新米女神ちゃんは異世界転生を司る神様になって、めちゃくちゃな世界を創るようです ~すぐ死ぬ転生者を救うためにご都合主義を考えよう。初期地点に武器を置いたり王城に召喚したりで~
第11話 魔王軍を勝たせよう。愚かな人王死すべし
第11話 魔王軍を勝たせよう。愚かな人王死すべし
俺達は魔王城下の街を半日ほど出歩いた。
街に住んでいるのは基本的に魔物だ。箱ゴブリンや箱スライム、線ミミズなどの定規でデザインされた魔物たちによる集落。
幸いなのは二足歩行のトカゲ人ことリザードマンや、頭にヤギの角を生やした悪魔人などのまともな人型も多くいることだ。
「新米女神ちゃん、リザードマンや悪魔人はどうやってデザインしたの?」
「そこらの本の絵を取り込んだのじゃ。本当なら我が手づから生み出すべきなのじゃが、どうしても時間が足りなかったのじゃ」
ハンドメイドをありがたがる人っているよな。もっと時間がなければ不幸な生命体は生まれずに済んだと思うと、ちょっと悲しい気もする。
「しかしやはりと言いますか、人間との文明レベルにはかなりの格差がありそうですね」
マヘキさんがメガネをクイッとした。
この街に連なる家は基本的に木造だ。この世界の人の国であるギャグザツ帝国とはレンガ造りだったので技術的には間違いなく負けている。
「じゃが魔物は人間より強いのじゃ! それに我が力を貸す以上、必ずや魔王は人を滅ぼすのじゃ!」
街を見回った結果だが、魔王が善政を敷いているのが分かった。
体の不自由な者には配給を行ったり、詐欺や暴行の類の禁止などかなりしっかりと政治をやっている。
もちろん王都以外で出来ているのかは分からないが、それでもあの人王よりはマシだろうという結論に至るには十分だった。
「神を直接愚弄した人間など、死すべしなのじゃ!」
「あの人間は絶対に許さないよ。美の女神であるボクを性奴にしようだなんて、何様であろうと処罰の対象だ」
「幼女に手を出す者のせいで、魔法少女という一般性癖が悪く言われるのです。万死に値します」
そもそも皆揃ってあの皇帝には怒っているので、なんにしても魔王についていたという話ではあるのだが。
もちろん俺も腹が立っている。異世界転生を馬鹿にされたのは気分がよくない。
自分の好きなモノを目の前で罵倒されたら不快になる。
「よし! さっそく魔王軍の強化なのじゃ! 魔物をいっぱい召喚して戦力強化して、切札として転生者も呼ぶのじゃ! あの人王に、我を侮辱したという失態を思い知らせてやるのじゃ!」
新米女神ちゃんは握り拳をつくって叫ぶ。
やる気になっているのはいいことだが気になることがある。
「魔王軍の強化はいいんだけどさ。今って魔王軍とギャグザツ帝国だとどちらが強いんだ?」
ようは現在の戦力差だ。
現時点で魔王軍の方が強いのか、それとも帝国の方が戦力があるのか。
「んー、ちょっと待つのじゃ。えーっと、魔王軍の兵力が千で、帝国軍は一万七千ってとこじゃな」
新米女神ちゃんは空中ディスプレイを操作して、二国の戦力を数値化したようだ。
……想像してたより遥かに魔王軍弱いな? てっきり帝国より強いとばかり思っていた。
「そんなに魔王軍が弱かったのですか? それなら私たちがなにもしなくても、いずれ魔王は滅んでいたのでは?」
「いやそれはないのじゃ。この戦力差はあくまで兵力差なのじゃ。魔王軍の魔王と四天王筆頭ディアベルバルはそこらの兵士じゃ殺せぬ。転生者でもいなければのう」
「質の魔王軍と数の帝国軍ってことかー」
ヴィナス様は楽しそうに笑っている。
なるほど。仮に帝国軍が魔王軍に勝てたとしても、魔王や四天王筆頭を倒せないから勝てないのか。
「そういえば四天王筆頭がディアベルバルだけどさ。残りの三人はどんな感じなの?」
ディアベルバルはいつも四天王筆頭と言われているが、よく考えたら他の三人を見たことも聞いたこともない。
仮にもそれほど強いなら、どこかで転生者の死因になりそうなものだが。
「いないのじゃ」
「いない?」
「まだ四天王はディアベルバルしか作ってないのじゃ。時間が足りなくてのう」
悲報。ディアベルバル、
おかしいと思ったよ。四天王なのに全然話題に上がらないと思ったら……。
「ふむ? なんでこの世界の人たちは、一人しかいないのに四天王筆頭と呼んでいるのでしょうか? おかしいことに気づきそうなものですが」
「それは我が世界を書き換えてるからじゃ。後で追加する予定じゃから、枠だけ事前に作っておいたのじゃ!」
「サラッと地味なところで神様してるなぁ……」
「我は女神じゃからな! しかしふむ」
わざわざ魔王四天王という概念だけ作っておくとは……。
新米女神ちゃんは腕を組んでしばらく考えたあとに。
「よし! じゃあ魔王軍強化のために残りの四天王を作るのじゃ! 我はすでにディアベルバルがいるから、ヴィナス様とマヘキとボーグマンで一体ずつ!」
新米女神ちゃんはすごく名案だと思っているようで、ドヤ顔で俺達を見てくる。
なんと俺達に魔王軍四天王を作れと!?
「へえ。面白そうじゃない。ボクは美の女神だし、もともとデザインを頼まれてきたんだからね」
「理想のキャラを作り上げろと。いいでしょう」
ヴィナス様は両腕を組んで伸ばし、マヘキさんが肩をコキッと鳴らした。二人ともすごく乗り気だ。
そしてそれは俺も同様だった。
だって自分でキャラを作ってそれが動くってことだろ?
そんなのロマンあり過ぎるだろ絶対やりたい!
「よし! じゃあ部屋に戻って早速作成じゃ! 誰がもっとも素晴らしい四天王を作るか! 我も負けんぞ!」
新米女神ちゃんも右腕をグルグルと回してやる気だ。
「ん? 新米女神ちゃんはもうディアベルバルがいるんじゃないの?」
「我も勝負に加わりたいのじゃ! 別に四天王がひとりくらい多くても構わんじゃろ!」
こうして俺たちは魔王軍四天王(五人)を作成することになった。
「あ、そうそう。新しく作る四天王は、お主らの異世界でのアバターにするつもりじゃ! なので自由意志は吹き込まないからのう! これであの人王を直接ぶっ飛ばすのじゃ!」
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