第12話
そうやってふざけあっていつもの調子を取り戻している時だった。
「!!ホホムラ先輩っ!」
けらけら笑っていた火焔に、誰かが抱き付く。
気付かなかった火焔は驚きの声を上げつつも、誰か分かって驚愕する。
「え!シックイくん?!」
「やっどみぢゅげだぁああ!!」
「わぁ、ぁあ…シックイくんだ…わぁ…あぁぁ」
全力全開の泣きべそをかくシックイを、火焔は優しく抱き締める。
「え、ホムの知り合い?」
「俺の後輩…」
それを聞いて、井出切は何も聞かなかった。
「おでのごどっ、がばっでっ、げがじでっ!いんだいじだぁあ!!」
「…あの時の判断を俺は悔いてない。お前が無事で、今も元気なら、それでいいんだ」
「じぇんばぁぁい!じゅぎぃい!もうはにゃしゃないぁいい!!」
ぐじゃぐじゃの告白だった。
けれど、火焔は、嬉しくてにやけてしまった。
「…ん」
だって火焔は、ずっと好きだった。
誰にも心動かされず、ずっと、好きだった。
まさかシックイの心もまた、変わらず同じだったなんて。
井出切は火焔がずっと一途に思ってる相手が居る事を知っていた。
それが今胸に飛び込んできてるのだ。
「よかったなホム」
心から祝福する以外、井出切には出来なかった。
それを火焔はしかと受け止め、泣き喚くシックイの背中を優しく撫でる。
「うん、ありがとなイデ。あ、君が要くんかな?えと、要くんもありがとう。悪いんだけど今日はシックイくん連れ帰っていいかな?」
急に人に抱き付いて泣いて告白する相棒を、黙って撮影しながら見守っていた要は、色々合点がついていたので「どぞ」なんの躊躇いもなく承諾した。
「イデ、ってことでまた今度な」
「うん、またな」
とりあえず飲み屋に入って軽く一杯ご飯を食べ、井出切の家へ帰宅した二人は、いつも通りクッションでくっついていた。
「カナメくん」
「うん?」
このままひと眠りしたいな、と思っていた要を井出切が呼ぶ。
「ホム、結婚するって」
その呼び方には思う所出来ていた。
幼馴染、だとは聞いた。
でも仲良しなのを見せつけられてもやっとする。
でも結婚。
そうか結婚か。
ホっとしてしまう二重の意味で。
「…シックイの好きな人、井出切さんの友達だったんだね。ずっと言ってたんだ。大好きな先輩、絶対見つけて結婚するんだ、って」
「そっかぁ…」
「…」
「その、カナメくん、」
「ん?」
今度こそこのまま、若干の後ろめたさを含んだ安心に包まれて寝よとうとした要を井出切が呼ぶ。
「新居の準備等整い次第ですね、予定を、たてておりますのでっ」
「…」
「俺と結婚してください」
「うん、する」
眠たいのに脊髄反射出来た。
自画自賛、して浸る。
優しさに。
愛しさに。
「うぅ、俺のプロポーズ大作戦がぁぁ」
「ふふ、どーてーめ…」
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