エルフ(の子供)は大変です
川野遥
第1話 陥落女神はエルフに転生します
私は女神。
多くの死者を転生者として各世界に送り込む調整者だったわ。
でも、今は……
『女神……もとい、メガミよ』
「ははーっ」
私は数日前まで同僚だった神の前でひれ伏している。
『おまえは数々の失態を犯してしまった。故に女神の地位をはく奪することとなった』
「……はい」
そう。
私は女神の地位を剥奪されることになってしまったの。
そんなに大したことはしていないわ。
テレビを観ながら転生させて、送り込む時代を間違えてしまったとか、
ワールドカップを見ていて寝坊してしまって千人くらい待たせてしまったとか、
転生先の知識がなくて、適当に送り込んだら完全に違う展開になってしまったとか、
実は部下の方が良く知っていて、部下に直してもらったとか、
逆に転生先をよく知っていたけれど、調子に乗り過ぎてその世界を滅ぼしてしまったとか。
誰だってやっていることでしょ!
失態なんて言えるほど酷いことじゃないわ!
でも、ここは天界。
そういうミスも許されないところだったの。
「うぅぅ、シクシク……」
『……だが、天界も鬼ではない。これから15回、通常の転生者として転生し、10度以上成功したと認められれば、女神の地位に復してやろう』
「ありがとうございます」
そう。
神の地位は何だかんだ言って凄いの。
陥落したとしても次の場所……じゃなくて、次の機会に二ケタ成功すれば復帰できるわけ。
私にはまだチャンスがあるのよ!
『ということで、早速最初の転生をしてもらおう。まずはディード村のエルフとして転生するがよい』
「ディード村のエルフ!? まさか!?」
エルフに転生?
ということは、あの試練を乗り越えなければならないというの!?
『そうだ。おまえはディード村のエルフ新生児として生まれ、村を守り抜くのだ』
「か、神様……、もうちょっと楽な転生先はないのでしょうか? 初日から厳しすぎません?」
初っ端がエルフの新生児なんて、あまりにも酷すぎるわ。
「いきなりそんなところに転生させられたら、トラウマになるかもしれません。せめて千秋楽……じゃなくて15回目の転生に」
『ならぬ。まずエルフとして転生してくるのだ。それが嫌だというのなら、全部休みということになるな。当然、女神への復帰もなくなることになるが、どうする?』
「わ、分かりました……。エルフ世界に転生します」
『良かろう。頑張るが良い』
かくして、私は天界の飛行場から転生航空機に乗って、エルフの世界へ行くことになってしまった。
あぁ、憂鬱だわ。
この航空機、どこか別の世界に墜落してくれないかしら。
エルフは、エルフだけは嫌なのよー!
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