第7話
銀河の西に位置する辺境の恒星、つまり太陽がある。この太陽のまわりをぐるぐると、およそ、一億五千万キロの距離を公転している惑星がある。そして、その中にへんてこな形をした島国。日本という国にはひとつ問題がある。というか、あった。そこに住むほとんどの人間がたいていいつでも不幸せだということだった。
学生時代は勉学や部活においてのスクールカーストに脅え、社会人になればなったで、日々のノルマと責任で心を病む。そんな時代だから、異世界転生だの異世界召喚などでトラックにひかれる若者が増えた。
というわけで問題はいつまでも残った。人々の多くは心に余裕がなく、ほとんどの人が惨めな思いをしていた。たとえば腕にロレックスの時計をしている人でさえ満たされない夜を眠らなければならなかった。
そもそもなぜ人間は木から降りてしまったのか。なぜアダムとイブはリンゴなんて食べてしまったのか。少し我慢してスーパーマーケットで買えばよかったのにと言う人まで出てきた。
そんな日本人は、社会と言う檻にとらわれた哀れな猿の子孫であり、無限にあるように見える仕事の業界や業種もなんとも退屈でやりがいとはかけ離れたものだった。その証拠に毎年新社会人が1年足らずで転職を繰り返していた。
銀河ではそんな若者を異世界に転生させないよう素晴らしい就活マニュアル本が出版された。その本の名前は、
「宇宙企業診断サブタイトルこれであなたも安心だ」という本で、この国で馴染み深く言い換えれば「宇宙の会社四季報」その恐ろしい災難が襲ってくるまで、地球、また日本ではその本の存在を知る人はいなかった。
とはいえ、これは何人もの悩める就活生をミスマッチのために、異世界に転生することを阻止してきた。
これはまったく新しい可能性を就活生に示す、たいへん素晴らしい本である。
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