第2話 化け猫ミケの独り言

真夜中、お寺の境内でミケがお月様を一人見上げてひとりごとのように喋っている。


ミケ「はじめまして。


あたくしは、この万福寺が出来た頃から、その頃からずーっとこの寺にいる言ってみたら化け猫?ね。ふふふふどのくらい前からって?そうねえ、もう何百年も昔からかしら。


あらあなたよく気が付いたわね、そう、私のこのしっぽは二つに分かれているの。


まあ、誰にもここのところ見せたことないけどね。孫たちにも。もちろん。


そう、あたくしはこの寺の主が生まれるもう前の前の前の前の。う~ん何代前だったかしら。忘れちゃったけれどもそのくらいの時にこの寺に初めてやってきたの。


そうねえ。服装もだいぶ変わったし、こんなに自動車だのなんだの、近未来的な便利なものがた~くさん溢れる世の中になるなんて思ってもみなかったわ。


昔は、畑と田んぼと山や川や自然が多く、それから、そう着ているものも着物ねえ。


そして乗り物といったら馬ぐらいかしら。


そして牛を引く人。


豚や鶏を飼う人。


まあ犬も猫もいたけれども、みんなが足で歩いていたわねえ。


そう靴もなく、草履、もしくは裸足だったかしら。


みんなお金がなかったから。


殿様やそのお金のある大名たちはみんな馬に乗ったり、いい着物を着て、お城に住んでいい暮らしをしていたけれども、そのほかの町の人たちはみ~んなその日その日を食べていくのがやっとの生活だったのよ。


あたくしはその頃子猫としてここにやって来た。


をれからもう何百年もこの土地から離れたことがないの。


そしたらねえ、ある時気づいたら、ま、化け猫になっちゃってたってわけ。


だから、この寺を守ることにしたの。


まあ、孫たちもあたくしの血をひいちゃっているから、そう、年はとるけれども死ぬことはないのよ。


そう、そしてこの町に住む人たちはみ~んないい人たち。


このお寺に住む人たちもね。


この万福寺には毎日困りごとを抱えた人たちがやってくるの。あたくしにはわかるのよ。そんな人たちにほんの少ししあわせをおすそ分けするのがあたくしの役目なの。


明日はどんな困りごとを抱えた人がやってくるのかしら。」

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