2日目夕 2人の夢

「ヒャッハー!!


ハーレムだハーレムだ!!」


と世紀末モヒカンみたいな思想のタチアナちゃんかわいそうな娘を尻目に、移動しながら他の2人にも聞く。



「コモリはどうして魔王討伐に?討伐よりも、のんびり過ごしたいって感じがするんだが?」



「私はまぁ……一族の中では魔力量が圧倒的に高いから?何でも出来てしまってやる事無いから……面白そうな事って言うか興味本位?


魔王討伐後はその冒険譚でも綴って子孫繁栄の方法探し〜くらいに考えてたんだよね。



まぁ……半分は叶ったようなものだけどね。」

お腹のあたりをさすりながらこちらを見るコモリ。



……まぁ。

種族平均超えた魔力量で、地形変える魔法を三桁発動してもまだ平気な存在からしたら魔王なんか簡単に倒せるだろうし。

その先にあるものを欲しがるのは当然といえば当然だろう。

討伐後はのんびり生活ってのは王道だな。






「ヒタチは?何でそんな格好して魔王討伐目標にしてんだ?」

コイツは気になる事は多い。

関わるのは怖いが、知っておかないともっと怖いことになりそうだからな。



普段は笑顔がカワイイ女の子の顔のヒタチ(♂)だが、過去の話をするときは真剣な顔になった。

横顔は完全に少年のそれだった。


「昔は小さな村で母と二人暮らししていたんだけど……ある時冒険者を名乗る男の人が来て、私が住んでいる村で暮らす事になったの。」




真面目な顔とは裏腹に、女の子を意識した声と喋り方は染み付いた癖みたいなものなのだろう。

顔を伏せて言いにくそうにしながら続ける。




「男の人は優しくて、畑仕事を手伝ってくれたり戦い方を優しく教えてくれたの。







…………その時にその男の人にベッドで男の良さも教わって///


癖になっちゃった///」



急にこっちを見てホホ染めながら性体験を語るヒタチ(♂)。

男が好きになったから女の子の格好しているわけだ。

とりあえず頭にチョップしておく。



「あ……キモチイイ♡」


コイツ痛みが快感に変換されるスキルあったな。

下手なツッコミは逆効果か。


「真面目に話せ」

怒気を含んだ言い方で話を促す。





「ぷ〜///


真面目です〜///




その男の人にタダヒトがそっくりだから、タダヒトに恋してるの♡



あ……キモチイイ♡」



頬を膨らませて怒った顔もカワイイけど、ちょっとイラっとしたからチョップ落として話を促す。



「んで、何故魔王討伐?」



また少し真面目な顔に戻って語り出す

「しばらく3人で過ごしていたら、母親に男性の子が出来て……………






母親が子供産んだら私は村では食べていけないなぁ〜と思ったから冒険者になるため村を出たの。


しばらくは冒険者として食べていけてたけど、久々に村に戻ったら魔物に襲われてて村は全滅しててね。皆死んじゃってた……



もっと早く村に戻ってたら助けれたかも知れなかったから、私が見殺しにしたようなものなの。



だから魔王討伐して神様から何か1つ何でも叶うなら、母親に会って謝るつもり♡」

最後は笑顔で教えてくれたヒタチ。



鑑定を行ったあの時耳元で

『私が母親を殺した』って告白したのは、助けれなかった事に対しての罪悪感から、自分が殺したと思うことにした結果なのか……



思ってたより重い。



だがコイツにはまだ何かありそうだな。













『敵がきます』

「おしゃべりはそこまでだ」

久々の空間に浮かぶ文字と、それに合わせたコモリの発言。



敵と言われて身構える。

股間の性剣も鞘から抜かれて皮を剥かれて準備万端だ。




……準備万端?


………臨戦態勢?



