぎておれらは出たんだよなぁ。懐かしなぁ。だぁから、一旦ここで休憩だ」

 ティルから出た言葉は今それをしないといけない人間から発せられた。

「メルゲデルならクソ田舎すぎて星間同盟すら手を出していねぇ。そんで環境もいいから休むにはちょうどいい。オメェらも戦い続きだったからな、今はゆっくりしてもバチはあたんねぇだろ」

 こんな時までオレらのことを考えているのか。いや、本当はティルたちが休みたいのか?どっちもありそうなことだったから考えるのをやめる。

「本当に休息が必要なのはティル君たちだと思うのだけれど、ありがとう。気を遣ってくれて」

 トリラがオレが思っていたことを全部言ってくれた気がする。

「まぁだ大丈夫でい。と言いたいところだが、そうは言ってられないくらいにギリギリだな。精神的疲労も想像以上にヤバそうだこりゃ」

 早急に休んでほしいとは思うが、あともう一踏りだとティルが思っていると思うからもう何もいうまい。

「そりゃそうだろ。すぐにDLOを準備しよう」

 そう言いながらDLOの準備にとりかかろうとする。

「まあ、もうしてあるんだけどね」

 用意周到なことで。

「カレア君は大丈夫かな」

 疲弊しきったカレアを見ていたトリラはやはり気になるようである。オレはその現場を寝ている状態で過ごしていたから、そんなひどい状況だったのかと想像してしまう。

「どうせすぐ起きるな。アイツはまたすぐ起きるさ」

 長い間一緒に過ごしていたからか、信頼の置き方が全然違う気がした。

「そうか、オレは見ていないからなんとも言えないけど、どんな状態なんだ?」

 つい好奇心で聞いてしまう。

「いつもより動いてたからなぁ。そもそもこんな戦闘続きなんか今までになかったし、今までいろんなところで気ぃ張ってたんだろ。いらんとこでも無意識的にやってたのかもな」

 なんとも申し訳ないという感情とほんと助かっているという感謝の感情がごった返す。

「マジでありがとう」

「私からもありがとう」

 感謝の言葉じゃ足りないほどだ。帝国に追われるというストレスに加えて肉体へのダメージは相当なもので、これまでよく耐えてたと考えていたけれどそうじゃないのかもしれない。もしかしたら立つこともやっとだったかもしれないんだ。憶測だけどさ。

「そうだな。おれはカレアと違って繊細にゃあできてねぇからな、アイツよりかはタフにできてるつもりだ。まぁ戦闘は役職が違ぇからなんともいえねぇがな」

 それでもだ。これからも戦地に身を投じることになるかもしれない。そんな状態でよく気楽でいられるのかわからない。経験の差か、それとも。

「無理しないでほしい」

 心のうちから出た言葉だった。

「オメェもな」

 カレアとのいつもの会話のように華麗に返し操縦席に座る。

「んじゃぁまぁ、いくか。総員。今から惑星メルゲデルへ航行する。DLO、ダイブ!」

 そう言いながらDLOのレバーを引く。

 加速とともに突如船体が何かに引き込まれる感覚とまるで水に潜ったかのような触覚が皮膚を伝い、目の前に見えていた空間が突如万華鏡のような状態でそれでもトンネルとしての形は保っていた。

「んじゃ少し眠るかな。オメェらちょっと時間がかかるな。ナノ、ついたら起こしてくれ」

 そうナノに伝えた瞬間眠りについたのであった。

「器用だな」

 正直そう思わざるを得ない速さだった。

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