第2話 刃の行方
「これどういう状態?」
久しぶりに見た友の姿を見てなんとも言えない感情が漏れる。
「カレア…。」
「カレア君!」
カレアビス・コーサラス。オレの古い友達だ。
「やあやあ、久しぶり」
外見は昔よりも少し変わったが、雰囲気はまるで変わっていない。
「久しぶりだな。状況だっけか、今まさに政府関係者を名乗るヤバい奴らにトリラが連れてかれそうになってるとこ」
「事案じゃん」
トリラがカレアとの会話を聞き苦笑いしている。嘘は言っていないが、かなり変な方に勘違いしてんな。
「カレア、一人頼めるか?」
「そっちは一人で大丈夫なのか?」
ああ、多分キツイだろう。何せ此方は丸腰で向こうは武装しているのだ。心配されるのも無理もない。
「多分大丈夫だ」
自身が無理言っていることは重々承知だ。ただ、男の覚悟を舐めんじゃねぇって。
「一応応援を呼んだからあと3分耐えな。精々気張れよ」
いつの間にかカレアが応援を呼んでいた。しかも、時間制限まで設けてくれた。
「楽勝」
もしかしたら簡単に無力化されるかもしれない。3分も耐えられないかもしれない。でも、そんな考えを押し殺して出た言葉は単純だった。
「オルト、あまり無茶しないでね?」
トリラがかなり心配しているのがわかる。もちろん無理はするかもしれないな。
「安心しろって。無茶はしない」
ここで倒れる訳にはいかない。例え世界に後ろ指を刺されることになってもこの時は守れそうな気がした。
〜〜
オルトと合流するために近くまで来たが、あらかじめナノにトリラの使っている端末をトラッキングしておいて向かったらあらまビックリ、古い友人達が銃を突き付けられているし、撃たれてるし、そこにオレも割り込んじゃうし。今日運命力たりてない?
そんで今に至る訳だ。
クソ、守るにしても乱戦状態は避けたいな。ここで乱戦に持ち込まれて相手の目標を達成されちゃ意味がない。
「抜刃」
まるで光輝くようなその刀身は柄から流体のようにするすると出て刃を形成していく。
「まず一人ィ!」
後ろにいたもう一人の敵から潰しに行こうと素早く間合いを詰め、攻撃を仕掛ける。
「!」
いきなりの攻撃で、反射的にヤツが持っていたテーザー銃を掲げ防御をしてきたので、テーザー銃を丸ごと切り捨てる。
「ありゃ?」
速戦即決で行きたかったから確実に倒しにいたんだけど、思ったより浅くてびっくりした。コイツできるタイプか。
「なあ!」
「…」
こちらが話しかけても相手は無視。それどころか殺意剥き出しだ。
「まあ、それだけ分かれば十分か」
相手も敵対していることがわかれば十分。
まぁ、当たり前か。割り込んだ訳だし?いきなり吹っかけたわけだし?
「銃器の類はまだあるんじゃないのか?」
俺は相手の武装を探ろうとする。それにしても喋んないなコイツ、コミュ障か?テーザーの発射体は破壊した。でも、まだ何か隠し持っている気しかしない。相手側がまだ余裕のある空気だ。
「後悔するな」
コミュ障が少し苛立ちを露にしながら隠していたハンドガンを取り出す。先程考えていたドキドキは、予測していた一番上のジャンル隠し持っていたのが銃器って、テンプレすぎるし、こうもすぐ顕になるとなんか内心ガッカリする。
「さぁ、遠慮なく来いよ」
気を取り直し、俺は挑発しながら俺の武器『コスモス』を構え直す。と、同時にコミュ障が発砲してくる。容赦ないなぁ!
