第6話

良い匂いがした。

その匂いの元はすぐ傍に居るようで、井出切は逃すまいのそれを抱き締めた。

それは暖かくて愛しかった。

うん、愛しい。

何処にも行かないように。

抱き締める。



井出切は途方も無い心地好さに微睡みながらも、眩しさの所為で目を覚ました。

顔に朝日が当たってる。

眩しい。

でも健康的な気がして、目覚めを受け入れ目を開けた。


「…ぉ」


井出切は雄叫びを飲み込んだ。

だって、めちゃくちゃ可愛い子が隣で寝ていたからだ。

なんだこの天使。

存在してて安全なのか?

てか抱き締めさせて頂けて光栄なのだが?

良い匂いの元。

暖かい正体。

いとしい塊。

井出切はあまりの可愛さに、その額に口付けしてしまった。


「ん…はよぅ…」


口付けがきっけだったのか、要がもぞもぞ起きて井出切にキスをした。

もちろんピアスは外されたままだから問題無く唇にキス出来て、柔らかくって幸せを味合い合う。


「あ、朝からっカナメきゅんは積極的がすごいよお」


またしても首筋を吸われた井出切は、寝癖が付いた要の後頭部を撫でる。


「…アンタどーてー?」


「…」


ナデナデが高速になる。

29歳独身童貞です!って心の中で叫びかけて、29歳童貞です!に変更する。


「俺も処女だから」


「ぶほっ」


突然の発言に井出切は吹き出し要をまじまじ見つめた。

眠そう、だけどもう酔いも抜けたシラフの要は、しっかりしたご様子で井出切を見つめ返す。


「だから、焦らず、ちゃんと、井出切さんと、付き合いたい」


念押しのような、確認のような、不安を拭うような、そんな言葉だった。

井出切は切なくなった。

愛おしさがつのった。

大事に、したい。

大切に、したい。

だから井出切は、真面目な顔作った。

それを見て要も真面目な顔をした。


「カナメくん」


「うん」


「よ、よろぴくおねがいしまっしゅ」


まったく決まらなかった。

まったく、決まらなかった。

だけど要は嬉しそうに笑ってくれた。


「はは、なにそれ、おもろ」


それからぎゅって抱き付きてくれたから。

井出切は、応えるように抱きしめ返した。

時間を忘れて抱擁に没頭する。


ああ、今日が休日で本当に良かった。










この後はただの井出切×要のいちゃいちゃ回です

ちょっと友達出てきます

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