祝!成人!!!

えー成人しました!

 めでたく二十歳になりましたありがとうございます。 

 誰も祝ってくれる人がいない、だからせめて自分では祝っておかないと、悲しい。

 前世でも成人式は行ったし、結構周りからも祝われてたけど、この世界ではそんな文化なんて存在しない。

 祝う暇あったらみんなせっせと金を稼いでいるな。


 「おめでとう二十歳」

 「お前もおめでとう」


 俺達、二人(一人)は同じ人が同じ人を祝っている。

 今日は珍しく豪快に金を使って飯食って、久々に金払って宿に泊まるぞー

 前、カノン達に泊まらせてもらってから、寝心地が忘れられなくなってしまっている。

 今日は少し人が少なく、いつもの賑わいはなかった。

 一人で大人しく食べていたら、懐かしい男の声が聞こえた。





 「お?レイじゃないか大きくなったなあ」

 「師匠じゃないですか、どうぞどうぞこちらに」

 「悪いね座らせてもらうよ」


 こんなタイミングで師匠に出会った。

 特に用意もしていなさそうだ、突然の事だし、誕生日すら教えてないしな。

 

 「最近どうだ よくやってるか?」

 「勿論です

  師匠のお陰で一度もやられる事なく順調にここまで来させてもらっています」

 「嬉しいねそんな事言われると、こっちはちょいと躓いていというのに弟子が凄いと師匠も大変だな」

 「そんな事ないですよ師匠は俺の中ではずっと師匠なので」

 

 そんな事を言ったら、満更でも無さそうにニコニコしている。

 そういえば年齢を聞いたことがなかった。

 見た目は相当若そうだし、動きも一年くらい前だがその時は全然動きも速かった。

 聞いてみるか。

 俺は師匠に年齢を聞いてみた。


 「二十三だな三つ年上」

 「三つしか違わないんですか」

 「なんだもっと歳だと思ってたのか?」

 「それにしては年相応とは思えない落ち着きとか、相手の気持ちになれる大人さとか持ち合わせてたのでもう少し上かと思ってました」

 

 そしたら師匠は少し真剣な面持ちで話した。


 「俺もガキの頃は無邪気でビックマウスでな、村ではガキ大将って言われてた

  剣の才能も年齢にしては結構良かったからな

  俺が十四の時に五つ上の姉が学校を卒業して一年経って村に戻って来たらSランク冒険者になってた。

  そこから俺も後を追うように学校入って、「俺より出来の悪かった姉がSランク冒険者になれたんだ俺なら在学中にでもなれる」とか才能を過信してた。結局、学校では初、中級魔術が使えるようになったくらいで無駄な四年間を過ごしてそのまま冒険者になった。

  そこで思ったんだ…俺には努力する才能が無かったんだってな…

  学校の友達とチームを組んでBランクまで上げさせてもらったけど今は皆死んで俺一人どうしようって思って村に帰って来た時に前の俺みたいな強がりで負のオーラが漂ってるお前に出会ったって訳だ!」


 「師匠にも大変な時期があったんですね」

 「そりゃもう大変な時の方が長かったさ

  お前に出会ってから俺も抜かされてたまるかって頑張ってんだがな、どうにも上達しないだよ、弟子の前で恥ずかしいが、、」


 前みたいな勢いはありながら冷静な感じじゃなくて、しんみりとして、頑張って笑顔であるように見えた。

 俺はそんな師匠じゃなくて、元気があって何言ってもカッコよく見える師匠であって欲しかった。

 だから───


 「師匠、今チームって組んでるんですか?」

 「いや?さっき言ったが、俺は仲間がもういねーんだ

  ずっと一人さ」

 「では明日、二人で迷宮に行きませんか?

  Aランクの」

 「お、おいおいまじかよAランクって死にたいのかよ」

 「そんなわけないじゃないですか、今日俺誕生日ですよ

  翌日に死にたい訳が、、」

 「じゃ、じゃあやめておこう、まだDランクとかだろ?

  危ないから」

 「いえ、先日Cに上がらせて貰いました、」


 「んぐ……しゃーねーな行ってやるよ

  師匠だからな!!弟子の要求の一つや二つくらい聞いてやるのが頼れる男って奴だ」


 そうだ、こんな感じで強がってるようでどこか笑顔で楽しそうで、ちょっとだけビビってる師匠が俺は好きだ。


 「ところでよレイ」

 「何ですか師匠」

 「お前もソロでやってんだよな?」

 「ええもちろんです」

 「ソロでCに上がったのか」


 ここでようやく驚いた。

 そう!私はソロプレイヤーのCランク冒険者です!!!

 (C昇格に関してはスルガトさんの協力ありきで)

 そこら辺の有象無象チームキャリーCランク冒険者とは次元が違うんですよ!


 「じゃあもう俺より強くなってるってことだよな」


 また急にしょんぼりしてしまった。

 ここら辺は年相応な所だ。


 「いえいえ俺はまだ至らない所ばかりですので

  いくらなんでもAの迷宮なんて一人で行ったらひとたまりもありませんよ」

 「そんなん誰だって同じだ まあ師匠として、弟子が強くなる事は誇らしい事だ。

  そして俺の見る目があったと言う事だ!」


 少し上下が激しいが、戻って来ている。


 「それでは明日よろしくお願いします」

 「おう!」

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