EP6 エターナルユニバース -Eternal Universe-

第16話 私なりの決意

 ティル君の戦闘機のシートに体操座りで座って操縦桿をいじる。

 正直今は気持ちの整理なんてできるはずもない。オルトが倒れて頭訳わかんないくらいにごちゃごちゃして、今にも心臓が飛び出しそうなくらいに動悸がする。

「逃げたんだよね」

 そう、私は逃げた。本当は真正面に向き合わなきゃいけないことを、切り捨てるようにここにいる。多分私のせいで倒れたんだよね。でも、向き合えない。戦ってほしくないという思いとはかけ離れるように、あの場所へ送り込んだのは私だ。結果がまだ良かっただけであって、負けていた可能性だってある。オルトが死んじゃってた可能性も。

「あはは、バカだな。私はどうしたいんだろう」

 暗く深く沈んでいくように、この頭のごちゃごちゃで頭の中が真っ暗になり身体が重く縛られる。まるで重力や引力に引き寄せられ、今まで宇宙を漂っていた塵のように燃え尽きていくように自身への後悔や怒りが沸々と出ては消えを繰り返す。

「おーい」

 不意に扉から声がかかる。

 あまりメソメソしているところは見せたくない主義なので、自分でも気づかないでいた涙にハッとなって拭きコックピットから出る。

「んなとこにいたのか。そこにいても気持ちは晴れねぇぜ?」

 おどけたような雰囲気の声の主はティル君だった。

「そこそこ落ち着けたよ?」

「嘘コケ。あれは人を殺すためのもんだ。そんなとこで落ち着ける訳ねぇな」

 いつもの雰囲気なのに、その時の声は鋭く、冷たいような気がするそんな声音だった。

「そうかもね。かなり、ううん。すごく落ち込んでる」

「どうせ自分のせいだとでも思ってんだろ。アイツがそう望んでやってるだけのことだ。それにトリラは力を貸した。そんだけだ」

「そんな簡単な考え…」

「そんくらいじゃねぇと人生つまんねぇぜ。カレアといいどうしてこんなお人好しばっかなんだ?」

 鋭い指摘だ。思った以上に見透かされてる。というか、カレア君が同じように考え込むタイプだからということで同じ括りのグループに入れられてる。

「それはなんというか心外なんですけど」

 図星に加えて手玉にとるような扱いで、少し遺憾だというような態度で返事をする。

「アイツも変に抱えて考えて悩むんだ。さっきまで未来の全員まで心配して考えてたわ。その都度考えろってのに」

 ため息まじりに心配を口にしている。ティル君はふざけているように見えていて一番この船の中にいる人間の心配して、このように船員のメンタルケアまでしているのは彼なりの優しさの形なんだろう。

「ありがとね」

「そりゃどうも」

 ひと通り会話すると、またスタスタとこの場を後にするように歩いていくと、ふと何かを思い出したかのように振り返ってくる。

「ああ、そうだ。そろそろ出発の時間だ。心の準備はしておけよ?」

 緊張が皮膚を走る。ここからまた戦いが始まるんだ。オルトはまた戦いに身を投じて、ボロボロになって、みんなも命を削って。

 私には戦う覚悟がどうしてもできない。痛いのも辛いのも苦しいのもどうして我慢できるのか不思議で仕方ない。覚悟なんて言葉でどうにかなるものなんだろうか。死んじゃうかもしれない。

 でも、それでも、

「わかった」

 私にだってできることを。

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