とにかく戦う覚悟は出来た。


死なないようにしていれば、皆が倒してくれる。

信じよう。



『ブブブブブ……』



何かでかい虫の羽音聞こえる気がする。











コモリの方を見ると、全身目だらけの状態だった。


「コイツは……飢毒蟲きどくむしだ!!気をつけろ!!数は4000超えてる!!囲まれているぞ!!」




――― バチン! ―――



ぅ!!」



何かが弾ける音と同時に右腕に痛みが走った。


右腕を見ると出血があり、足下にはデカい蚊みたいな虫がピクピクしていた。





すでに何匹かは音もなく接近していたみたいで、足下で死んでいる虫と同じ虫がホバリングしていた。




『ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ』




羽音はドンドン大きくなり、周りが暗くなってきた。


虫の本隊が迫ってきたのだろう。

黒い煙……いや、黒い竜巻みたいなものが四方八方から迫ってくる。




大きさも形も様々な虫の群れだ……



気持ち悪い。



そしてコイツら毒持ちと来てる。




ヤバイ……どうすれば……












と思っていたが、やはり皆の戦闘力は高かった。



タチアナは2本の聖剣で大小様々な虫達を的確に潰していく。


死角から飛んできたはずの虫ですら反応して潰している。



ヒタチは盾を構えてタックルするようにまとめて潰していく。


頑張って潰しているが何匹かヒタチに直撃して、当たった所の肉が飛び散っているのに、まばたきした直後には元に戻っている。

直撃したところは服も破れているから、体が元に戻っているのはスキルの再生能力によるものだろう。

時々デカい虫に攻撃されて腕や脚が派手に吹き飛んでも、「借金返済!!」と叫んだ瞬間デカい虫の一部が吹き飛んでヒタチの体が元に戻っている。


『借金=ダメージ』を『返済=相手に返す』スキルと思っていたが、スキルによる再生だけでは説明出来ないところもあるのでおそらく、ダメージを相手に返した事によってというトンデモスキルなのだろう。


そしてコイツは痛みが快感に変換されるスキルも持っているから、もはや魔王と言っても過言では無いのでは?




コモリに至っては近づく虫全部が勝手に潰れていく。


一匹一匹空間魔法で潰しているのだろう。

器用だな。





そんな皆を見て解説している俺だが……



何もしていない。

と言うか何も出来ない。

冷静になれば裸でチン◯おっ立てたオッサンが、大量に押し寄せる虫にどう対応すれば良いのか皆目見当がつかない。


しかし、最初こそ虫の一撃を食らってしまったが、その後はコモリが自分の周りの虫を潰しつつもこっちの周りの虫も潰してくれていた。


最初の虫は通常の探索範囲の外からの不意打ちだったために防げなかったとコモリから謝られた。


今は本気モードで探知しているから問題ないらしい。











足がチクっとした。


地面から虫が湧いている。





…………コモリさーん?


地面地面!!


土の中も探知してーー!!




気が付いたコモリが地面の中の虫も潰し始める。


「土の中は探知が複雑だ……厄介だぜ!!」

とコモリさんの愚痴が聞こえるが、頑張ってもらいたい。



チン◯狙いの虫は勝手に自滅していくからコモリさんは放置しているけど、周囲を探知しながら全員(主に俺)のフォローは大変だと思う。


頑張れコモリさん。






そんな心の中の応援とは裏腹に、腕と足に攻撃してきた虫の毒が回ってきたのか立っているのが辛くなってきた。



でも座り込んだりしたら地面から来た虫の餌食になるから、出来るだけ地面との設置面積を狭くしつつ、立っているより楽な姿勢でかつ、ギンギンのチン◯はある程度振り回せる体勢…………




…………






………









!!そうだ!!


ブリッジしよう!!




最適解だな!!




そう思った俺は「ふん!」と踏ん張りブリッジの体勢に。



虫が自滅するのを願って腰を振ってギンギンのチン◯を振り回す!!




「ふんふんふんふんふん!!!」



――― ブルンブルンブルン! ―――







さすが性剣 エックス(サイズ)カリ・バー!!


長さがあるからブリッジで腰を振るとブルンブルンしてるね!!


体力の続く限り腰を振ってやる!!





「はぁはぁ ふんふん……ふん……はぁはぁ」


――― ブルン  ブルン  ―――







「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……」




――― ユラユラ ―――









キツイ!!!


毒で朦朧としてきたけど、これ合ってるよな!?


間違ってないよな!?



誰か教えて!!?







……真顔でスケッチしているコモリと目が合う。





「あぁ……気にせず。続けて続けて。」

真顔でスケッチは止まらない。
















………恥ずかしい!!!





俺なにやっちゃってんの!!


野外ブリッジチン◯振り回しとか


恥ずかしすぎる!!


穴があったら入りたいー!!


顔を手で覆ってゴロゴロと悶えてた。













「よ〜〜し…そのままでいろよな?」

コモリの声でハッとする。


気がつけば光の鎧旅の恥は掻き捨てが発動していたらしい。


体の中心から発動するスキルだからなのか、体内の毒もどこかへ飛んでいったみたいだ。



「周囲の虫どもは全部潰してやんよ!!タダヒト!!生きてたらまた会おう!!」



不吉な事言いながらコモリは手を交差して


バッ!!


と広げた。




「はぁぁぁ!!!」


コモリが叫んだ直後







――― ズズズズンン…… ――










地震が起きたので

顔を上げて周りを見たら………





地平線が確認出来るほどに、になっていた。

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