第2話 勇者

彼は、この世界の人間ではなかった。人間ですらなかった。彼は生ける屍であった。かの賢者の成れの果てであった。


彼は、力を求めた。神を再生させ、自らに力を授けようとした。神は無力であった。再生する力すら持たなかった。


彼は神を憎み長きに渡り生き続けた。 彼は人間たちの間で絶大な信頼を得ていた。彼は神を魔の王だと言った。人間たちは神を憎んだ。神に立ち向かう力を求めた。


神の彷徨う宇宙へと彼は走った。人間たちの生贄によって作られた剣を手にして走った。彼は勝利した。衰弱した神になす術などなかった。


彼は星に帰った。人間たちは彼を勇者と称えた。生贄となった者たちのことなどとうに頭にはなかった。


世界は光に満ちていた。彼が神となったからである。彼はその言葉で世界を再興した。彼は言葉の神となった。




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