2日目夜 オッサンはアチコチゆるい
起きて改めて周りを見渡すと木々が鬱蒼としていた森が平地になっていた。
「お やっぱり生きていたか。
相変わらずお前の光の鎧はとんでもねぇな。」
コモリはケロッとした顔で言い放った。
こいつは技を放つ直前で
『生きていたらまた会おう』とか言ってたから最悪俺が死ぬ可能性ある技だったって事だよな?
………生きていたからいいけど。
地形変えるほどの威力って改めて見ると凄いな。
俺の足元以外の地面が深く
ん?
俺の足元以外?
あ………!!!
タチアナとヒタチは!??
2人の姿が見えない……
まさか2人共巻き添えに!!??
「よう!タダヒト!!無事か!?」
「無事で良かった///♡」
と後から声がしたので振り返ると、空間の窓から2人の顔が。
コモリの空間に2人共逃げていたみたいで安心した。
「地形変わっているけどどんな事したんだ?」
コモリは空間魔法しか使えないはず。
周囲はデカい隕石落ちたみたいな感じに地面が
こうなる直前は俺仰向けで恥ずかしさに悶えていたからな。
残念ながら何にも見てない。
「簡単さ。
空間を押し潰した。」
コモリは平然とした顔で言う。
………
………こいつが魔王でも間違っていないと俺は思う。
「特定の空間を避けて潰す事も出来たが、空からも地面からも虫が襲って来てたからな。
特定空間避けた潰し方したら円柱状に安全エリアが出来て虫が残ってしまう。
人を回収してまとめて潰す方が楽で安全だったんだ。
まぁ……タダヒトだけ回収しなかったのは嫌がらせでもなんでも無く、回収出来なかった。
拒絶されたんだ。」
「拒絶?」
「あぁ。拒絶だ。
お前の光はあらゆる物は拒絶する。
虫の毒も。
受けた怪我も。
オレの魔法も。
タチアナの剣も。
全てだ。
おそらく空腹感や疲労感といった感覚も拒絶しているんじゃね?」
言われて見れば確かにそうだった。
さっきまで虫の毒で紫色だった腕も元に戻っているし、直前まで眠たかったはずなのに今は目はギンギンになって眠気なんて感じ無い。
ギンギンになっているのは性剣もだが。
「潰しきれなかった虫達がお前の足元に隠れているから少し離れてくれ。」
コモリに言われてすぐにその場から移動する。
直後俺が立っていた場所が、メキメキっと潰れて他の場所と同じ高さになった。
「ひとまずは安心だな。」
コモリがふぅっと安堵の息を吐く。
「そうだな。」
つられて俺もぷぅっと安堵の放屁。
「おっと失礼。ははは。オッサンになるとアチコチ緩くてしかたねぇな。ははは。」
と恥ずかしさから笑ってみせるも、
3人は顔面蒼白で
「「「……………」」」
絶句していた。
マズイ……
人前で放屁とかこの世界ではタブーだったのか?
でもそんな事神様教えてくれなかったぞ?
と言うか
こんな仕様にした神様が悪い!!
などと責任を神に擦り付けていたら、急にコモリが叫んだ!
「に……逃げろ!!!早く!!逃げろ!!!」
「…………は?」
後からゴウゴウと掃除機みたいな音がする。
「くそ!!タダヒト!!お前はこんな時にも光を纏いやがって!!お前は回収出来ん!!
………生きていたらまた会おう!!」
そう告げるとコモリは空間の窓を閉じた。
1人残された俺は掃除機の様な音がする方を向く。
――― ゴゴゴゴゴゴ…… ―――
テレビで見たことある様な竜巻の数倍の大きさの竜巻がそこにあった。
暴虐風砂刃
超広範囲殲滅魔法。
周囲の全ての物体を引き寄せながら、触れた物物を砂粒ほどに切り刻む風の刃の竜巻。
コモリが見える範囲の全てを潰したため、見えないくらい遠くから飛んできた大木が、竜巻に触れた瞬間おが屑へと変わる。
あ………
これ死んだ…………
オナラがこんな凶悪なものだなんて知らなかったよ……
………ってかこのスキルお菓子のオマケみたいなノリで付けてなかったか!!!???
