エントリーオブエタニティ -Entry of Eternity-
田中運命
EP1 ビギニングドライブ -Beginning Drive-
第1話 デイブレイク
5年前のあの日、謎の物質が空間を破壊し、未曾有の大災害になった。住んでいた星は壊滅的な被害を受け、いまだに非生存圏が存在、人々の往来が目に見えて少なくなった。
この災害は「
その災害を目の前で体験し、奇跡の生還者がいた。
それがオレだ。
今日も学校帰りに孤児院に寄る。友達は多い方ではないが、それでも放課後遊びに誘ってくれる友達はいる。
ま、やんわりと断らせていただいているけど。
遊ぶ時間がないというのは語弊があるが、ここによることは日課みたいなものだし、恩返しみたいなものだから余程のことがなければ絶対に行くようにしている。
「ちゃーす」
オレは挨拶しながら入る。
「にーちゃん来た!」「お兄さんどうも」「オルトだ!ちゃ!」
チビ達から挨拶がたくさん返ってくる。
「おうおう賑わってるな」
ここの子供達は訳ありだ。
経緯は色々あるが、5年前の災害で孤児になった子達が多い。あの災害で何もかもが変わった。
綺麗な景色が見れていた場所は酷く歪み、チビ達のように幼く親から離れて暮らすハメにもなっている。
ふと、自身が災害にあった嫌な記憶で顔が曇る。
「にいちゃん大丈夫?」
顔色を伺った一人が心配そうに見ている。
「心配すんなって」
心配そうに見ていた子をなだめる。コイツらには不安になってほしくない。それが今のささやかな願いでもある。
そうしているうちにオレに声がかかる。
「オルトなの?ごめん、少し手伝ってもらっていい?」
「ちょっと待っとけよ、トリラ」
彼女はトリラ・クレバー。彼女もここ出身でここで働いている。
本当はオレみたいに進学できたが、ここで貢献したいという強い要望により今に至る。
メガネに三つ編みをしていて、例えるなら委員長みたいな風貌だろう。根が真面目だからか、自然とその例えが納得できる。
「ごめんね、いつも手伝わせちゃって」
トリラが微笑みながらも少し眉を
「オレも好きで来てるから気にすんなって」
本当に好きで来ているんだ、あまり気にしないで欲しいんだけど。
「あとね、カレア君来るって」
トリラの口から出たのはまさかの客人の名前だった。
「それ本当か?」
実際、だいぶ前までしか会っていないし、最後にあったのは災害前だ。
「ナノちゃんから連絡があってね。今向かってるって」
しかも急だな。ちゃんと事前に連絡してこいよ。
「じゃあ、もう少ししたら来そうだな」
「まぁ、その来る間ってことで買い物行かない?」
「いいけどそのくらい」
多分荷物持ちだろうけどまあ全然時間はあると思うし、いつも頑張っているトリラに何かしたいという思いもあり承諾した。
「んじゃ、まあ行こうか」
そう告げるとトリラは買い物バッグを肩に背負い込む。
「たくさん買ったな」
近くといっても少し遠いが、一番近くのショッピングモールに来ている。この辺は古風な都市の郊外であるためか、人もあまり少ない。公共機関はしっかり通っているためクソ田舎と言えるほどでもない中途半端なところ。
どっさりと買い込んだ買い物バッグはいつの間にか三つに分裂しており、食べ物、日用品、衣類等に種類が分けられながら入っている。そのため、めちゃくちゃ重い。
「こんな時でしか買い込んでおけないもの、オルトを頼りにしてるからね。ついつい」
正直年頃の思春期男子は女の子にそんなこと言われたら誰だって嬉しくなる。
すると、急にトリラは頭の中にあったモヤモヤが晴れたかのような顔になり、
「思い出した!ごめんオルト。買ってないものがあったから急いで買ってくるね!」
と告げ、いそいそとかけていく。
オレも後を追うように歩いていく。慌てた様子でかけていくトリラをみていると、こんななんでもない日が続けばいいと思っていた。
