新米女神ちゃんは異世界転生を司る神様になって、めちゃくちゃな世界を創るようです ~すぐ死ぬ転生者を救うためにご都合主義を考えよう。初期地点に武器を置いたり王城に召喚したりで~
第26話 理不尽な復讐 by新米女神ちゃん
第26話 理不尽な復讐 by新米女神ちゃん
「な。なんじゃと!?」
いきなり現れた新たな転生者に、新米女神ちゃんも驚きの声を隠せない。
そんな新米女神ちゃん(キングカー)を、転生者は恨みのこもった目でにらむと。
「てめぇ! よくもいきなり王城に転生させて、地下牢に閉じ込めてくれたなぁ! 俺がどれだけひどい目にあったか……! 俺のこと、忘れたとは言わせねぇぞ!」
「お、お主は! 生体魔法部品にされた奴じゃったか!?」
「地下牢に閉じ込められたって言っただろうがぁ!?」
「忘れたと言ったようなものですね」
マヘキさんの言葉に思わずうなずいてしまう。
新米女神ちゃんは転生者を怒らせる天才かもしれない。
ほら転生者キラーみたいな……自分で撒いて自分で殺すとはこれいかに。
「許さねぇ……! この逃げる時に盗んだ剣で、てめぇを切り裂いてやらぁ!」
悪党転生者は両手で巨大な剣を振りかぶると、より一層の輝きを放った。
明らかに普通の武器ではない。というかなんかこう、神っぽい雰囲気まで感じてしまう。
ん? 待てよ、なにかあったような……あれは確か……えっと。
――むむむ! 思いついたのじゃ! 王城に転生者しか使えない強い武器を用意するのじゃ!
「ああっ!? あの武器、もしかして転生者しか使えない強い武器では!?」
新米女神ちゃんがボソッと呟いて、確か武器を王城に送ってた記憶があるぞ!?
「ああっ!? あの後に色々あって、回収するの完全に忘れてたのじゃ!? ま、まあ代償を満たさないと使えないし……」
「つかぬことを伺います。あの剣は確か転生者が三年生き残ったら使える、という認識でよろしかったでしょうか?」
「そうなのじゃ!」
「龍宮寺さんはこの世界に転生してから三年経ってます。あの悪党転生者さんは、それより先に来ていましたよね」
「のじゃっ!?」
悲報。チート武器、悪党転生者に悪用される。
なんでそんな大事なものを放置しておくのか。本人の言った通り、完全に忘れてただけだろうが……。
「や、ヤバいのじゃ!? あれは流石にまずいのじゃ!?」
新米女神ちゃんの声がガチ焦りな件について。
わりと本格的にまずい状況なみたいだが、微妙にわかっていないことがある。
「新米女神ちゃん。そういえばあの武器ってどんな性能なの?」
チート武器なのだからかなり強いのだろうことは想像がつく。
だが異世界転生作品の主人公とて、最初からそのチートを使いこなせるとは限らない。ましてやこちらには魔王軍四天王二人に、魔力チートの龍宮寺もいるのだ。
そうそう負けるとは思えないのだが……と思っていると、新米女神ちゃんは小さく声を出した。
「ま、魔物」
「魔物?」
「……魔物殺しじゃ。あの剣を持っていれば、魔物関係の攻撃全て無効! またあの剣による攻撃は全て一撃必殺なのじゃ!」
なるほど、魔物絶対殺すマン……いやヤバすぎるだろそれ。
魔王軍絶対勝てないじゃん。
「な、なんでそんなチートかつ魔王軍絶対殺すマンの武器用意したの!?」
「だ、だってあの時点では魔王を殺させるのが目標だったのじゃ! それでなるべく力は絞った方がいいから、対魔物にのみ最強の武器だったのじゃ!?」
「没収できないの!?」
「て、転生者と人間関係はいじれないのじゃ! 転生者が所持してしまった以上、奪うのは厳しいのじゃ!?」
これ詰んでない? そう思った瞬間だった。悪党転生者が剣を振りかぶると、
「まずはてめぇだこのエセ神がぁ!」
悪党の剣が空を斬った。その瞬間にキングカーは真っ二つに両断されて、空気に溶けるかのように消え去っていく。
「ああっ!? キングカーがやられてしまったのじゃ!?」
こちら側の本体の新米女神ちゃんが悲鳴をあげる。
「え? いまの剣当たってなかったよね……?」
「魔物は空圧でも当たったら即死なのじゃ……」
「理不尽すぎない!?」
「だってチート武器なんじゃもん!?」
想像以上にヤバい。冗談抜きでチートの極みみたいな武器じゃん!?
そんなことを考えていると、悪党転生者は次は龍宮寺に向けて剣を構えた。
「よお。お前も俺の同類なんだろ? 同じ転生者のよしみで、殺さないでおいてやろうか?」
「…………」
「おいおいそんな顔するなよ? これでも仲間意識は持ってるんだぜ? 被害者同士、一緒にこの世界をぶっ壊そうぜ。魔物も人間も全て皆殺しだ! あのくそ神の造った世界なんてぶっ壊してやる! 俺が王城でどれだけひどい目にあったか!」
あ、悪党転生者、本当に悪党だな!? この世界をぶっ壊すだなんて正気の沙汰では……!
……いやでも三年もの間、王城に閉じ込められてたからなぁ。しかもあの王だと絶対ロクな目にあってない。
龍宮寺はしばらく黙り込んだ後に。
「……魔王国は見逃して欲しい。あそこは俺のもうひとつの故郷だ」
「はぁ? 見逃すわけねーだろ! なにが故郷だ! あのくそ神の世界全部ぶっ壊さないと気が済まねぇ!」
悪党転生者に説得の余地はなさそうだ。明らかに新米女神ちゃんにぶちギレている……。
「な、なんて奴じゃ! あいつは最低最悪の悪党じゃ!」
「そうだよ! あんなの許したらダメだよ!」
新米女神ちゃんとヴィナス様もかなり怒っているが、わりと向こうも正当な怒りなところがなんとも……。
いやそれにしたって世界を壊すのはダメだろう。俺は徹頭徹尾、そう言い続けてきたと思うし!
そして龍宮寺は悪徳転生者をにらみ返すと。
「断る。俺はこの世界を存外気に入っている」
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