第10話

ちらりチラチラ。

要はそんな視線を隣から至近距離感じていた。

チラ見するのが好きな人なのかも、とは最近思っている。

でもちゃんと見たらいいのに、と腐てくれさてしまう自分も居る。

井出切とお付き合いしてから、大分自分が変わった事に驚きつつ、嫌な変化じゃないから要は、井出切をキリっと見つめた。


「ぉぅ」


体もピタっとくっつけて、クッションに一緒に寝そべって、あんなことこんなことしまくる仲なのに、何その反応。

要はキョドる井出切が可愛くって仕方なくって、ついついキスをしてしまった。


「で、さっきから何」


「ぅ、俺があげたピアスつけてるなーって思って…」


言われて今日は、いや今日も確かに耳に付けてることを思い出す。

口ピアスはやっぱりさっきみたいにキスが気軽に出来ないから、止めた。


「貰ったから付けるだろ」


金のリップピアス(ダイヤ付)を、要は耳に付ける事にした。

リングタイプだったので応用で来た。

だって折角くれたんだもん付けたいんだもんキスしたいんだもん。


「カナメくんはほんとにかっこいーなぁ…」


「ありがとう?」


何を急にそんなことを?

訳が分からず訝しむ要を、井出切がぎゅうっと抱き締める。

要は井出切にこうやって包み込まれるのが好きだった。

井出切が自分をどう思っているのかが伝わってきて、心地よくって、幸福感に満たされて。

ここに還るのだと、思うようになっていた。


「俺の恋人がかっこいいつらいモテるに違いない」


井出切の匂いと体温を堪能していたのに、また変なこと言ってからに。

そもそも、そもそもと、要はもそもそ井出切を抱き締め返す。


「…井出切さんは、かっこよくしないでね」


「はっはっはぁ、カナメくん。モブがモブをいじってもモブですぞ?」


「…ぜーったい、かえないで」


「もちろん、おしゃれ…めんどい」


心の底からの本音、心音と共に伝わってきて安心する。

本当にかっこよくしないで欲しい。

かっこいい自覚をしないで欲しい。

いつ何時盗られるか心配度、上げないで欲しい。

願うように抱き付くと「カナメくん…ちょ、くるし…」苦し気な声聞こえたけれど、心配だからぎゅううって、要は井出切を抱き締める。

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