第6話 冷静に燃える

「とりあえず買うものは買ったな」

「思ったより多いなこれ」

 メモを見ながらそう呟くティルを横目にEOEの詳細が頭によぎる。

「なぁティル、今回の件で帝国に目をつけられているのはトリラだけじゃないってこと分かるよな」

「んなことは承知の上だわ。オルトだけじゃなくおれらもターゲットだろうよ」

 そうだよな。派手にかましてしまった自分に少し反省してしまう。

「そんな気ぃ落とすなよ?救出する時点でおれらの船はマークされることは確定してる。ましてや少人数のおれらは派手にかますことで少しは舐められることはないだろ?」

「そんなこと言ったってよ、ってもう過ぎたことはいいよ。さっさと帰ろうぜ」

 ティルには焦りが見透かされてるみたいで、どうにもならないこの状況、帝国との敵対という状況は考えるだけで焦る。この銀河系で二強という組織が付け狙ってくると思うとゾッとする。まぁ今焦っても意味ないのにね。だからこそ、コイツは気を遣ってるんだと思う。お気楽ヤロウのティレビアには助けられてるな。

「焦ってもしょうがないよな。すまんな」

「気にすんなよ兄弟?」

 ハイタッチでお互いに今は気にすることは終わり。ここからは覚悟とそれからまぁ色々でいけそうだ。ティルもその気だ。まだ俺たちは土俵に立っただけ、ああ、分かってるよ。

 するとなんとタイミングのいいことだ。女の子だと思われる叫び声が路地裏から聞こえる。

「行くぞ」

「そうだな」

 ティルはこういうシチュエーションに弱いよな。多分今の叫び声俺ら以外に聞こえていない状態だ。ほんとにお人好し丸出しだな。



 向かうと、女の子と周囲にチンピラが3人。

「荷物はお前が持ってろ、前は俺の仕事」

 ティルに荷物を渡しながらセイル「コスモス」を引き抜く。

「頑張れよー」

 心もとない応援を後にズイズイ詰め寄っているチンピラに言ってやる。

「今更ナンパはダセェぞ」

 こっちは持ちきれない物持っちまったんだ。少し腹いせさせてもらう。

「なんだにいちゃん。やめときな、怪我するぜ」

「コイツ喧嘩売ってきてんな」

「ボコボコにしちまおうか」

 揃いも揃ってテンプレばっか言ってんな。

「抜刃」

 こちらも応戦しようじゃないかという形でコスモスの刃を展開する。

「怪我するのはどっちだろうな」

 軽い挑発から入る。

「テメェ!」

 一人目が間合いに入ってくる。ナイフ持ちか。

 楽勝。

「腰に力が入ってねぇんだよ!」

 その細いチンケな体躯でナイフを押し付けてくるが、その動きを利用し裏に周って柄で殴る。オーケイ。ノックアウトだバカヤロウ。

「やりやがったな!」

 二人目、三人目は同時に殴りかかってくる。

「手加減してやってる自覚しとけよ」

 あえて刃を潰したコスモスで周囲を一閃。

「六式」

 吹っ飛ぶようにチンピラ二人を斬り伏せる。いくら刃が無いとはいえ切った部分は服は破ける。

一輪イチリン

 その程度の力で襲う相手を間違えてんだよ。セイルの特性で刃を潰してるから軽傷で済んでいるものの刃があったら内蔵飛び出てんだぞ。

「後は」

 後ろへ振り返り、最初の一人が起き上がっているのを知っているため相手の獲物を狙い、

「五式・鳥羽トリバネ

 鋭い突きで手に持つナイフを弾き飛ばす。

「んだよ、おれいらんじゃん」

 戦闘に夢中で背中にブラスターを突き付けるティルが見えていなかった。

「あんがとさん」

 チンピラは俺のコスモスとティルのブラスターでがんじがらめになり、降伏せざるをえなければいけない状態になっていた。他人事になるがこれはこれで相手が可哀想ではある。

「さっさと仲間連れてどこかいけ」

 殺気を込めた言葉で凄むと、チンピラは怖気付き解散していく。

「コイツは高く付くなぁ」

「後で史那から金せびろうかな」

 まさかの出来事で争い事に発展するとはね。俺のせいじゃない。ナンパはやめろって言ったら向こうから押し入ってきたんだ。正当防衛。正当防衛。

「んで君、大丈夫?」

 ティルがいつの間にか女の子のところへ向かっていた。コイツほんとに。

「おいティル、近ぇっての」

「いえ、助けてくれてありがとうございます。私ヴェルって言います」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る