第2話『玲郎(れお)と“声だけの少女”の出会い』(2023/10/20(金)Lit.Link投稿/元のメモ書きは2021年3月頃作成)

◆◆◆実はこの世界は9回目の世界で、以前に8回「失敗して滅びた」世界を経てのやり直し中である。

過去の失敗した世界ではいずれも継人(つぐひと)とエレナの間に「長男」が一人生まれていたが、失敗してやり直す度に、その前に一人、流産して死んだ戸籍に載らない「兄」が追加される。だがその「兄」たちは過去に失敗した世界での「長男」を表していて、当世界での「長男」はその生まれ変わりとして過去の記憶を密かに受け継いでいる。

つまり、9回目の現世界における「ソラ男」の時点で8人の流産だった「兄」たちはすべて、ソラ男の前世であるといえる。◆◆◆


継人(つぐひと)が“猫憑き”=“猫神”としての役目と、自身の興味本意からの“猫神”の力についての研究で忙しく、母親のエレナ任せで幼少期はほとんど外国で育ったため、順調に「魔王」の素質が育ち、日本に移り住んで10歳の頃には「魔王」が半覚醒で玲郎(れお)こと1番目のソラ男と人格が同一化していた。しかし、「魔王」は人間としての暮らしを気に入っていて、闇組織からの要望にはうんざりしていた。(この辺の玲郎(れお)と魔王の関係は、後の追加エピソードを思い付いた時に変化している。継ぎ足し修正しながら創作中のため。これはその変化の過程を残すための記録)


「何で自分たちの手で充分叶えられる願いを俺に叶えてもらおうとする?欲望のままにアレコレしたいなら自分たちで勝手にしろよ」


「何で自分たちでは作り出せない(と信じる)ものを、世界を破壊したがる?自分たちを縛る世界からの解放を願う、だぁ?そんなの自分一人が死ねばすぐにでも叶うだろ?他の興味のない奴らまで、盛大な自殺に巻き込もうとしてるんじゃねぇよ!」


こんな感じだったので、母親のエレナにも苦情は来たが、大部分の苦情は何故か育児にほとんど関われてない父親の継人(つぐひと)に向けられ、曰く「お前の教育が悪かったから、こんなひねくれた魔王になってしまったんだ!」と。


それに対して継人(つぐひと)は、


「確かに玲郎をあまり構ってやれていなかった。それは反省する。だが……俺の教育が悪かったってどういうことだ?何の教育だ?魔王にするための教育か?それなら妻のエレナがやっていたと思うが……“愛情いっぱいに甘やかして、わがままに”育っただろう?幼い頃の玲郎の“我が家の魔王様”ぶりは、それはそれは……だな、それこそがお前たちの求める魔王様の素質なんじゃないのか?

良識的常識的基準からしたら、逆に育て方を間違ったとさえ思うほど酷かったぞ?まぁ、俺は忙しさにかまけてほったらかしにしてしまったが。そのせいか、こんな自分では相手にされないとでも思ったのか、自分から良い子になろうと考えたのか、途中から真面目君になっていたが。

……それも、中学の頃の反抗期でぶち壊しで、20歳過ぎた今はあんな感じだが……これのどこが教育が悪かったのか?その辺具体的に説明してくれないか?」


といくぶん逆ギレ気味で、闇組織に対して反抗したとして、とっさに夫を庇おうとした妻のエレナと共に殺害される。


そのことで継人(つぐひと)から“猫神”の力の継承権が玲郎に移り、“猫神”の力を持つ魔王として覚醒(降臨)する。


その姿を見た闇組織とそれと繋がっていた核を持つ国のお偉いさんたちは、“終末戦争”を想起し、お互いに核を持つ他の国が“終末戦争”を開始するために核を発射するかもしれない、という恐怖に駆られて、どこかの国が最初に押してしまうと、他の国々も「迎撃するため」「報復のため」と言い訳をしながら、それぞれに、「ポチっとな」をして、世界の主要都市が壊滅的被害を受ける。


それが1999年7月のことで、これをきっかけに、“猫神”の力を持つ魔王となった玲郎の慈悲の元、世界が終わらされるか……という時に。その声がどこからともなく聞こえた。


「……なぁーんだ、そこで終わっちゃうのね?この世界は……私、まだ生まれてもいないのに。つまらないなぁ。ある日の朝に『遅刻、遅刻~』と慌てながらトーストを口にして通学路を走る女子生徒が、角で転校生の男の子とぶつかって……みたいな展開の物語も、始まらなくなってしまうのね?」


それを聞いた「猫神魔王」は思わず、


「そんな展開の物語なんか見れなくてもいいだろ?ってか、俺様は見たくないな、そんなの」


と突っ込みを入れる。


「例えばの話よ。それにあなたが見たいかどうかなんて関係無いのよ。

誰もが見てみたい世界なんて、結局皆が望んだ展開にしかならないでしょ?でも、私だけが見たい世界も、そんなの自分だけが夢想してれば済む話で、生まれてくる必要性すらないかも?

