EP2 ハイドインフォメーション -Hide Information-

第4話 疑問を抱く

 政府関係者と名乗る奴らから逃げた後、現在逃げてきた星ファナラスの軌道上に浮かんでいた。

「とりあえず現状整理をしようか」

 この船の船長ティレビアからできる限りの情報整理の提案が出た。

「ああ、このわけわからん状態じゃ、どうにもならんからな」

 この船のクルーのカレアが賛成する。

「そうだな、いきなりトリラが連れてかれそうになって本当に訳がわかんねぇ」

「本当よ…。私何か変なことしてしまったかな?」

 オレとトリラはイマイチまだ状況の把握ができていない。

「カレア、お前尋問したんだろ?なんか情報吐き出せたか?」

 ティルがカレアに手に入れた情報を聞く。

 てか、尋問って怖すぎだろ…。

「当たり前だろ、まずアイツらは政府関係者で間違いない。ただ…」

「「「ただ?」」」

 なんか含みのある言い方だな。

「ここファナラスの政府関係者じゃない。帝国政府の関係者だった」

「嘘だろ」

 予想外の答えで言葉が漏れる。本来、ファナラスは星間同盟所属の政府だ。だが星間同盟を良しとしていない独裁国家、ガラウーヴァ帝国が関わっているとは。

 帝国と同盟の連中は仲が悪いことで有名だ。帝国は領土拡大を望み、それを良しとしない同盟がいつもいがみあっている。

「スパイってことか?」

「かもね」

 にしてもティルにカレアは冷静に分析してるな。再開した時もあまり混乱していなかったし。

「ティル君たちよく冷静になって考えれるね」

 さっき思ったことをトリラが代弁する。

「こんな事なら幾らでもあったよなぁ?兄弟?」

「まあな。沢山の星々を飛びまわってると星の数ほど体験できる」

 ふたりがうつろな目になり目を逸らしながら言う。

「詳細は聞かないでおくね」

 触らぬ神に祟りなしって事だな。

「話戻すぞ、次にトリラが狙われた理由だ」

「そこまで吐き出せたのか?」

「いやぁ?詳細は知らん。ただ、『EOE能力者』がトリラに当てはまるらしい」

「「「いーおーいー?」」」

 カレアから出た初めて聞いた言葉にオレたちは首を傾げる。

『聞いたことがない名前ですね。私のデータリンクと統合しましたけどそんなデータないですね』

 人工思考体のナノちゃんでも分からないって相当だぞ。

「困ったな、それ以上を吐かなかったからどうにもこの先がね?」

 ただ、急に力が湧くあの感覚がトリラから来ていることは感じ取れた。

 そのなんちゃら能力者ってのがトリラってことは間違いない。

「何かの略語ってことはわかるんだがなぁ」

「んじゃティル、あそこ行こうぜ?あたり」

「それがいいかもな。あそこなら裏の情報握ってる奴にあてがある」

「アイツらなぁ、おれ苦手なんだけど」

「この状況でそんなこと言ってられないだろ?」

「まぁ、それもそうだなぁ」

 カレアとティルがわちゃわちゃ話していたが、どうやら行き先が決まったようだ。

「あー、あー、全クルーに告ぐ、この船『TenCry』は『貿易中継星ダグナス』へ出航する!」

 意気揚々とティルが次の行き先を告げた。


〜〜


「リープする前の最終確認終わりっと」

 いつものようにリープオーバーする際の確認をトリラと一緒に行う。

「さっきはありがとう。カレア君」

「あんな状況だったんだ。助けるのは当然だよ」

 そう、宇宙では助け合いで成り立っている。感謝されるのは嬉しいけど、当然のことをしたまでだと思っている。

「あのさ、カレア君」

「なに?トリラ」

「オルトの雰囲気が変わったの分かる?」

 トリラの突拍子の無い質問に少し躊躇う。なぜならオルトと再開して少し喋ったら気づいたことだった。

「5年前のあの時に生きてることがわかって嬉しかった。けど少し違和感があるの」

「違和感…」

 それは多分俺がもしかしたら心の奥で気づいた部分なのかもしれない。

「どこか別の人間みたいな感覚。私とオルトは小さい頃から一緒だったからそんな気がするの」

 彼女とオルトととの関係はかなり密接だ。そんな彼女がオルトの小さな変化に気づかない訳がない。

「とりあえずさ、今は君が危険なんだ。あんまり他の難しいこと考えても仕方ないよ」

「でも…」

 彼女が過度に心配するのは仕方のないことだ。オルトとトリラは小さい頃から一緒にいた。その分、彼女にとっては大きな変化であり、大きな問題でもある。

「一旦ティルと話してみるよ。だから今は自分の心配をして」

「ええ、分かったわ」

 引っ掛かる部分が多すぎる今回の件とオルトの件、何か引っ掛かるな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る