13 魂の終着点1
「なんや騒がしいな……」
真夜中、ゼラは目を覚ました。
体を起こし、ぼやけている視界の中ユウやキョメちゃん、あの猪の安全を確認する。
そして気が付いた。
「兄弟おらんな……しょんべんか?」
ユウがいないと分かると、ゼラはスキルで分身体を作り、そいつを残してシェルターの外へ出た。
「音は……たしかあっちからか」
ポヨンポヨンと弾みながら、音のした方へ移動する。
草むらから顔を出し、ユウがいないか確認をする。
「いないな。どこ行ったんや兄弟」
シェルターからあまり遠ざからないように注意して、近くの茂みを見て回る。
そしてゼラは見つけた。
「……? なんやこのでっかい跡。それにこれは血か?」
血痕と大きなクレーターが残ったその場所をゼラはまじまじと観察していく。
「足跡……?」
ゼラの視線の先には二つの足跡があった。
「これは、人やないか」
更に辺りに目をやるとモンスターのものと思われる足跡が三つ。
内二つはサイズは異なるが形が似ており、一つは全くの別物。
そしてその一つにゼラは覚えがあった。
「………ッ!? 間違いない。この足跡、兄弟やないか」
ゼラはユウの足跡を追っていく。
「どういうことや……兄弟の足跡はこの場を出とらん。飛んで何処かに行ったのか?」
ゼラはユウがあまり長く飛べない事を知っている。
だからゼラはこの場所の近くにユウの足跡がないかを探した。
「ない……」
嫌な想像がゼラの脳内に駆け巡る。
ひょっとしたらユウはもう……なんて考えを振り払うようにゼラは顔を振った。
「大丈夫……兄弟は、ユウは無事や」
ゼラはそう自分に言い聞かせるように弱々しく呟いた。
■◆■◆■◆
あれ?
何ここ。真っ白で何も見えない。
なんか体もふわふわするし、まるで夢を見てるようだ。
てか僕何してたんだっけ?
いや、僕って誰だっけ?
「やあ少年。元気してるかい?」
突然、目の前にピンク髪の女性が現れた。
地面に付くほどに長い髪をハーフアップにして、髪色に近い薔薇色の瞳が僕を覗いている。
そんな彼女は膝を抱えてしゃがみ込んだ。
「どちら様で」
「ワタシかい? ワタシはここを管理している者だ」
「ここの管理?」
「まあよく目を凝らして見たまえ」
言われた通りに目を凝らす。
すると真っ白で何も見えなかったのに、徐々に目の前の景色が見えてきた。
最初はボケやけて見えたものが、ゆっくりとその形を露わにしていく。
暫くすると大量の墓石が姿を現した。
しかも海外式のやつだ。
「墓か」
「そう墓。それがワタシの管理しているものだ」
「なんで僕はこんな所に?」
「まだ分からないのか少年。目の前には墓、それにワタシはそれを管理しているんだぞ?」
「……え? 僕死んだの?」
ピンク髪の女性は何も言わずにただ頷いていた。
どうやら僕は死んでしまったらしい。
へ? は? え?
「え!? 僕死んだの!!?」
「まあね」
嘘だろおい。
いつだ…? 一体いつ僕は死んだんだ!
「いつ死んだのか気になるって顔をしてるね。心当りがあるんじゃないか? 例えば黒ずくめの二人組、とか」
「あいつらか!」
思い出したぞ。たしかにあの時、ナイフを持った黒ずくめの一人にぶっ刺された記憶がある。
あの時に僕は死んだのか。
野郎、末代まで恨んでやる。
「まあそれはそうと少年。君に嬉しい報告だ」
「嬉しい報告?」
「君が死ぬ直前の行動。目の前の命を守ろうとするその心は大したものだ。褒美をあげたぐらいに」
「褒美……ってまさか」
「生き返りたいかい?」
勿論イエスだ。
断る理由なんてないだろう。
「僕を生き返らせてください」
「うん。いいだろう。一つ言っておくが、生き返ったらここでの記憶はなくなるよ」
「分かりました」
すると彼女は指を鳴らした。
パチンという音が辺りに反響し、次第に僕の意識が遠のいていく。
「さらばだ少年。またそう遠くないいつか、ここで会おう」
薄れていく意識の中、彼女の声が頭の中に響く。
「あっ、言い忘れていたけど、少しオマケしておいたから、上手く活用してくれよな」
最後にそれだけ聞こえた。
そして僕は意識を取り戻した。
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