第21話 状況の把握

『ランディーン』

 ティルが早々と着艦する。

「着艦する」

 ゆっくりと補助線を辿っていき、少しずスピードを緩め着艦する。TenCryのハンガーはコンテナに偽装してあり、そこに弾薬薬やらがたんまり備蓄されていたり、機体のメンテナンスをする施設が設けられている。そのため、着艦すると同時にランディングパッドが180度回転する。

『戦闘お疲れ様でした。一応敵機の機体の識別をトラックしてみたのですが、案の定帝国の識別をした機体って感じですね』

 HUDにいるちびっこいナノから報告が入る。

「そうなると奴らにはどこに行くのかはバレているって感じだな」

 予想はしていたが、こんな早く仕掛けてくるとは思わなかった。せいぜいファナラスの周回軌道前辺りだと思っていた。

『ダグナスの誰でしたっけ?クラウンと名乗る男が関わっていると考えるのが妥当だと』

「ああ、きな臭い野郎だったが、多分相当できるタチだ」

 コックピットの中で敵の考察をナノと共にしていたが、急にキャノピーが勝手に開く。

『ティルさんですね』

「ああ、そうだぜ?」

 ティルが開いたコックピットの縁に乗り上げながら返事をする。

「そこ乗んなよ塗装が剥げるだろうが」

 ただでさえ戦闘続きで手入れがだるいんだ。勘弁してほしいものだな。

「まぁ、そいつはともかく」

「おい」

 話題を華麗にすり抜けていくな。

「ファナラス。多分奴もいるぞ」

 ティルも相手の編成や構成をみてわかっていたらしく、いつもより少し涼やかなな声で告げる。

「そうだな、ファナラスの座標ポイントまですんなりいけるかだよな」

 不安点がこの戦闘で見えてくる。このまますんなりといけることはまずないとしても、一枚噛んだような戦いをこれから何戦もするとなると疲弊による集中力低下に伴う。

『目標ポイントはアークプレンティアの山と森のなかにあるみたいですけど、どうみましょうか』

「まぁ、なんとかするしかないとしか言いようがないな」

「そうだなぁ」

 一同から大きなため息が同じタイミングで出る。

「んじゃ、そのファナラスに行くか」

 ティルが機体から降りながら言う。

「そうだな」

 行き当たりばったりなこの世界で今できることなんて行動するしかない。そう思いながらバイザーを外し、コックピットから出る。



 戦闘が終わりしばらくすると船内ブリッジの扉が開き、二人が入ってくる。

「早速だが、ファナラスに向かうぞ!」

 入ってきた途端ティルが大声を発しながらシートに座る。

『さぁ、みなさんこれからの状況を説明しますね』

 多分ここにくるまでに話していた作戦であろう。

『ファナラスに今から向かいますが、目標ポイントへは付近に着陸せず、少し遠い場所から向かっていただきます。これは、この船の安全と静かにことを進めるための措置です。内部に潜入後、私が近くのコンソールをクラックして内部の詳細とマップを取得します。あとは、情報のあるポイントへ向かい、そのまま情報を抜き取って建造物からの脱出、その間に船を回しておきますのでさっさとファナラスから脱出という算段でいきます』

 かなり大雑把だが、この二人のことだ。いつものことなのだろう。

「わかった。一応確認するが、どれくらい歩くんだ?」

『ほんの5分くらいですよ。森林や山に囲われているので探知に引っかからないよう低空飛行だったりで展開型デバイスで偽装するので』

 何気にこの船の機能って普通にすごいの積んでたりするよな。

「んじゃ、行くか」

 カレアがそういいながらDLOのレバーを引いて突入する。と同時に、我が故郷の星ファナラスが目の前にあった。

「速くないか?」

一瞬すぎて本当にワープしたみたいだった。

「このままポイントまで全速で突っ切るぞ」

 高速でファナラスに接近していく。大気圏に突入しても尚、その速度を落とすことなく進んでいく。あっという間に目標の着陸ポイントの上空まで到達し、旋回と減速をしながら高度を下げていく。

「さ、テメェら精々死ぬんじゃねぇぞ」

 この一言とともに、この船を後にするかのようにハッチの方向へと向かう。

 ティルのこの一言で自身が挑む状況を再確認できたと思う。

「私も覚悟を決めなきゃね」

 船のハッチが開く手前でトリラがつぶやく。それは、どれだけ小さな声だったとしても硬く自身に言い聞かせる決意のようなものだった。

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