第9話

今日はクリスマス。

恋人になってはじめてのクリスマス。

だから一緒に居てご飯食べて人を駄目にするクッションで一塊。

つまりいつもと変わらなかった。

ひとつだけ違うとすれば、プレゼント交換というイベントが発生していた。


はい、って井出切が要に小さな箱を渡す。

簡素な包み、気軽に渡されたから気軽な感じで要は開けた。

ジュェリーケース。

要はパカっと開ける。


「ちょっとまってこれなに」


要は視覚情報を受け入れることが出来なかった。

ここまで気軽だった。

なにかな、やっぱピアスかな、なんて予想しながら楽しく開封した。

こんなに輝くもの、想像してなかった。


「え、ピアスだよ?」


明るい調子で井出切に抱き締められ、要はそのまま身を預ける。

ちょっと落ち着いた。


「…これ、だいあ、じゃない?」


「うん、ダイヤだよ」


ニッコリ回答。

ああやっぱり。

じゃあこれ、金だ。

金だよな?

ただのダイヤで金だよな?


要はおそらくただの金のリップピアス(ダイヤ付)を見つめた。


「…」


「似合うと思うんだ」


「…」


「あれ、口、ピアス、やっぱりやめちゃう?」


キスする時邪魔だから止めようかな、とは本当に思っている。

けれど付き合い切っ掛けを止めるのは、なんだか気が引ける。

現に口専用のピアスを今貰ったのだ。


「やめない、けど…」


そう、当分は、止めない。

井手切が口ピアス、好きだし。

ただ、ただ。


「おれのぷれぜんとだしにくくなる」


このプレゼントと交換する為に用意したものに、要は自信が無くなっていた。

喜んでもらえると、思ってノリノリで用意したけど、こんな物を前に尻込みしない強者なかなかいない。


「え?なんで?ほしいのだがほしすぎるのだが?」


期待に満ちた眼差しに、要はますます自信を失った。

でも、出さないとか、それこそ無い。

ぎゅうっとしてくれる井手切から、ガッカリが伝わることを覚悟して、要は、


「…エロ下着とかしょぼくね?」


「は?ご馳走なんだが?は?見た過ぎるのだが?え、今履いているおられるのか?是非、脱いで頂けませんでしょうか?」


想像、通り。

いや、以上の反応だった。

ものすごい食付きだ。

体を若干弄られ、要は自信を取り戻す。

そうして一旦離れてから、要は服を全部脱いだ。


「…ん…ど?」


「おぱかくしえちぱんつ」


井手切が惚けている。

顔を真っ赤にして、見惚れている。

その熱視線の温度ときたらない。

井出切より小柄ながら、要の身体は割と筋肉質だ。

もりあがり、割れ目、つぶさに見つけられ、恥ずかしい、けど見て欲しい。

要は触っていいよって、井出切ににじり寄る。

井出切は恐る恐る両手を伸ばし、遠慮なく腕の中要を閉じ込めた。


「鼻血がでそうです」


「よかった…」


大成功に、要はホっと胸を撫で下ろし後は全部井出切に委ねようと決めた。


「かわいい…俺の初ナンパは大成功だった」


「あれナンパだったか?」


「…ナンパだったということにここはひとつ穏便に」


「いーけど…持ち帰ったの俺だから」


「はい…」

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