第7話 美月とミケの孫ハナ

美月は、まだ魔法のスマホの存在を知らないので、ハナの言葉はわからず、ただにゃ~にゃ~と心配そうにそばにいてくれているとしか思っていない。ハナも美月にわかってもらいたくてひたすら通じなくても話しかけて励ましている。そんな光景をミケが影からそっと見守っていた。


美月(心の声)『真夜中。みんなが寝静まっちゃった時間。あたしは寺の境内に座って月を見ていた。ただなんとなく。今日の自己紹介あれで大丈夫だったかな。なんかまたクラスに馴染めなそう。明日学校行くの嫌だなあ。あたしが大きなため息を一つついた時、隣にネコのハナがやって来た。』


ハナ「どうしたの?美月。なんだか元気がないみたいだね。」


美月「ハナ。なんでもないよ。いつものこと。あたし、新しいクラスに馴染めるかな。冬美はねもう友達ができたみたい。いつもそうなの。みんなに好かれるのが冬美。頭がよくて、成績はいつもトップで、それでいて優しくて明るくてスポーツマンで何でもできて、お父さんもお母さんも冬美の事を自慢に思っているんだよ。あたしからしてみても冬美は自慢の姉なんだ。」


美月はハナに向かってそう言うとひとつため息をついた。


ハナ「そんなことないよ。美月だって一生懸命頑張ってるじゃん。あたしは知ってるよ。公園で迷子になっていた子の家を一緒に探してあげたり、毎朝お寺の花や木に水をあげたり、お父さんとかお母さんのお手伝いいっぱいしているじゃん。あたしはそんな美月の事すごいって思うよ。」


ハナはそう言って美月を見上げて頭をこすりつけた。


美月「ありがとうハナ。きっと励ましてくれているんだね。」


ハナ(心の声)『美月はそう言ってさみしそうに笑ってあたしをなでてくれた。本当だよ!美月は美月が考えているよりもずっとすごいんだよ!とあたしは言いたかったんだけど言葉が通じなくてもどかしかった。美月はいつも笑っている。うん笑っている。どんなにつらいことがあっても笑っている。そして真夜中に本当につらい時はこうやって寺の境内に座って月を見ているんだ。あたしはそんな美月の事をいつも見ている。もちろん、ミケおばあちゃんやトラも。だからね、もっともっと自信を持ってほしいんだ。あたしは美月の事を見上げた。美月はお月さんから目を離すとあたしに向かってにっこりとほほ笑んだ。』

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