美しい攻撃

Aランク迷宮に向かうのだが、依頼内容は魔石の採取。

 報酬にプラスで魔石を取ったら魔石を売ればさらに金がもらえると言う使用。

 高難易度はやっぱり稼ぎが良いな。

 師匠がBランクのおかげで普通に入れるし、臨時で募集をかけても誰も入ってくれなかったからかなり遠慮されてる依頼だったのだろうか、


 「おう!遅くなったな」

 「師匠待ちました…って……えええ」

 「私だ」

 「あ、いやすいません存じ上げてなくて」

 「そうか」

 「あっはい なのでお名前を教えてくれますでしょうか?」

 「私の名前が知りたいと」

 「そうです」


 何なんだこの人はいちいちややこしい人だな。

 二言喋れないのかよ、それにしても何で師匠と一緒にいるんだ?

 チームは全員死んで一人だけって言ってなのに?


 「ガイアの姉だ!よろしくな

  こんな奴の弟子になって本当に大丈夫か?」

 「問題無いです。俺も師匠は前も今もこの先ずっと師匠だけですから」

 「嬉しい事言ってくれんじゃねーか

  何も出さねーぞ?」

 「本音ですよ」


 師匠が嬉しそうに俺肩を強く掴んで離さない。

 それを面白く無いように姉は見ている。


 「姉さんはそんなんだから人が寄って来ないんだよ」

 「う、うるさいわね 私には力がある

  それだけでも近寄ってくる人なんかわんさかいるわ」

 「ふん!そんな奴らとレイを比べられたら困るね」


 師匠がヤケにムキになっている。

 姉に取られるとでも思っているのか?それともそんな人なのか、師匠の姉だからそんな事をするような人では無いと思うのだが、

 あと、、、こんな人生勝ち組みたいなオーラで誇らしげにしている人を俺は信じたく無いし、信じれない。


 「まあ それくらいにしといてあげる

  それにしてもレイだっけ迷宮、危ないけど大丈夫なのかい」

 

 俺はその言葉にムッとなった。

 Sランク冒険者はやっぱ下の奴らを見下しているのか、昔は俺とか師匠みたいなとかだってあっただろうに力を手にしてしまうとこうも性格まで曲がってしまうのか?

 俺は気をつけておこう。


 「俺が格下だからってなんですか哀れですか」

 「そんなこと言ってないけど…私に歯向かえるなんて素晴らしいね強くなると思うわ

  ガイアが大切にするのも分かる!」


 何なんだこの人は一体。


 「悪かったね 私は姉のクリシュナよ

  今日だけ二人の見守りと言う事でついて来たわ」

 「俺が迷宮行くって言ったら着いてくってなった。

  昨日言った通りだが、実力は申し分ないし大丈夫だ」


 本当は二人で行きたかったのだが、師匠のご好意だとしたらありがたく受け取ろう。

 まあ特に何かするってわけでも無いそうだし、いざとなった時は助けてくれるだろうし、断る理由がない。俺は普通にクリシュナさんの同行の許可をする。


 「それじゃ行くか」


 迷宮まで馬車に乗って移動をしてくれるらしい。


 「クリシュナさんは何が得意なんですか」

 「シュナでいいわ

  それで、そんな事を私に聞くのかい?

  魔法は魔力量が多く無い方だからあんまし使わないから近接が得意」

 「みんな近接が得意なんですか」


 これは少し不安だ。

 そしたら俺が魔術を使うか、いや、Aランクともなると生半可な魔法じゃ通用しないだろう、まして中級や上級を使ってしまうとルドの方が心配になってしまう。


 「みんな近接か…しゃーねー俺が援護してやるよ

  師匠だからな!」


 「ここは俺の出番かな?」みたいな感じでドヤしながら名乗り出るが、シュナさんに「あんたがやるくらいなら私の方が優秀」と言われてしまった。


 「黙れ!シュナは極力何もしないで

  迷宮は二人で攻略する」

 「ふーん 少しは立派になったようね

  昔は手伝ってとかよく言ってたくせに…」

 

