隠す事は強さである。


 「急いで!サラの想いを必ず届けるんだ、例えそれがどんな結果であったとしても逃げるのだけは絶対に駄目だ」

 「分かってるよ!探してるだが音もしない近づいてるはずなのに、まだリーダー達は見つかってないのか」


 俺はとにかく進んだ方向を記憶だけを頼りに走り続ける。疲れているのなんて関係無かった、その時だけは疲れを忘れリーダー達を助ける、そして裏切り者の2人を倒す。

 出来れば何とか2人を倒してくれたら良いのだが、リーダーは人が良すぎる。裏切り者だとしても情が入って不利な戦いになっているだろう、メグさんなんかはもっと不安だ。

 駄目だ望みの薄いものに縋っては、自分が何とかするんだ、頑張るって決めたんだろ?前の努力は何のためにある!

 そう俺は俺を奮い立たせる。



 「音が聞こえたよ右の前側からだ!曲がれる所があれば右に進んでいって」

 「良くやったぞルド、後は戦闘までは休憩していてくれ今までで1番の大きな山場となる。

  その分魔力消費が多い、苦しいと思うが頼む。」

 「任せてよ」


 そう言ってルドの声は聞こえなくなった。

 場所は俺でも後で大体を把握できるくらいには近づいている。しかし一向に見えない。

 まずいぞ、ぐだぐだしていちゃ間に合わない。

 同時に大きな音が迷宮最深部に轟く。


 「何だ?もしかしてここでイレギュラーが来たのか」


 最悪だ。

 最悪のタイミングでイレギュラーモンスターと相対する。

 放置するのは貧乏の俺からすると惜しいが、今はそれどころでは無いな、強行突破!運良くモンスターはこっちが敵意を見せないと攻撃をして来なかった。

 この選択は正しかった。追っても来ない、ならば道を塞いで刺激をする必要も無い、魔力も温存出来るし、ここは大人しく先に進ませてもらおう。


 



 一方でヨミル、メグネムVSテソーラ、ユフスはレイの想像通り激しく火花を散らしている。一歩間違えれば、どちらかが確実に死んでしまう、そんな状況だ。


 「なあ、リーダーさんよ大人しくメグさえ渡してくれりゃお前は助けてやるが、まだ戦うのか?」

 「一度裏切ったお前を俺が信用すると思うか、全員殺すんだろ?やって見ろよ!俺がお前達を止める」

 

 「威勢だけはS級ね、実力は…そっかレイに上げてもらっただけか、ヨミルじゃ私達の脅威にはならない。早く終わらせて目的を終わらせるわ」


 (今の発言的にレイとサラはこっちには来れない状況だろう、最悪の場合死んでるかもしれん。くそ、いつからあいつらは俺達を裏切るなんて事をしようと思ったんだ)


 ヨミル、サラ、テソーラ、ユフスそれにメグ5人は学校ではよく一緒いた親友とも呼べるくらい生活まともにして来ていた。分からない所や苦手な所は他の誰かが助け、手を取り合って頑張って来た。

 学校で過ごした日々はこの2人にとってただの時間潰しに過ぎなかったのだろう。苦労するのも演技、分からない様にしているだけ、本当の仲間に思わせるだけのただの演技。

 それに気づく事が出来なかった、俺が、いやその時はまだ2人にも目的を忘れて本当の親友で接していたのかもしれない。

 しかし、これは今となってはどうでも良い事、互いに敵同士、命を賭けた戦いをしている。


 「こうなるのは、必然的な運命だったんだって……俺もいつかはこうして死地に追いやられた時の為、自分の力は隠しておけと言われた意味がよく分かった気がする!!

  さあ来いよ2人ともメグだけは死なせねえ!お前らの目的はこの俺が死んでも防いで見せる!」

 「ふんやっぱ威勢は良いな、隠した実力?それ出して俺にその斧は俺に届くの?」


 テソーラの言った通りにヨミルの斧はかすりもしない。

 だが、隠している実力(魔力が込めた攻撃)もまだ使っていない。

 ヨミルは相手を見下したその一瞬でテソーラを殺り切るつもりだがテソーラの攻撃を防戦一方で防げる程、貧弱では無かった。


 「お前の本気はこの程度なのか、それともまだ隠すのか

  もう次で終わるぞ、楽しませてくれよ!」


 テソーラが一瞬勝利を確信した。




 その時をヨミルは見逃さなかった。

 相打ち覚悟で長い斧に極限まで溜め込んだ魔力の全てを放出、この一撃でまず1人を倒す、、





 はずだった。

 間違い無く、攻撃が当たった感触もあったのに何故か無傷、、ユフスだ。ユフスが魔力を感知して、咄嗟に回復魔法をテソーラにかける。

 実力を隠していた、ユフスも、

 全てを賭けて挑んだ一撃も届かなかった。


 「テソーラ、危ないわ本当に私がいないと何も出来ないのね。」

 「お前も俺がいなかったらザコだろ

  で、ヨミルもうお前に俺を殺す術はもう残って無い様だな、最後のチャンスだ。

  ここで大人しくメグを渡すと言うなら助けてやる…だ」

 「愚問だな…何度言おうと俺はリーダーだ!今のチームメイトを守るのも裏切ったチームメイトを分からせるのもリーダーであるこの俺!ヨミル・ロイス・ガウェルスの役割だ!!!

  もう一度言ってみろ殺す術が無いって?敵であるお前が敵って知ってるから俺は実力を隠したのも分からないのか」

 「な……もしかしてまだ力を残していたのか、お前魔力は少ないんじゃ」

 「絶対嘘よ、もう動く力も残ってないはず早く止めを!」


 

 ここにレイが到着する。

 が、最悪の状況が出来上がっていた。少し遅かったのだ。

 ユフスの火魔法を直撃で食らい、剣も急所は寸前で避けられたが、二箇所痛い所を突いている。

 絶望的だ。


 「ヨミルさん!」


 俺は急いで駆けつけテソーラを後ろに下げさせる。


 「下がっていてください、後は俺に」

 「悪いなリーダーがこんな情け無い姿で、俺はレイが入って来て俺は不安だった。俺は正直金に困ってないから、みんなと楽しく思い出作り的な意識で冒険者やってた。危険をしてまで冒険者をしたいって訳じゃなかったんだ。

  でもなレイが入ってきて、洞窟に入ったり、強敵を協力して倒したりしてると、本で見た勇者一行がどうしてここまで冒険と言うのを愛しているのかが分かって来たんだ。それで大した力も無いのにこんな時に来て、本当情け無いな、リーダー失格だ。

  俺はここで死ぬがまだやるべき事は一つ残っている。」


 そう言って俺の剣に触れると、剣が炎を帯びる。


 「これは俺が出来る最後の助けだ。リーダーなのに助けてもらってばかりだったが、最後くらいはカッコつけさせてくれ。一振り、一振りだけその力は使う事が出来る。どうかメグと一緒に無事に帰ってくれ」


 

 その後、ヨミルが目を開ける事は無かった。


 

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