第2話 エルフの代替わり
森の精霊エルフ。
ゆったりとした時間の中で穏やかに生き、外に出たら精霊魔法などを操って大活躍する種族。
ルックスも秀逸な者が多くて、皆の憧れの種族。
だけど、それはエルフの表の一面なの。
森のことを考えてちょうだい。
ある大木が老朽して、遂に倒れたとする。
そこに大きな空間ができるわ。日光がさんさんと降り注ぐ、大きな空間が。
その地面に、一斉に木々の芽が芽吹く。
それらが大木のあとの日光を奪い合うの。
万を超える新たな命が、一本の巨木があった空間の日光を。
だけど、最終的に生き残るのは一本だけ。
エルフの世界もそれは同じ。
私が10歳になった時、森の広場に子エルフが集まったわ。
エルフは仲間が減らない限り繁殖しない。だけど、仲間が減った時にはものすごい勢いで繁殖していく。
今、広場に向かう同世代のエルフは一万人に達しようとしているわ。
この子エルフが死んだエルフの後継者の座を巡って争い、一人が生き残る。
エルフの平均寿命は何歳か?
大体16歳くらいなのよ?
成人になった一人は数千年とか一万年を生きるけど、10歳から100歳までに死ぬ連中が一万人いるのだから。
子エルフ達を前に長老が訓示を垂れる。
「あー、君達は、名エルフと呼ばれたゴンゾウの後継者として生まれた者達です。ゴンゾウは我々にとって良き友であり、偉大な先駆者であり……」
イライラするくらい長い話が始まったわ。
だけど、ひょっとしたら、これが老エルフ達の作戦なのかもしれない。
みんなのイライラを募らせて、攻撃感情を増大させようとしているのかも。
「……結局のところ、皆さんの中から生きのこる一人は、ゴンゾウのような名エルフでなければなりません。そうしたエルフが育つことを我々は期待しています。それでは、ただ今より、ゴンゾウの後継者を決める戦いをスタートしたいと思います」
ようやく話が終わったわ。
その途端。
「死ねぇぇぇ!」
開始が宣言された瞬間、一人の子エルフが火の精霊を呼び出した!
周囲の子エルフ達数人をあっという間に焼き殺して、更なる精霊を呼び出そうとしている!
「ギャアアアッ!」
しかし、いきなり四方八方に攻撃を始めるなんていうことは、つまり、四方八方から狙われることをも意味している。
出る杭は打たれるじゃないけれど、いきなり叫んで攻撃するなんて、周囲からしてみれば、逆に狙ってくださいと言っているようなもの。
最初の攻撃を退避した子エルフが総攻撃をして、あっという間に出る杭エルフは消し炭になってしまったわ。
馬鹿な奴ね。
最初からあんな目立つ方法で暴れていたら、みんなのターゲットになるだけなのに、ね。
序盤は頭の悪い馬鹿エルフに暴れさせて、適当に間引かせる。
その間、私のような賢いエルフは身を潜めて、油断している連中を一人一人消していくのみよ。
短くとも百年はかかるこの戦い。
じっくり、ゆっくりかかっていかないとね。
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