第3話 万福寺住職の入院
ここは市内で唯一の総合病院の病棟の一室。
万福寺の住職の総一郎がベッドに横になっている。
傍で甲斐甲斐しく入院に必要なものを住職の妻の百合子が棚にしまっている。
そこへ病室の扉が開いて、息子夫婦と孫の双子の小学生の女の子が心配そうに入ってきた。
健一郎「親父!!大丈夫か?!」
総一郎「おお健一郎。心配かけてすまんな。俺はこのとおりもうぴんぴんしとるよ。」
倒れて入院しているけれどももうこのとおり元気でもう大丈夫!心配するなと今でも踊りだしそうな夫に妻の百合子はたしなめた。
百合子「あなた!もう、いいかげんにしてくださいよ!先生から安静にしているようにと言われているのに。遠いところ悪いわね、健一郎。」
健一郎「もう驚いたよ。救急車で運ばれたってお袋から電話きた時はどうなることかと。こっちも仕事が立て込んでいてすぐに来られなくて悪かったよ。」
美里「お義父さん大丈夫ですか?」
総一郎「美里さん心配かけてすまないね。ははは。年には逆らえないね」
百合子「本当にごめんなさいね。美里さんお忙しいのに」
美里「いえ。でもお義父さんお元気そうで安心しました。」
冬美「おじいちゃん、大丈夫?」
美月「早く良くなってね。」
総一郎「ありがとう。冬美ちゃんに美月ちゃんか。みないうちにずいぶん大きくなったなあ。おじいちゃんは、ほれこのとおり大丈夫だよ!」
孫娘たちを見てますます元気になり思わずベッドから降りて立ち上がって今にも歌いだしそうな夫に百合子は深くため息をついた。
百合子「あなた!まったくすぐに調子に乗るんだから!本当に二人とも大きくなってますますかわいらしくなったわねえ。(目を細める)」
息子家族が駆け付けて味気ない病室が笑いにつつまれてほのぼのとしていた。
実はさっき会議室で祖母(百合子)と父(健一郎)と母(美里)が呼ばれ、医師より祖父(総一郎)の病状の説明を受けた。
住職(総一郎)は心臓の病気である事が医師から告げられ、今すぐにどうこうというような重篤な状態ではないものの、しばらくは入院して静養が必要と言われていた。
そこで、息子(健一郎)は母(百合子)と話し合い考えた末に、父の寺を継ぎ祖父の負担を減らすためにこの町に帰ってくることを決断しようとしていた。
妻(美里)も在宅でできる仕事なのでそれがいいと賛成してくれていた。
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