飛んでくる弾丸を見ながら光る刃でひとつふたつといなしながら弾いていく。弾丸は斬るともっと殺傷力が高くなる。だって弾が2つに増えるからね。だから、切らないように弾を刃の腹で擦り付けて弾道を変える。
普通のみんなが思い浮かべる剣では刃がもたないが、この武器だからこそできる荒技だ。
「ッチ!セイル使いか!」
『セイル』、それは俺が持つコスモスのことだ。
このセイルという武器は恒星付近の小惑星にある極少数しか取れない金属から作られる。金属は変幻自在に硬度、形状を変えることができる珍しい金属だ。金属自体に意思があり、持ち主が考えた形状になる性質をもっているが、持ち主を選ぶ性質もあるため使用する人間は少ない。
「しかもお前、眼が良いな?」
「さぁ?」
大抵の場合、剣では銃と戦えないのが普通だ。間合いじゃ圧倒的に不利だし、弾丸は速い。だが俺の場合、セイルという特殊かつ少人数しか使わない武器に加えて、飛んできた弾を見極めれる才がある。
まぁ所謂初見殺し。所詮初見ではまずまず見極められない。人の固定観念を逆手に取った簡単な戦法。
「手の内は明かさないか」
「それはお互い様だろう?」
今回は拳銃だったから防げたが、アサルトライフルなど連射できる銃は弾幕で即座に蜂の巣にされる。そんな突けば落ちてくるような弱点を自分からなんて晒す筈がない。まぁ、ヤツがその得物を持っているならって話だけど。
「そい!」
撃ってくる弾を弾きながらジリジリと自身の攻撃できる範囲まで詰め寄る。腹を掠めたり、顔のすぐ横を弾丸が通る。だが、退くことは絶対にしない。弾を弾き、相手の残弾を空にしてしまえばこっちのもんだ。リロードのタイミングで一気に押し込む算段で少しずつ間を詰めていく。が、相手も負けじとリロードのタイミングを合わせ、こちらの詰め寄る瞬間を感知し、間合いを広げる。
「上手いこと逃げるなぁ」
仕掛けるタイミングを相手はかなり深く読んでるみたいで、思うようにこの死合いを制することができない。これじゃあイタチごっこだ。あまり気乗りはしないけど、変に時間使うのは良い策なんて言えないから奥の手一つ出しますか。
「七式…」
相手の攻撃の合間、一瞬の隙にググッと脚に力を溜め、標的の動く可能性を全て考慮するように計算をする。透き通るように視界が開き、異常なほど落ち着く状態。まるで水中の中のように音が響き息が重くなるこの程よい緊張感。
敵が一番油断する瞬間は銃弾を放った一瞬の隙。そこを確実に突くように油断を誘う。
「ッ!」
相手の銃の引き金が引かれ、周囲にマズルフラッシュと轟音が一帯を包む。ここが好機と言わんばかりに脚に溜めていた力を解き放ち、瞬間移動をしたのかと疑われるほどの加速で相手の懐に潜り込んだ。
「
一閃を放ち相手が持つ銃を本体ごと切り捨て、抵抗する時間を与えないと言わんばかりに太ももに刃を突き立てる。状況が一瞬理解できず、ワンテンポ遅れて汚い悲鳴を上げるとともにその場に崩れた。
あまり騒がれると困るので、突き立てた刃を納刀し、柄で相手の頬を抉るように殴った。
「ぐあぁ」
鈍い音と共にその場でコミュ障は地面に突っ伏す。幸いまだ意識はあるようだ。
「ぷはぁ」
一瞬に時間を注いだ影響で疲労がドッと来る。十式あるうちの一つ七式の技の一つ『
瞬発力を最大限に活かすため、脚への負担が大きく、同時に血流の循環がトップスピードになり、疲労やら体は熱くなるやらであまりこの技使いたくなかったんだがなぁ。
自身の呼吸が乱れ、体は重く感じるが、落ち着かせるように深呼吸する。
多分じきに体は軽くなるさ。
「さて、なんでテメェらみたいな奴らがここにいる?情報を吐いてもらおうかな?」
戦っている内に少し現場から離れてしまっていた。
少しでも情報が欲しい状態だったから尋問することを選んだが、オルトは大丈夫かな。
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