21gの浮力
秋錆 融華
Ophelia's Weight
「具合でも悪いの?」
「そっか、もう声も出せないんだ……」
言葉の
「覚えてる?君がここで、私に言ったこと」
湖水は波一つ立てず月を映す。
ほんのささやかな
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「私と結婚したい……って?」
「ダメ……かい?」
「いや、ダメと言うか……そうだな〜。じゃあ、交換条件を一つ」
「何だい!?言ってご覧!!僕は君の為なら何でもするよ!全てを
「私に永遠の美しさを頂戴?もし叶えられたのなら、私は君を死ぬまで愛したげる。約束」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「まさか、本当に……永遠をくれるなんて」
水面を覗く彼女の面映えは、最早この世の全てに飽き果てていた。破滅に陶酔し、転落する悪女の
「君のおかげで私はこんなにも美しい姿を手に入れた……ありがと、感謝してるよ。でもね」
声は震え、掠れ、上擦っている。
夜の水辺の冷気がそうさせるのではない。
「あなたが居ない
審判を受け入れるように目を閉じる。傘の持ち手を捻って外し、親骨の中から取り出した小さな注射器を首筋に突き立てた。投げ捨てられる空のシリンジ。これが
「二人は迷い星、月まで昇って行こう」
当座はそれきり静かな星月夜。時計は零時、黎明は未だ遥か先。
彼女は何も言わず彼の手を握って一歩を踏み出した。
「あなたは私が待ち焦がれた全て、尊敬と愛情の全て」
旧い歌の一節を
波立つ水面の月が揺れる。
足裏を突き刺す程冱えた夜の湖。
脚から腰から胸から首へと水位が上がる。
私は今この瞬間こそが、幸せ。
「最期まで、一緒に居るよ……」
身体が重力から解放される刹那、彼の声が聴こえた気がした。
21gの浮力 秋錆 融華 @Qrulogy_who_ring
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