だけど望む人と望まない人がいて、望む人同士でもこの後どうなるかわからなくて、望む展開になったりならなかったりでドキドキハラハラして、どこかで見たような普遍的な、でもどこかで斬新だったりマニアックな部分もあって、何でもありなようで、だけど何か制限があった方がピリリとして、そのせいで切ない思いをするかもしれない……そんな世界が理想なのかもしれないけど。

私はもし生まれてこれるなら、どんな世界でも見て体験してみたいの!だってそれが、生きるってことでしょ?」


「なんだかんだと要求が多いな?おい。

……お前はそんなに生きたいのか?だが、この世界はダメだな、自分たちの中の恐怖心に負けて『ポチッとな』をしてあちこちが汚染された世界では。お前がちゃんと生まれてこれるかわからんぞ?」


「そうなの?……確かに、体のあちこちが痛くて、バラバラになりそうな感覚がある気がする……」


「おい?大丈夫か?」


「……ん、今のは錯覚かな?」


「まだ生まれる前だってのに痛みを感じるとか難儀だな」


「たぶん、痛みを感じられるのは、まだ存在できる可能性があるからだと思う」


「そうなのか?だがこの世界は……俺様の両親を俺様の存在が失敗だからと、俺様のことは怖くて殺せない代わりに殺した人間たちを、その存在を許したこの世界を、俺様は許せない」


「そっか。じゃあ、魔王さん、正確には猫神魔王さん?……猫神……ねこがみ……猫髪、っていうよりは癖っ毛魔王さんって感じだけど。この世界は、“1番目の世界”として、失敗作として心置き無く滅ぼしちゃっていいよ」


「は?」


「その代わりに、“2番目の世界”を作ってやり直してよ」


「はあ?何だその発想は、突拍子もない」


「あなたはそうすることができる力を持っている……持ってしまったから、できるはずよ?それで私が生まれてこれる未来に繋がる世界を作って!“2番目の世界”でも途中で失敗したら、“3番目の世界”を。それもダメなら“4番目の世界”を……」


「……おいおい、どこまでやり直しさせるつもりだ?」


「あなたは、そして、あなたに近しい人たちは、あなたがやり直したことで、その世界で、世界を作り替えられる、世界ごとやり直せる力を得られる、またはその可能性を持てるけど。

世界が変わると前の世界の記憶はいったん失ってしまうから、あそこでああ選択すればああで、とか前の世界の記憶を頼りにシミュレーション?して危機を回避、とかできないの。

そもそもやり直す以上、前の世界とはいろいろなことが変わってしまってるはずだから、覚えててもあまり意味をなさないと思うけど。

同じ世界の中でなら、力の使い方次第で、一定の範囲でループして繰り返しやり直し、みたいな展開もあったりなかったり、するかも?

ともかく、前の世界のやり直しだったことに気づけるのは、その世界でも失敗で、また世界をやり直す必要が出た時か、やり直す必要がなくなって、『お前(私)との約束を果たしたぞ』って堂々と言える状態になった時に、かな?

だから……」


「わかった。“声”だけでない、世界に生まれ落ちたお前に巡り逢えるまで、繰り返せばいいんだな」


「やってくれるの?」


「ああ。どうせこの世界を滅ぼしたら、それで俺様も消えるならいいが、もし俺様だけが残されてしまったら……暇すぎると思ってたんだ」


「そうなんだ?私も……一人で暇かも?」


「そうか。しかし、お前も相当……自分が生まれてこれる世界以外は滅ぼしてもよくて、新たにやり直して、って、かなり自己中だな?おい。魔王の俺様でさえ、そこまで考えなかったぞ?……まぁ、だからこそ俺様は魔王としては失敗作なんだろうがな」


「自己中、かもしれないけど。うん、確かに私はわがままかも!でも、いいじゃない?あなたも、失敗作だとしてもいいじゃない?そんな二人じゃなかったら、今、この世界が滅んだ時点で、この物語はジ・エンドで、この後は何も始まらないところだったんだから。言わば私たちはこの世界の……は滅ぼしちゃうから、その次の“2番目の世界”以降に続く世界の希望の星よ☆」


「うーん、そうかなー?本当にそれでいいのか心配になってきたぞ?(;¬_¬)」


……。


そして、現在は“9番目の世界”との説があったり、なかったり?


だが、この世界の魔王候補のうちの一人に、一人っ子長男でありながら「9番目」を意味する名前をつけられた者が存在する。


※※これはフィクションです※※


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る