地球最後の日
第1話
水曜日の午前七時。
「朝か、だりぃ」
そう言ってぼんやりと目を覚まし、とりあえず起き上がり、とりあえず部屋を歩きまわり、窓を開け、スリッパを見つけ、顔を洗おうと洗面所に向かった。
ついでに歯を磨き、髭を剃り、顔を拭き、のそのそとキッチンに向かってお腹にいれても大丈夫なものを捜す。フライパン、食器、冷蔵庫、リンゴ、栄養ドリンク「ファイト一発」嫌気がさした。
腹も膨れて再び鏡に映った自分の姿を眺めるが二重に見える。
ヘイジはそれを見つめた。
時代のトレンドを外れたような味噌顔。
異性から好まれないであろう中途半端にだらしない身体。
瞳に映る姿がブレていてもそのくらいはわかる。
極度の乱視でもなければ頭がおかしいわけでもない。
立ち止まって大きなコップで水を飲んだ。二日酔いのような気もする。
どうして二日酔いなんだろう。おかしい。そう考えていた。
昨日は大事な面接だったはずだ。そして、今日もなにか予定が入っていたはず。のそのそとベッドに倒れ込んで考えた。
「思い出したぞ、くそったれ」
くそったれ、大事なことなのでもう一度言う。
一人で安酒に管をまいて店が閉まるぎりぎりまで飲んでいた。そこでヘイジはとてつもなく怒っていたことを思い出す。
なにを怒っていたかなんて決まっている。昨日の集団面接の試験官の態度に癇癪をたてていたのだ。書類審査や筆記試験をなんとかパスし、面接までこぎつけたのに、重役ぽいおっさんたちはヘイジの話しをまともに聞こうともしなかった。
「けっ、バカ大学出身でわるかったな、死んどけじじい」
そればかりか学生時代に頑張ったことを答えられなかったばかりにちょっとへそを曲げただけで、他の学生たちの前でくどくどと公開お説教を垂らし込んだのだ。
今でもはっきりと浮かぶとろんとした目つきでふてぶてしく腹が突き出たはげ親父。ばかにしやがって。ヘイジは立ち上がり酒のかわりにもう一度水をごくごく飲んだ。
それにしてもひどい二日酔いだ。怒りをぶつける対象がいなかったとはいえ飲みすぎた。
ふと床に放置されたリクルートスーツを見つける。ヘイジはそれをぼぉっと眺め、
「やったわ」
15秒後、彼は身に着けた衣服を脱ぎ捨てスーツを着用すると慌てて部屋から飛び出した。
ヘイジは完全に思い出した!
今日は志望度が高い企業の二次面接がある日だということを。
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