第11話

「え、それ誰?」


シックイは相棒が操作中のスマホを軽く見てしまい、申し訳ないと思ったけど言わずにはいられなかった。


「彼氏」


対して相棒、要は拒絶するでもなく、スマホの待ち受け画面をシックイへ見せる。


「…クソイケメンじゃん。どこで見つけたんだよ」


「飲み屋でナンパされた」


「このクソイケメンにナンパされた!?そりゃ、要でも堕ちるか…」


「かっこいーっしょ」


要は写真フォルダを開き、とある一枚をシックイへ見せつける。


「うわっ!エグ!えーこんなん飲み屋に居る?野生に生えてる?」


「生えてた」


「誰にもきょーみ、持たれたくなくて威嚇のピアス開けまくった奴の台詞とは思えねぇな…めっちゃらぶらぶじゃん…」


「うん、かっこいーし、めっちゃやさしー」


「お前から惚気が出るとは…にしても彼氏がこんなイケメンだったとは…イケメンだからさぞモテるんだろうなぁ」


「これは俺が整えた姿。本当の姿はこっち」


要が真なる姿、つまりはいつも通りの井出切が映った写真を見せた。


「え!!このひと!!」


「なに急に」


その写真は、井出切が友人と共に飲んでまーすという証拠で撮影して送ってくれた一枚だった。

だから井出切はなんというかもさっとしている。

そして井出切の友人だな、って納得出来る感じのひとが共に映ってる。

二人で自撮りとか苦行で変な顔になったというメッセージも送られてきて、要はこの一枚が愛おしくてたまんなかった、のだが予想外の食い付きに引いてしまう。


「な!このひと、おれ!あいたい!」


「え、急」


「頼む!このとーり!」


普段の落ち着いた様相から、打って変わって必死なシックイに要は戸惑った。

大切なひとの友人、大事な相棒。

それらをううんと考えて、要は溜息を吐いた。


「いーけど、井手切さんにめーわくかけんなよ?」


「かけません!!でも俺の名前伏せてっ!」


「え、なんで…?」


「たのむぅ!!このとーりっ!!」


妙な事になったな、と要はスマホの待ち受け画面を見て癒された。





と、いうことで要は井出切に頼んで友人との飲み会をセッティングしてもらった。


「カナメくん紹介したいし、カナメくんのお友達会いたいから」


急なお願いにも関わらず、井出切がそんな事を言うもんだから、その晩の要は色々頑張った。





そうしてとんとん拍子で飲み会は決定した。

飲み屋で待ち合わせる事となり、井出切と要が友人をそれぞれ連れて来る事になった。


先に到着した井出切は、幼馴染の火焔ほほむらが落ち着かない様子に首を傾げた。


「どしたの?」


「きんちょう、してきた」


「え、どして」


「だってイデのこいびとしょうかいとかはじめてじゃん」


「…お互い…29歳独身童貞です!だもんな…」


「俺の辞世の句にするつもりなんだ」


「さきに、29歳になってごめん」


「おう、ゆるさねぇ」


「ゆるしてよ」


「やだやだ」


「子供か」


「へへ、29歳独身童貞です!」


井出切はいてぇーと笑った。

火焔はうらぎりものーと笑った。

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