第24話 玉座に突撃


 モニターにはひどい映像が映し出されていく。


『もうこの暴走は誰にも止められないのじゃあああ!!!』


 キングカーは城門を突破した後、縦横無尽に帝都を爆走。


 速度と敵兵をぶっ飛ばしながら、とうとう敵本拠の城まで侵入した。


 中世ファンタジー系街を蹂躙するのは、けたたましいエンジン音と排気ガスの車だった。


「だ、誰かあの謎の馬車を止めろぉ!?」

「た、大変だ! 騒ぎに乗じて罪人が逃げたぞ!?」


 そしてさらに城内部も車で走っていく。皇帝に不幸だったのは、城だけあって廊下が広めなせいで車が走れる感覚があったことだ。


『ふふふ! 城の間取りは事前に調べておいたのじゃ! 以前にも来たしのう!』


 キングカーin新米女神ちゃんが叫んでいる。


 神様なんだから異世界の帝国の城くらい、調べなくても知っておいて欲しいというのは俺の我儘だろうか。


 そうして車は映画ばりに階段まで登ってしまい、とうとう玉座の間までたどり着いた。


 そこでは皇帝が律儀に玉座の間に座り込んでいる。


『神託通り来てやったぞ、皇帝! おとなしく暗殺されるのじゃ!』

「なにが暗殺だ! こんな派手な暗殺があるか! せめて暗い時に来ぬかバカ者がっ!」


 新米女神ちゃんに反論する皇帝。


 俺も正直そう思ったから否定しづらいのがつらいところだ。


『我は神じゃ! いついかなる時でも来てやるのじゃ! さあ皇帝よ、首を差し出すのじゃ! さすればお主の死後、多少は罪を軽くしてやってもいいのじゃ!』

「ふざけるな! 勝手にお主の尺度で罪人にするでない! やはり貴様とは相容れぬな」


 皇帝がそう告げた瞬間、部屋の床の一部がフタのように開いた。そして中から続々と衛兵たちが現れていく。


『のじゃ!? 岩下のアリみたいなのじゃ!? ほれ岩を持ち上げたらいっぱいいる気持ち悪いアレ!』

「なにが岩下のアリか! 余がこの騒動で考えもなしに玉座にいるほど、愚か者であるわけがなかろう! 貴様らを罠に嵌めるため、自らおとりになったのよ! 貴様という邪神から世界を救うためにな!」


 皇帝は勝ち誇った顔で笑うと、玉座から立ち上がった。


 床下から現れた衛兵たちはどれもガタイがよく、見るからに屈強な者たちだ。きっと近衛部隊とかそういうのだろう。


「なるほど。確かにあの状況で皇帝が逃げず、玉座に座って待つのはおかしな話です。罠と言われたら納得がいく」


 マヘキさんが小さく呟いた。


 確かにあれだけ騒ぎを起こせば、トップは普通は逃げるか……逃げなかったのは囮になるためとは。


 どうやら皇帝も自分が勝つために必死なようだ。そりゃ殺されたくはないか。


『なんてやつなのじゃ! 神に逆らうとは罰当たり者め!』

「そうだそうだ!」


 そしてそんな皇帝を責める新米女神ちゃんとヴィナス様。


 なお逆らわなかったら皇帝は転生者に殺される模様。


 彼女たちの言葉を使うなら、『皇帝は黙って殺されろ』ということなんだろうな。


 なんか微妙に皇帝を応援したい気持ちも出てきたが……。


「ふざけたことを抜かすでないわ! 余は貴様らも殺し、この世界を全て掌握する! 全ての人間は余の前に這いつくばるのだ! そして魔族よ、貴様らはみな殺す!」


 いややっぱりあの皇帝は生きるべきじゃないな!


 やはりここは転生者を応援すべきだ!


「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……な、なんとか追いついたぞ……」


 そして息を切らせながら部屋に入ってきたのは、棒人間もとい魔王軍四天王筆頭ディアベルバル。


 そういえばキングカーに乗ってなかったが、頑張ってついてきていたようだ。


 たぶん足が棒になっているが、元から木の棒なので大丈夫だろうたぶん。


 魔王軍四天王筆頭が入ってきたからか、玉座の間は静まり返った。王も衛兵も先ほどよりもより目が鋭くなり、転生者もディアベルバルも身構えた。


 キングカーのエンジン音がさらにうるさくなる。


「どうやら役者は揃ったようですね。魔法少女がいないのでスターはいませんが」

「新米女神ちゃん頑張れ! あの極悪非道にして神にあだなす皇帝に裁きを!」


 マヘキさんとヴィナス様もこの状況をかたずをのんで見ている。


 まさに一触即発だ。皇帝陣営と魔王陣営は互いに睨みあった後に。


「近衛兵たちよ! あのまがい物の神と魔王の使いを殺せ! 奴らこそがこの世界の異物共だ! 生かして帰すな!」


 皇帝の叫ぶとともに近衛兵たちが突撃し、転生者たちに襲い掛かっていく!


 対して魔王陣営も負けてはいない。キングカーがさらにエンジン音を大きくして、


『者ども! 我が命じるのじゃ! 奴らを迎撃して、皇帝を殺すのじゃ!』

「チッ! 仕切るのお前かよ!」

「なんでお前が仕切るのだキングカー! 私のほうが上だぞ!?」


 キングカーが敵兵を突撃してぶっ飛ばし、転生者が炎魔法で焼き払い、ディアベルバルが片腕を取り外して振り回す。


 数では皇帝側が勝るが、質では魔王軍側が上のようだ。


 ところで今更なんだけど魔王軍側でいいのだろうか。仮にも新米女神ちゃんは神様なのに、神側にしなくてよかったのだろうか。


 そうして戦いは加速していくが、やはり魔王軍側が優勢のままだ。 

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