ふと気がつく。不自然な程に人が全然いないのだ。平日であってもショッピングモールでは人は多く集まるハズ、もちろんこのショッピングモールの辺は人が盛んにいるわけでもないのだが、そもそも人がいないのである。
「不気味だな」
そう口でつぶやいてしまった瞬間、聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえた。
「クソ!」
悲鳴のなった先へ重い荷物の重さを忘れるくらい必死になって走る。
「トリラ!大丈夫か!って、ぅわぁ…」
角を曲がってちょうどのところで、その光景を目の当たりにしたオレの口から気が抜ける音が漏れる。
黒ずくめの男二人に連れて行かれそうになっているトリラがいた。なんてテンプレートな展開なんだ!こっちが恥ずかしい気分になる。
「なんなの!この人達!」
トリラが掴まれた腕をなんとかはがそうと必死にもがいている。
「オイ!放せよ!」
力いっぱいにトリラを掴んでいる男の腕を振り解く。そして、自分を盾にするようにトリラを後ろに誘導した。
「どういう状況だよ」
自分でも驚くほど語彙力を失った質問が出る。
「うんとね?角を曲がったら急に腕を掴まれて連れてかれそうになったかな?」
唐突の出来事でこっちも混乱してるのか、無理もない。
「あとね、EOEをどうとかってあの人達が…」
トリラが連れて行かれそうになった時に聞いたのだろう。
しかし、EOEねぇ。聞いたこともない単語?だな。
「とりあえずこの状況をどうにかしないとな」
「そうね。どうにか帰ってもらわないと」
向こうも手を出してくる気配はない。いや、いつ向こうが動いてくるかわからない。どちらも反応を伺っている状態だ。
「どうにか、どうにかねぇ」
向こうは武装している可能性があるし、下手に動けない。こちらの状況に対して、向こうはトリラをどう連れて行こうか考えている感じだな。
きっと無傷で連行しろっていう命令が出されているはずだ。テンプレだったら。
そんな少し深読みをしていると向こうの男一人から切り出してきた。
「そこの坊主!横の奴を渡してくれないか?俺らは政府関係者なんだがそいつが必要でねぇ」
ここで交渉を切り出してくるのか。図太いという単語が当てはまるな。政府関係者と言われても確信が持てないし、服装だけで判断なんかできやしない。
「政府関係者って本当か?何が目的だ!」
何者か?目的は?という重要なところを質問する。
「政府関係者っていうのは本当だが、目的は残念だが機密事項で言えねぇがな」
そう言いながら男はIDカードのようなものをチラチラと見せつける。
政府関係者は本当なのか?正直確証は持てないな。目的の内容は期待してはいなかったがやはり教えてくれないと。
悩む必要もないな。
「無理な交渉だ!とっとと帰りやがれ!」
交渉は決裂していると大声でアピールする。最初から乗る気なんてないけど、連れていく理由がわかっていないのにトリラは渡せない。
「そいつは残念だ。じゃあ手荒にやるしかなさそうだなぁ!」
男一人がそういい終えると男たちはテーザーガンを構える。まあ、武器は何かしら装備してるよね。知ってた。しかも、拘束する気満々じゃねぇか。
「かかってこい......」
ここでトリラを渡しはしない。意地でも守る気でトリラの前で身構える。
「いい度胸だ!こんな形で会いたくなかったなぁ!」
男達は引き金を引いた。
「クソッ......」
これは大当たりだ、なんて思ってしまうほど正確な射撃。その瞬間光刃が弾を弾く。
弾を弾いた人影は見覚えがあった。
「これどういう状態?」
久しぶりに見た友の姿を見てなんとも言えない感情が漏れる。
「カレア......」
「カレア君!」
カレアビス・コーサラス。オレの古い友達だ。
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