大切な人の目標は離れる


 何とか倒せた。

 戦利品はめっちゃ欲しかったけど本来の目的である魔石を取るのが先決だ。

 動き過ぎて少しだけ休憩したいとこだけど、二人は全然元気そうだしそのまま俺も我慢してついて行こうか。


 「恐らくここら辺にいると思うんだけど」

 「いない事ってあるんですか?」

 「それは絶対に無いわ、迷宮の最深部に魔石を持つ魔物がいないなんて聞いた事ないわ」


 そうなのか、こんなに探してるのに全然いないともなると少し疑ってしまいたくなってしまう。師匠も動いてはいるけど口数がかなり少ないと言うかほぼ無い。そんな事は珍し過ぎる。


 「おい、ルド一緒に探すの手伝ってくれないか」

 「ん…魔物を探すのを手伝うのかい、

  別に大丈夫だけど戦力にならないと思う。」

 「問題ない今は数が欲しい」



 


 ルドも探すのに参戦してから更に一日も経ってしまっている。灯りの見えない所でかなりの日数滞在しているから俺と師匠は疲弊し切っている、本当にシュナさんがいてくれてよかった。


 「あ、いたわよ」

 「おい!本当か」

 「ええ嘘をつく必要ないじゃ無い、ほらここ」


 俺もシュナさんの所に行くと、想像よりずっと小さな魔石を甲羅の様につけた魔物がいた。


 「こんなに小さいんですか」

 「そうね この水属性の魔石は小さくて密度が高く希少性が高い。一個は依頼のだけど2個目見つけると金持ちから高くで買い取ってもらえるんだけど一体だけっぽい。」


 仕方ないなシュナさんが言うには一体見つかると連続して見つかる事があるけど無いと一体しかいないそうです。

 全然構わない、嬉しい誤算が手に入ってるからな。


 「火竜イフリートの牙と翼ってどれくらいするんでしょうか」

 「分からないわね、私は回収した事ないから」


 うーん、、流石に魔石程使えるものでは無いし、どこで使うのかもあまり分からない商品ですしね。

 

 「でも火竜イフリートコアなら魔力強化されるから売れるじゃ無いかな」

 「そうなんですか取りに戻ります」

 

 魔石の魔物は滅多に出ないだけで弱いから二人では十分なくらいだろう。さっき通った道を戻って、火竜イフリートの死骸を漁る。


 「コアって言うんだから、赤くて丸いやつだよな」

 「うーん、こんな難しいとこまで行った事ないから分からないよ…」

 

 なんか申し訳ない、

 でもそこまで気にしていない様でルドは変わって来ている。変われてないのはやっぱり俺の方だ。

 今回は何とかなったけど、次は師匠もシュナさんもいないもしかしたら一人で今回のレベルの魔物と出会うかもしれない、そうなったら今よりもっと強くならないと。


 「これか、コアは」

 

 明らかに自分がコアですとアピールしている他とは異彩を放っているのを見つけた。小さいし、これからなら収まりそうだ。

 手に取った瞬間に、自分の体に異変が起きたのを感じ取った。更にはルドはもがいているかの様に声を上げて、苦しそうだ。


 「大丈夫?」

 「う…んこれはかなり凄そうな物だね

  僕に衝撃が来てるよ」

 「置いてくか、危険じゃ無いか?」

 

 あ…スルーされた。

 声が届かなくなったのかな、そしたらどうしたもんか、俺自体そこまで影響はないけどルドが心配なんだよな。反応が無くなったのもこれが影響してるかもしれないし、

 でも今持っててあんまし、声も聞こえてないし大丈夫か最悪これくらいの大きさのやつなら師匠が代わりに持ってくれるだろう。


 



 「戻りました…コアありました」

 「見せてごらん…

  おお!私が見たものより大きいじゃないか」

 

 この反応はかなり良さそうだ

 「師匠、すいませんこれ持っててもらえませんか」

 「構わんぞ」


 ひと段落着いたので地上に戻ることにした。

 Aランクの依頼にしては目的の品を手に入れるのは容易かったが、道中がかなり強敵だらけだった。


 「今回の迷宮は普通だったわね」

 「これで普通なのかよ」


 師匠が真っ当な事を驚いた表情で言う。

 正直俺もそう思っていた、Aにしてはって事なんだろうか、それでも俺と師匠にとっては全然普通じゃなくて、激ヤバな依頼だった。本当に、道中が一筋縄ではいかないと言うのは骨が折れたし終わってみてだが、小さ過ぎて探すのも苦しかった。



 「迷宮の主が火竜イフリートで良かったわね」

 「それはどう言う事ですか」


 聞いてみると迷宮にはほとんどの確率で主がいるとの事、火竜イフリートは高レベルの中なら簡単な方らしい。ボス単体なら強力なのだが他のボスだと迷宮自体に仕掛けが施されるとの事で敵がいないのに注意が必要となって、気を休める暇がない。

 それは本当に嫌だったから助かってます。


 空が見えて来た。どのくらいこの迷宮にいたかなんて分かりゃしないけどもう真夜中だった。星空が美しい、まるで俺達の生還をドラマチックに演出している様で心が癒やされていく。


 「じゃあ私は先に帰るけど、二人はそこで待ってたら明日の朝には迎えが来るよ」

 「ありがとございました!

  また一緒に冒険をしましょう」

 「もうちょっと強くなってから言いなさい」


 そう言って足早にシュナさんは帰って行ってしまった、あの人のどこにそこまで動ける力が残っているのかどう見ても疲れのない軽やかな動きをしている。


 「………」

 「………」


 やばい、気まずい、互いに疲れ切ってるからか一言も喋ろうともしない。


 「俺は寝るぞ、疲れたからな」

 

 先を越された。

 俺もすかさず仰向けになって寝る体制をとるが、なぜか目を開けてしまう。

 それは師匠も同じだった。


 「綺麗だな」

 「そうですね、前の世界でもここまで美しい夜空見た事無いです」

 「そういえばあんま聞けてなかったが、お前の前いた世界はどんなだったか?」

 「綺麗でした。今よりも文明が発達していて、魔物が存在しなくて争いが無い平和な世界でした」

 「今だって十分平和だろ?」

 「そうですね…でも魔物さえいなければ冒険者が命を賭けてこんな事をする必要なんてないと思うんです」


 何を言っているんだ俺は、メガスライムの時に死んだ奴らを見て何か考えてしまっているのだろうか。

 戦えば人は死ぬ当たり前過ぎて忘れている事だ。

 死ぬ為に戦うじゃなくて、、明日を生きる為に戦う。それは前の世界でもそうだったが命を賭けてはなかった。


 しかし、そんな事を誰もが当たり前だって思っているんだ時代がそう伝えてきてるから、俺も転生したらこんな事当たり前だってアニメとかの見過ぎで勘違いしてたんだと思う。

 


 「何言ってんだ、魔王様を倒そうって思ってんのか?」

 「もし、諸悪の根源であるとしたら…

  俺は全力で立ち向かおうと思ってます。」

 「悪くは言わないけどよ、ちゃんと考えろ

  なんかお前空回りしてるぞ

  何もしなくたって今は平和じゃんかよ」


 そうだ、そうなんだ、でも俺が転生して来たのも偶然じゃないのかも知れない。

 そうだとしたらその人の力になりたい。

 俺は一度死んでいる身であり、その人に救われた命なんだから。

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