第9話 強襲

「トリラ!ヴェル!お前らは先に船に走れ!」

「うん!」

「はいぃぃ!」

 カレアのコスモスとティルの持つマグナムでかろうじて一撃目の攻撃を受け止めている状況の中、非戦闘員であるトリラたちを逃がす。

 襲撃者は黒のローブに顔全体を覆う趣味の悪いマスクに大きな拳!?背丈はオレとあまり変わらないが、異様に大きな彼の武装が目に留まる。

「背中を見せて退いてくれるなんて、おれたち信頼されてるなぁ!カレア!」

「重ッ、状況考えろティルゥ!口動かさずに力入れろぉぉぉ!」

 二人がかりで押さえるのがやっとの状況なのが分かった。今まで力負けしていなかったカレアがティルの力を借りてもやっとなんて相当向こうの力が強いことがわかる。

「オレも何か手を!」

 咄嗟に助けようと態勢を起こす。が、

「さっさと退がってろ!」

 カレアが怒鳴りを上げてオレを制止させる。

 失敗した。そうだ。オレは何処まで行ってもこいつらにとってはオレも非戦闘員なんだ。二人と違い武器を持っているわけでもないし、本当の戦いなんてしたこともない。しかもこいつら二人がかりでもキツい相手だ。一般人のオレは勝ち目なんてない。

「ああ、分かったよ、分かった!」

 急いで船の方に体を向け、走り出す。

「ァァァ…コロ..ス」

 背中につん裂くような冷たい感覚が走る。明確にそして堅実にオレへ殺意を襲撃者が向けていることがわかる。二人で抑えられているけど、抑えられていなかったらオレは木っ端微塵に今頃されているのだろう。

「クソ!」

 背中に走る嫌な感じを後に船へと走る。

 二人に背を向けながら走る自分が嫌だ。こんな時にあいつらと一緒に戦える力が欲しい。そう考えながら全力で船へ走っていくしかできなかった。



「うわ!」

「うお!」

 襲撃者に押さえていた状態を一振りで薙ぎ払われ弾かれる。

「アイツなんなんだ。拳というか腕の付け根まで甲冑みたいな武装。見たことねぇ!」

 腕ごと改造されているのか?ここまでパワーで圧倒されるなんて久しぶりだ。一撃が重いのにもかかわらず、随分とまあ動きが速いんだな。

「カレア、アイツ正気じゃないぞ」

「ああ、多分意思疎通は無理だ。喋っているというよりも唸っている?感じか」

 正確に喋っているという感じではなく、喉の奥から漏れている音のような感じだ。でも、さっきオルトに対しては確実に単語を発していた。オルトに対してのあの執着のようなやつはなんなんだ。

 ぐるぐると頭を回していると二発目が来る。

「右ストレートッ」

 コスモスの刃で相手の攻撃を受け流しながら斬り返し、反撃する。が、反撃する最中に左拳から攻撃が飛んでくる。かなり無理な体勢からの攻撃だったからダメージは少ないと思って油断した。思いっきり吹っ飛ばされ、ギリギリガードは間に合ったものの、確実にダメージが自身を蝕んでいるのがわかる。

装填セット射撃シュート

 ティルからビームが放たれる。


 「OS-XX」、ティルが持つマグナムはビームが発射される。この世の中では人が持つ携行火器でビームが出せる火器はほとんど存在しない。なぜか、それはビーム兵器を発射すれば人体が耐えきれない反動を受けるからだ。しかし、ギリギリまで出力をいじり、反動を軽減するフレキシブルアームでティルのマグナムはビームの発射を成立させている。威力は折り紙付きだ。


だったのだが、拳を盾のようにし、ビーム弾を弾きやがった。

「はあ?そんなのアリかよ」

 一撃必殺の威力だ。受けたらひとたまりない。なのにノーダメ。これだけでこの存在はイレギュラーだということがわかる。いや、もうすでにありえない体勢での攻撃をヤツから喰らってるけどね。

 ビームが放たれた瞬間に状態を起こし、防がれることはないと思っているが念のために動いていた。防がれているのを横目に、ガードの隙をつき俺はガラ空きの背中を狙う。ここで一撃は弾かれることを想定し、二連の剣撃で斬りかかる。

「三式!」

 『ミゾレ』一撃は案の定弾かれる。が、そのまま弾かれる勢いを利用し脚部へ流れるように滑り込む。そのまま脚へ攻撃を撃ち込みにいく。が、相手は大きな拳で地面を殴り、その反動で空中へ高く舞う。

「「そんなんアリかよ」」

 あっけに取られた俺らはハモってしまう。

「射撃」

 あっけには取られたが、空中へ高く舞っているのを好機とし、ティルが追撃する。しかし、相手はまたしても異次元の挙動でビームを弾くようにガードしそのまま振りかぶって落ちてくる。

「避けろティル!」

 相手はそのまま落下コース一直線で攻撃の体制に入り、ティルに仕掛けに行く。鈍い音がなり、地面に穴が開く程の威力を出しながらこちらへ不気味な眼光をゆらりとむけてくる。

「危ねぇ」

 奴の攻撃の反動で吹っ飛ばされたティルが、受け身を取りながら体制を立て直す。回避はギリギリ間に合っているようだが、ティルへの攻撃によるダメージは入っているようだ。

「装填」

 すかさずティルはマグナムに弾を込め銃口を向け追撃を入れる。

「射撃」

 その言葉を合図に俺も間合いを詰め追撃しに向かう。襲撃者はビーム弾を回避行動もせず腕一本で防ぐ。そして、ゆらりと立ち上がると、その瞬間奴がが視界から消えると同時に後ろにいたはずのティルから鈍い音が聞こえる。

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