追うもの

尾八原ジュージ

追うもの

「一応サインがあるんです」

 夜中に、パリンパリンと皿を立て続けに割るような音がするという。それを聞くと、Aさん一家は引越しの準備を始める。

「大体二年おきかな……おやじはその都度転職して、だから貧乏でね」

 もし逃げなかったらどうなります? そう尋ねるとAさんは寂しそうに答える。


「実は一度追いつかれて、おやじもおふくろも


 三十年前、父親が生家の祭壇を放って逃げたのが発端だという。

「いい加減始末をつけようと思って。今、日本のどこかにあるおやじの実家を探してます」

 Aさんは真剣な面持ちでそう呟いた。

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追うもの 尾八原ジュージ @zi-yon

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