第24話 粉骨砕身
「オルト!アブネ、もういいのか!」
ティルが敵から放たれた瓦礫の弾丸を避けながら聞いてくる。
「大丈夫だ」
そう告げ、カレアの援護に向かう。カレアは拳を避けながら攻撃し、その都度防がれている攻防を続けている。カレアが次に防御されたタイミングで攻撃を仕掛ける。
「いくぞ」
連携重視の速く刺さるようなパンチをカレアの攻撃が防がれたと同時に繰り出す。と同時に、鈍く耳に残る金属音が周囲に鳴り響く。
なるほどね、ヤツはデカい腕の武装を盾のように構え防いでいるのか。このまま攻撃を与え続けて崩していかないと埒が開かないな。
「あわせろ!」
カレアからの呼びかけにより連携する態勢をとる。先発でカレアが攻撃を仕掛けにいき、そのまま続くようにオレも動く。最初の攻撃はカレアが放った鋭い一撃から始まる。ヤツには防がれてしまったがそのまま勢いを元に刃を絡め、空へと浮き上がる。すかさずヤツからの拳が放たれるがそこをオレが放たれた拳へ攻撃を繰り出し軌道を逸らしカバーをする。
「いいね」
それた拳に刃を沿え、激しい金属音を響かせながら落ちてくる。そのまま沿わせていた刃を弾き、さらに落ちていくスピードを加速させ振りかぶる。
「八式・
放たれた一閃は防御してくるもう一本の腕を掻い潜り、まるでその名の通り竜のような軌道でヤツの肩へ喰らい付く。
「ツ!浅い!」
カレアの攻撃は届いていた。だが、ギリギリ身体を逸らしていたらしく拳の武装の付け根の部分に少しの傷をつけただけだった。
「
ヤツがカレアにまた攻撃を仕掛けようとしていたところだったが、ティルからのビームにより攻撃のタイミングがズレたので俺たちは避けながら間合いを取る。
「助かったぞ!ティル!」
カレアはあの攻撃をモロに喰らっていたら致命傷だっただろう。ティルのカバーはやはり正確だ。
「オレにあわせて欲しい」
カレアとティルの目を見ながらそう告げると、
「オーケイ」「任せとけやぁ?」
快い返事が聞こえた。
「ッ!」
大きく息を吸い込み足に力を入れる。そして一気に力を放出し、鋭い速さでヤツに振りかぶる。
すかさず迎撃としてヤツも拳を放ってくるが、その攻撃を弾くようにこちらもヤツの放ってきた拳に攻撃する。
素の攻撃力はこちらの方が上なんだ、その上守りに入っている攻撃にオレの攻撃が相殺されると思っているのか。
「ティル!」
すかさず連携の合図を大声で叫ぶ。
「射撃」
ティルから放たれた光弾は室内に眩い閃光を駆け巡らせながらヤツへ向かっていく。
「仕掛けるぞ」
ティルから光弾が放たれた瞬間に間合いを詰めていたカレアがすかさず攻撃する態勢に移る。光弾が命中すると共にカレアもヤツを斬り抜ける。しかし、光弾は命中したものの脇腹を掠めただけであり、カレアの斬撃に至っては弾かれていない腕に防がれてしまっている。必要最低限のダメージで済ませているのはやはり流石としか言いようがない。ただな、
「忘れられては困る」
そう、まだオレが間合いにいることを忘れられては困る。追撃で蹴りから入る。胴体はガラ空きであり、体勢が崩れているヤツには躱しようがない。ハズなんだが、視界からヤツが消えた。
「んな!」
そうヤツはしゃがんで姿勢を低くしたのだ。そこから弾かれた勢いで一回転をし、オレの蹴っていない脚を振り払う。
「マズイ!」
カレアがそう叫び、すぐにカバーにこようとするが少し遅かった。思いっきり態勢を崩し、思いっきり追撃をもらい壁に打ち付けられる。
殴られた部分が痛みによって熱を帯びる。痛みは尋常ではないがトリラの能力のおかげでまだ体は動かせる。
「クッソ……」
痛みを振り払うように呟き、またヤツに向かって足を進める。
オレが吹っ飛ばされた後でもカレアは攻撃を続けていた。一撃一撃を軽やかに叩き込み、ヤツからの攻撃がくると身を翻しながら回避し、ティルからのビームでうまく誘導しながら相手を翻弄していた。
「装填って流石にジリ貧だなァ、コイツァ」
ティルがそう呟いていたが間違いない。確実にこちらの陣営が削られていることは目に見えている。ヤツも消耗はしているが客観的に見ても向こうのほうが優勢である。
「どうです?帝国の傑作兵器【SI-10】。そうですね、シトとでもいいましょうか」
クラウンはこのエリア全体に届くくらいの声で高らかに笑っていた。
どうやら今戦っているヤツの名前はシトというらしい。多分今決めたのだろう。
「そんなことはどうでもいい。アイツはブースタリアンでいいんだよなぁ?最初の戦闘じゃわからなかったんだが!」
カレアがシトの攻撃を避けながらそうクラウンに問う。
「ええ、その認識で間違いないですとも。ただですね?そのブースタリアンは特別ですよ?」
まるで闘技場の観客のように傍観しているクラウンがそう告げる。
「ッラア!」
クラウンの変な演説に怒りを覚えながら、シトに対して迎撃してくる攻撃を弾きながら間合いを詰めていく。だが、シトに攻撃を仕掛けてはいるがやはり躱されたり防がれたりしてどうも攻撃が届かない。
「無駄ですよ。前回の戦闘データによって学習していますから」
なんてめんどくさい能力を搭載しているんだ。
「だからか、ブースタリアンのクセして動きが洗練されているのは、っと実弾に切り替えるぞ!」
「オーケイ」
OS-XXの残弾を気にしたのか、ティルは一般的に普及している拳銃を取り出し撃ち始める。
「喰らえ!」
ここでオレはラッシュを仕掛けていく。一撃当たらなければもう一撃、鈍く鳴り響く金属音が室内に幾度も響き渡る。カレアも連携した攻撃でシトに対して仕掛けるが、どうも攻撃が届かない。
「ココかぁ!」
ティルから銃声が数発鳴るとシトの体勢が少し崩れた。ティルは銃撃でどこに狙えば決定打になるかを試していたのだ。そして、命中時に衝撃が少ないビームでのエネルギー攻撃から命中時に衝撃の多い実弾にし、衝撃を弱点である脚部に集中させ態勢を崩したのだ。
「弱点はココだよなぁ!行けオルト!カレア!」
「「ああ」」
返事が重なると同時に一緒に攻撃を仕掛ける。
「九式、乱れ咲」
「行くぞ!」
カレアから先ほどよりも増して目にも止まらぬ速さによる蓮撃でシトの防御の膜を切り裂いていく。オレもこの蓮撃にあわせてシトの脚部を狙い、脚へ薙ぐような拳を叩き込む。徐々に体勢が崩れていくのが目に見えてわかるくらいには消耗していっている。
「ええ、ええ!楽しいですね!お互いに血潮を流し、切磋琢磨する姿ッ!でも、そうですね」
クラウンは昂っていた感情のまま喋っていたクセに、いつの間にか急に冷静になっていた。
「もらった!」
クラウンの発言を聞き流しながらカレアと共に最後の一撃とばかりの攻撃を仕掛けようとしていたタイミングであった。
「いいんですか?それ、オルトくんですよ?」
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