第8話

要が人を駄目にするクッション好きだと知ってから、井手切は早々にリビングに導入した。

だからくっついてもちっと一緒に沈んで過ごす時間が、それが幸せと感じあえるのが、二人がお互いを好きって思う部分でもあった。


今日も今日とて井出切の自宅に遊びに来た要は、仕事で疲れた仮眠したいって言って1秒で隣で寝落ちした。

すぅすぅ安らかに眠っている傍で、井出切は自分の休日に要が居るという相乗効果の休息癒しに、いつまでも続いて欲し過ぎていた。



晩御飯は何しようかなぁと思いながら、井出切はクッションに要と共に身を沈めつつスマホを操作していた。

熱心に画面を注視、していたから気付かなかった。


「なにみてんの?」


その声に反応して隣を見ると、要がムスっとした表情を浮かべていた。

すっかり目が覚めた御様子に、井出切は可愛い可愛いって頭を撫でる。


「新しいピアス、プレゼント、どれにしようかなって」


「…ふーん…」


あまり良くない反応に、井出切は慌ててスマホの画面を見せる。


「ピアスいらない?これとかどうかなって思ってたんだけど」


新しいピアス、プレゼントする気満々だった井出切に、要がチュっとキスをする。


「キス」


された。

いつも唐突で惚けてしまう。

いつも心を奪うタイミング。

こんなに夢中にさせてどーすんの、と抱き寄せる。


「するのに邪魔だなって最近思ってて」


唇を親指の腹でなぞられ、またキス。

確かにピアスをしていたら、こんな風にキスは出来ないけれども。


「だから舌かヘソに変えよーかなって思ってて」


「え」


「どっちが、いーと思う?」


ピトっと身を寄せられ問われ、井出切は想像した。

想像して。

想像して。


「…どっちも心配度があがるぅ…」


舌に穴なんて心配。

臍に穴なんて心配。

口のピアスだって心配だというのに!


「どっちがいーかな」


井出切の心配をおそらく理解しておきながら、要はどこ吹く風と上目遣い。

可愛い。

けど、井出切は心配。


「どっちも心配です」


引っ掛かったらどーすんの。

引っ掛けたらどーすんの。

怪我につながりやすい場所。

痛いと、苦しんで欲しくない。

だから心配が止まない。


「舌、だと、舐める時刺激になるってきーた」


止まない心配をぶち破る発言に、井出切は想像を膨らませてしまった。


「…ぅ、ぅん?」


でも心配、なんだ。

舌のピアスで舐められる妄想が頭から離れない。

そんな井出切へ畳み掛けるように要が起き上がり上着を脱ぐ。


「へそ、ど?」


そうして井出切に臍を見せつける。

井出切はクラフラ、吸い込まれるようにお腹におへそに顔を埋めてしまう。


「おへしょかあぃぃねぇ…」


すりすりしながら、キスして穴を触ってしまう舐めてしまう。


「…ん……ね、乳首にする?」


怒らず嫌がらず受け入れ、要は井出切の頭を撫でる。


「…しんぱいっ」


「じゃあ…ぁ…おそろで耳あける…?」


「ぴあすこあい」


「…ヘタレぇ…」


「ヘタレだもんっ。未だに口のピアス取ってるとこ見てるの怖いもんっ」


「ンっ…もんってゆーわりに、めっちゃへそいじってね…?」


「カナメくんのお腹は可愛い…割れてて好き…」


「…っ…おっぱい、ィぃ、の…?」


「おっぱいはこれからです」


「ふふ…」

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