「ふざけんなーーー!!!!神様のバーカバーカ!!」
ブリブリブリ!!
全力で叫んだ声も脱糞の音も竜巻に飲み込まれていった………
――――コモリの作りし空間内Side―――
〜〜コモリ視点〜〜
「あのバカ!!何考えてやがる!!」
「コモリ落ち着きなよ……」
「そうだ。落ち着け。ここで叫んでいてもどうにもならないだろう。」
2人からなだめられるも感情は激しく波打っていた。
「だがな!?オレは確かにあの周辺の虫達は全部潰したんだ!!40万以上はな!!タダヒトの足元のやつもな!!でもアイツはいきなりふざけた魔法放ちやがった!!光を纏って回収も拒絶した!!
アイツは何がしたいんだ!!!」
「落ち着け。
きっと……タダヒトにも何か考えがあるのだろう。待つしか無いだろ。」
「タチアナの言う通りだよ……あの魔法は私達ではどうしようもないよ。」
2人とも顔を伏せたままだ。
確かにあの魔法は発動を見た瞬間……
死を覚悟した。
今までどんなピンチと思われる事も空間魔法で何とかしてきた。
別空間を展開して攻撃を逸したり、別空間内に避難したりすれば大体何とかなった。
でもあれは別だ。
もう少しだけあそこに留まっていたら……
少しだけ空間を閉じるのが遅れたら………
引きずり込まれてズタズタになっていただろう。
2人にもそう見えたはずだ。
私が全力を出して魔法を展開してもその魔法すら飲み込む圧倒的破壊力。
今でもちょっとだけ覗こうと空間を指1本分開けたら最後、その穴からこの空間の物全てが向こうに引きずり込まれてしまうような恐怖感。絶望感。
あれが………
創造神のスキル…………
「あ……皆ちょっと待っててくれ。神託が入った。」
タチアナがそう言うと奥に移動していった。
普段から使っている空間ではあるが、咄嗟に2人を入れたためそこまで広くは感じ無い。
そもそも神託はタチアナだけにしか聞こえないから奥に移動する必要も無いのだが、気分的なものだろうか。
しばらくして神妙な面持ちでタチアナが戻ってきた。
「どうやら先程の戦いは先発隊だったみたいだ。」
「な……んだと……」
目の前が暗くなる感覚に襲われる。
辺り1面真っ黒になる程の数ですら先発隊でしか無かった……
「そして……本隊の総数は約450万!!そこに
笑顔でタチアナは言い放った。
……最悪だ……
あれだけの数潰しても本隊の1割にも届かない……
……というか何でタチアナは笑顔?
「タチアナちゃん……嬉しそうだね?」
ヒタチが先にタチアナに質問する。
「そりゃあそうさ!!
その全てをタダヒトが片付けたんだからな!!」
「「!!!!!!」」
声にならなかった。
タダヒトはそこまで視えて魔法を発動させていたのだろう。
光を纏って残ったのは打ち漏らしが無いかの確認のためかもしれない。
「全く……アイツには何度も驚かされるぜ………」
全身の力が抜けていく。
「神託によるとあの魔法はしばらく発動が続く。収まったら改めて神託をいただけるそうなので収まるまでこの空間で待機だ。」
タチアナを贔屓にしている女神様が状況を見てくれているのだろう。
有り難い事だ。
「……タダヒトさんは……無事なの?」
不意にヒタチが発した言葉で空気が凍りつく。
タチアナは首を横に振って
「規模が大きすぎる魔法なのでそこまではわからないと言われた。
……無事を祈ろう。」
長い長い沈黙が続いた。
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