EP.ガルファー




 俺とガルファーは2人で別のゲストルームの様な場所に行く。ここは教会の割には大きいし、色んな部屋もある。もしかしたらこの為に改築もしているのか。

 そこまでして魔王を倒したい思いはなんなんだろう。


 「ごめんな俺のせいでお前まで」

 「それは良いんだ、そう簡単に謝るなよ…あいつらには謝らなかったくせに

  お前変だよなんか、そこが面白えけど、で何だ用って」

 「それは、、どうして俺の肩を持ってくれたのか気になった」

 「それはな…俺も昔はあいつらと同じでメルトさんに飯も宿も出すから力を貸してくれと言われて入った。

  当時、Eランクだった俺は飯も食えねえくらいに生活が詰まってた、力っても俺は弱かったから、弱えーから役に立たないと言ったがそれでもメルトさんは俺に何度も戦いを教えてくれた。それで俺もBランクまで来たんだ。

  あの人には一生かけても返せない恩がある。俺は生きてる間くらいは恩を返したいと思ってるからな」


 恩を返したい、俺も師匠には返さないといけない恩はある。それでもここまでとは異常だ。

 やはり、生きるか死ぬかの瀬戸際で救われた人間は救ってくれた人を神と思っているのだろう。

 

 「他の人は?」

 「あいつらはいつか援助される事が当たり前になってるんだ。

  人が増えると貰える飯が減って依頼に行かなきゃ行けなくなるからな。俺もあんな奴らとは同じになりたくねえよ」



 ガルファーはお調子者だと思っていたけど意外にも熱い男だった。自分の信念を持って、行動している。もらった音は必ず返す、当たり前だがそれを出来る奴が、前世にも今世にもどれほどいただろうか。

 それなら俺もメルトさんにはこの世界に転生させてくれたし、言うなら俺も「命」の恩人か、


 「俺も恩人はいます。メルトさんにも恩があります。恩を少しでもと思って命を渡しました」

 「そりゃかけすぎだな!」


 やっぱり俺は「命をかける」なんて言うのはやめておこう。

 不恰好で周りに引かれる。俺はそんな熱い男では無かったようだ。

 それに俺にはその覚悟も資格もまだ持ち合わせていない。



 「メルトさんはどうして何も言わないんだろうな」

 「でもそれは俺、入る時に聞いたんだけど

  裏切る奴は見せしめで殺してやるから安心しろってだから本番になればあの人達も、やる気になるでしょ」

 「おお、それは本当にメルトさんが言ったのか」

 「ええそうですがもしかして裏切り者何ですか?

  過剰に反応して」

 「そうだ、と言ったらどうする」


 これは嘘だ。

 俺を試した軽いジョーク、それくらい俺にも伝わってくる。ガルファーはメルトさん似で顔に出やすい、分かりやすくて正直な人。でも隠す事は死んでも言わないタイプ。

 ガルファーはかなり影響受けてる。

 

 「逃げる、そして「信頼」出来る仲間を呼ぶ」

 

 俺はここで戦うとは言わなかった、言えなかった。絶対に勝てないからだ。以前にテソーラ、ユフスの魔王の力を貰った2人と俺は戦ったが、あの時の俺でも相手にならなかった。しかしメルトさんは余裕で倒していた。

 俺もいつかは自分で勝てる力をつけなくてはな。


 「そうか、仲間を呼ぶかどうして自分でやると言わなかったんだ?」

 「勝てないから、俺は一度戦って負けてる。1人じゃ何も出来ないのを俺は知ってる」

 


 俺は自分の弱さを自分が一番理解してる。だからこそ自分はどうすれば強くなれるのかもよく知っている。勝ち方にこだわってたらいつまで経っても成長はしない。あの日のまま俺は前の自分に取り残される。


 「俺はそろそろ戻るわ、明日俺は依頼があるから休憩だ」

 「話してくれてありがとう。俺、強くなるよ」

 


 ここでは依頼を受ける管理を全て個人に任せており、サボる人もいれば、依頼を受けるが好きで沢山行く奴もいる。それでも配当は平等、それでも文句が少ない理由には訳があった。

 それは明日わかる事になる。





 翌日。朝早く起きて大聖堂に集合の呼び掛けがされる。珍しい事らしい。

俺は朝は弱いタイプ、ここはどうにかして直したいとは思うのだがまあ楽観視してもいいかと行動にならない。


 「よし、来週には遂に我々の目的、魔王討伐の準備が整う。皆心してかかるように、

  あと日頃言っていることだが依頼に行かないで飯を貰ってるだけのやつも前戦ってもらう。勿論俺らも援護はする、だが優秀な冒険者は温存しておきたい。

  ここに来てサボり続けてる奴らはいざとなったら戦ってくれると信じているぞ!後はアシェリー頼んだ」



 重要事項だけはメルトさんが話し、他の詳しい事はアシェリーさんが話すと言う形。

 さっきの言葉は皆んなに伝えてあったと言っていたのにサボっていた人達は震えている。自業自得だけど、それもそうだ。今ある生活が来週には消えてしまうそう考えれば恐ろしいのは間違いない。


 「おお!俺とレイ同じ部隊に配属されたじゃんか!しかもお前が軍隊長かよ、やっぱAランクさんは期待されてんねえ」

 「よせよ、俺が隊長なんて似合わない。」


 

 45人を5人1組のチームに分ける。勿論これは戦力の平均を取るのではなく実力主義で下の人は下の人としか組めない。これは仕方のない事でその為に嫌でも依頼を受けてる人だっていたんだろうから。

 

 1番隊はメルトさんを含むSランク3人にタンクと近接のAランクで5人組を作り、

 2番隊に俺がいる。他にも背の大きいAランクの人が2人とガルファーにBランクの魔術師、かなりバランスの取れているチーム、そして2番隊に配属は当たりだった。最初の戦闘は8、9番隊がやってくれるから俺は休憩が出来るらしい。


 少しかわいそうではあるけど、この世界も平等では無い。行動をしない者にはツケが回ってくる。昔の世界でも勉強をしなかった人にはもれなくブラック企業が付いてくるのと同じだ。その点、俺はこの世界では努力してきた。



 「どうする私達7番隊だよ……すぐに死んじゃう」

 「なんなんだよアシェリーの奴ちょっと俺等より優れてるからって偉そうに飯で釣ってこの扱いかよ」

 


 俺はその言葉に色々と引っかかる事があった。

 なぜアシェリーと呼び捨てをしたのか、そして、「飯で釣っておいて」とはどう言う事かに。

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