 二人は姉弟なだけあって、仲が良さそうだ。

 何より二人とも笑顔、そこに俺の入る隙なんて無かった。

 俺は一人不安と戦いながら心を落ち着かせる。

 失敗はしない。必ずここで稼いでやるぞ


 「ここら辺でよろしいでしょうか」

 「はい、ありがとうございます」

 「ではここからもう少し先に入り口が見えると思うのでそこが依頼されている迷宮です。」


 運転手に言われた通りに行って迷宮が見えた。

 この辺りは誰もいなかった。モンスターが迷宮に集中しているのだろうか。それともモンスターがいないのか。


 「それでは行きましょう」



 入ってすぐの所に行きなりモンスターが現れた。


 「右に4後ろ3前1、、前と右は俺に任せろ後ろを頼む」

 「了解しました」


 ここはかなり開けている。

 魔術で一掃するか、いや序盤で使ったら本当にルドの体力が心配になってしまう。


 「よく見て、来るよ」

 「安心して見てくれ俺は強くなってるって事を!」


 俺はモンスターの攻撃よりも素早く斬る。

 上手く行ったようだ、相手に攻撃をさせる前に俺が倒した。次もすぐ目の前。

 俺は一旦落ち着いて、攻撃を剣で受ける。

 

 「ぐっ!!!」

 

 思った以上に攻撃が強い、かなりの衝撃だまともに喰らったら、かなりヤバそうだ。


 「上!」

 

 ルドが俺に指示をする。それに呼応するかの様に俺も反応して不意打ちの二体目を撃破、流れる様な剣術で、打ち合ったモンスターも倒す。残りは一体。

 やっと連携らしい連携が取れるようになってきた。


 「ナイスだ助かったルド」

 「一応ずっと援護で声を出してたつもりだったんだけど

  初めて聞こえて形になったみたい」


 「良い動きねよく反応したわね今のもさっきのも」

 「…どうも」

 「ソロでC行ったってのも少しは納得したわ

  まだ完全に信じたわけでは無いけど」


 まあそれは勝手にしてくれって感じ、実際ソロとは言い難い感じの昇格だったし、噂の独り歩きも良く無いのか?でもいいや。

 凄いって認められるのは素直に嬉しいし、、



 「こっちは大丈夫です師匠」

 「おう こっちも余裕よ」


 師匠は残念ながら余裕そうでは無い。

 俺より二体モンスターが多いとは言え、流石に苦戦している。

 師匠は剣術を使っているが、このモンスターは近接の爪が強力だ。

 それは師匠も分かっているのだが、数が数で、魔法が打つ余裕もない。


 「師匠、変わってください、前衛は俺がやります」

 「大丈夫だ俺の役割なんだ!」


 師匠は俺の助け舟を無視した。

 残りは二体落ち着けば倒せるが、時間をかけるとこっちも消耗されるわモンスターもさらに湧いてくるわで、良いことがない、そんな事、冷静で状況を読むのが上手い師匠ならとうに分かってる事だろう。

 が、何故か一人を突き通してる。


 「……!!!」


 師匠の防御魔法が破られた。

 そうなると接近戦での余裕が減ってしまう。さらにまずい状況になってしまっている。


 が、、苦しそうな顔ではなく、冷静に状況を見ている。


 (残りは二体、このモンスターは攻撃力が高く連携が取れている、が、爪の攻撃以外は基本受け切れる。

  だから距離を取って魔術で落とす)


 バックステップで距離を取る。

 剣と杖を持ち替えて杖を構える。


 「火球ファイアボール


 師匠が放った攻撃は中級のファイアボール、全魔法の中で、速攻性が高く全ての魔術師に愛されている技の一つ。

 こう言う場面最強の技。


 前にいたモンスターに命中し、続けて放つ。

 学習したかの様に、最後の一体には当たらない。

 さらに飛び跳ねて頭上に一気に近づいて来る。間一髪で爪の間に杖が刺さり、最恐の攻撃を防げたが、手が空いていない。

 危険を察知して、再度後ろに下がる。

 今回は杖が無い、出来れば剣で戦いたい所だ。しかし、


 「召喚魔法 短剣ダガーナイフ


 師匠が出来る召喚魔法で短剣二本を出した。 

 その時に俺は何をやるかがすぐに勘づいた。投擲だ。


 その予想通り、師匠はその短剣を投げると同時に背中にしまっていた剣を出し、突進した。

 ここからは正直運な所があった。当たらなかったら、ピンチ当たったら勝ち確。


 見事に二本とも上手く刺さった。

 そのまま流れる様に首を斬り捨てる。


 「どうだ!美しい攻撃は」


 「時間かかりすぎよ何時になると思ってるの

  次はフォロー入れてあげるから、プライドとか言ってる場合じゃ無いわ」


 

 落ちた杖を拾って渡した。

 何とかなったが、この相手は一人で戦うべきでは無いのだと思った。

 少しシュナさんがいてくれて良かったと思ってしまった俺だった。

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