過密スケジュール

最初のリザード討伐を終えて、一ヶ月経った。

気づいたら俺は後一年で成人を迎える歳になった。これからも討伐以外にも保護や監査の依頼も安全第一でこなして行った。

 出来るだけ節約をした。

 食べ物も出来るだけ冒険者優待の所で食べたり、宿も勿論優待を使ったりして、移動の為の資金を貯めることに専念していた。

 食べ物は肉などの生き物を料理した食べ物がほとんどだった事もあり、偏食を気にしてパンや野菜を少しだけ買ったりした。

 宿も依頼を頑張った日はご褒美として金を払って良いベットで寝たりして着実に貯めていった。

 

 宿で所持金を数えていると、、四百枚くらいは貯まっていた。

 

 移動費と活動する為の服の一新とか諸々をする為に十分な位には貯まった。

 しかし、この四百枚は他のことに使おうと思っている。

 本を買おうと思っている。

 魔術の本、監査依頼の時に魔術を使って魔物を倒している。

 それを見て「カッケー」と思ってしまった。

 距離をとって攻撃ができるから安全でもあるし、何と言ってもカッコ良いそれだけで、努力する価値がある。

 明日には近くに大きい店があったからそこで魔術の本を買おうと思っているのだが、一応ルドにも聞いてみる。


 「明日朝一で魔術の本を買いに行こうと思うんだけど

  ルドは魔術とか使ってたのか?」

 「ううん 

  使ってないと言うよりは使えなかったが正しいかな

  僕は前衛をやってたから魔術は必要では無かったけど、、覚えるに越したことは無いと思う!」

 「おお 珍しく良い反応してくれるじゃないの」

 「自分が魔術を使えるってなんか嬉しいじゃん」


 まさかのルドも魔術に憧れがあったらしい。

 やっぱカッコこいよな自分の手から火とか水とか出すなんて、そんな選択肢があってやらないなんて厨二だった俺には堪らないね!

 そうと決まり翌日の朝、、、起きる予定だったが、ちょいと寝坊していつも通りの時間の起床。

 手には金と剣を持って鞄を背負い、店に向かう。



 「OPEN」

 

 やっていることを確認して、中に入る。

 ここは前世で言う所のショッピングモールって感じだ。

 外観も他に比べたら目立っていたし、綺麗だ。

 中には勿論、飲食店もあれば武器、装備も売っていたりして結構人も入っている。ここには用はない、俺は少し気になる装備品に目を傾けず、書店に赴く。


 本は魔術教本以外には魔法学校に入るための本とか、初級から上級までの魔術教本、面白い事に自己啓発本なんかもある。

 昔話的な創作童話とかもあったが、正直、表紙絵というものが存在していないから魅力的に感じない。

 

 俺は一通り本を見て回るが、何が良いかとか分からない。

 困った時は誰かに聞くのがベストだ。


 「すいませんここにある中で一番高い魔術教本下さい」


 そう言って俺は「金ならある!」見たいな表情を店長に見せると、


 「ちょっと待ってな、今持ってくるから…」


 後ろに下がり本を探すと何やら想像よりかは分厚くない本を持って来た


 「よいしょ これだなうちで一番良いのは 

  金貨五枚だ」

 「き、金貨?」

 「ああそうだ金貨五枚。無いのか?」

 「ちょ、ちょっと待ってもらえますか……」

 「もちろんだ」


 そう言って、俺は少しだけ店を出る。

 そしてすぐに


 「おい!硬貨って種類あんのかよ」

 「勿論あるよ。 でも銀貨とか金貨って僕が持った事なんて一度も無かったから、、まさかそんなに良い本を買うなんて思っても無かったし」

 「最初に全部教えてくれって言ったよな俺 

  困るんだよこう言う時に知識が無いと!まあ今になってはもう遅いけど、金貨五枚は俺の持ってんので足りんの?」

 「いや 全然、後その硬貨百枚必要だね

  金貨一枚が銅貨の百倍、銀貨が銅貨の二十倍だよ」


 俺はそう言われた時何とも言えない虚無の表情をする。

 それもそうだ、言ってみたかったからって、あんなにカッコつけて「一番高いのくれ」見たいな事を言った後に、

 「すいません足りませんでした」とかダサすぎだろ。


 1.逃げる

 2.戻って足りないと伝え買えるのを買う

 3.値切る

 4.開き直り


 逃げるのは店長に迷惑がかかってしまうのでなし。

 開き直りも俺がダサいのでなし

 その理由で行くと値切るのもダサい。

 足りないと伝えるのもあんなこと言っておいてってなってダサい。

 結局全部ダサいじゃねーか。


 「おーいどうすんだ?買うのか?」


 俺が悩んでいるうちに遅すぎたのか他の人もいるから心配をして俺のところに来てしまった。

 

 「す、すいません、今銅貨が百枚程足りなくて、」

 「そうかじゃあ他のにするか?

  今出した奴に比べりゃグレードは落ちるが全然、良本だぞ?」

 「あ、大丈夫です。初めて買う魔術教本で妥協はしたく無かったので、もう百枚貯めて、五日後にまた来ると思います。」

 「い、五日?五日で百枚貯めるって事か?

  お前さんランクは?」

 「Dランクです」


 ソロでは等級も上がりにくい。

 

 「一人だよなその感じだと」

 「ええ」


 店長は俺をみて驚いた表情をする。

 何かおかしな事でもあったのか?別にDランク冒険者なんてそこら辺にゴロゴロいるだろうし、なんなら、あそこで装備を買おうとしている人も今入店して来た人もDランク位だろう。それなのにどうしてここまで驚いているんだ?


 「どうやって五日で百枚も」

 「朝、昼、討伐依頼受けて、夜に巡回の監査依頼を受ける予定です。

  そうやって一ヶ月位、節約もして貯めたんですけど…」

 

 そう言ったら店長はさらに驚いた表情を見せる。

 ちょっと大袈裟すぎるけど、、


 (す、凄いな最近の若者は一日に三件の依頼を受けるって言うのか。さらに酒じゃなくて先の事まで見て魔術教本を)


 「そこまでしてこの本が欲しかったのか

  よし!百枚はおまけしてやろう!ほら持っていけ」

 「い、良いんですか?」

 「勿論。今そう言っただろう

  若く頑張ってるやつの背中を押してやらなくてどうするって言うんだい」

 「ありがとうございます!絶対にいつかお返ししますので」

 「気にすんな

  若者の為だこの街を頼むぞ」


 この街を頼むぞの所はしっかり無視をしたが、感謝でペコペコしながら雑貨屋を出た。

 それにしてもアニメとかでみる魔術教本に比べたら小さいし薄いな。


 ペラペラとページを捲るとルドの身体のおかげで内容がしっかり頭に入ってくる。

 こう言う時に誰かの身体に転生したってのは有難い。


 少し腹も減って来たので、飯屋に入って、本でも読む事にした。

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