第7話 使い捨ての駒
俺は地球で強姦や強盗殺人をした後、うまく逃げて安らかに病死したら異世界転生した。
その時に少女から説明を受けたのだが、三回限りのサイコキネシスというチート能力を貰えるらしい。一回につき一体、どんな化け物でも殺せるとのこと。
三回使ったら虫になるとのことなので、実質二回だけの切り札のようだ。
別に問題はない。そもそもチート能力を使わなければいいだけの話だからな。
魔王? そんなの他の奴が倒せばいいだろ。俺には関係ない。
そうして気が付くと俺は、王城の玉座の間らしき場所にいた。
「来たか! 転生者を捕らえろ!」
「なっ!?」
俺は周囲にいた兵士らしき奴らに包囲されて、槍を突き付けられてしまった!?
「な、なんだいったい!?」
「貴様には三回限りのチート能力があると聞いておる! ならば我らの指示の下、三発とも有効活用させてもらおう!」
「ふ、ふざけんな!? てめぇらに使うぞ!?」
「やってみるがいい! 三回で三人殺した後、貴様は楽には殺さんぞ!」
「ぐっ……!?」
こうして俺は捕縛されて、両手両足を縛られたままどこかへ運ばれていく。
そして魔王軍とやらの戦いの場に連れてこられて、ドラゴン相手にチート能力を二回も使わされてしまった。
「またドラゴンか! ほらさっさとチート能力であれを倒せ!」
「ふ、ふざけんな!? 次に使ったら俺は……っ!?」
「使わないなら貴様は死ぬ方がマシな目に合わせるぞ!」
『ああっ!? 使い捨ての人間兵器にされてしまったのじゃぁ!?』
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今朝、新米女神ちゃんが迎えに来て、また俺は謎の寺の部屋らしき場所にいる。
すでにヴィナス様やマヘキさんも揃っていた。
「……半日生き残ったのじゃ! 新記録なのじゃ!」
「やったね! やっぱりチート能力は大きいんだね!」
新米女神ちゃんとヴィナス様は、今の惨たらしい地獄を見て喜んでいる。
モニター越しとは言えども、人が虫になっていく過程は酷かった。完全に虫になった瞬間に踏みつぶされたのも含めて。
ただ実際のところ、国の動きは合理的ではある。三回だけしか使えないチート能力者は、たぶん自分から望んで戦うことはしないだろう。
そうなると国としては無理やりでも戦わせたい。ドラゴン相手でも瞬殺なのだから間違いなく強いわけだし。
そうなると結局こういった強制徴兵が一番早いと。残念ながら人道とかの考えは、この異世界の国家にはないらしい。
「チート能力三回で半日なら、十八回使えれば三日生き残れるということなのじゃ! 希望が見えたのじゃ!」
おっと使い捨て駒の寿命を延ばす方向にシフトしてしまった。
転生者にとっては絶望でしかない件。異世界を地獄にするわけにはいかない。
「待つんだ新米女神ちゃん。これだと仮に転生者が生き残ったとして、絶対に感謝はされないと思うよ」
「仮になにか間違って魔王を倒せたとして、恨まれるのは間違いないでしょうね」
「た、確かにそうなのじゃ。そもそもチート能力を十八回も使わせられないしのう……」
俺とマヘキさんの説得によって、異世界の使い捨て転生兵器はなくなりそうだ。
これはあまりにも過ぎるからよかったよかった。
「使用可能回数が決まっているチートは、使い勝手が悪すぎますね。森などに転生位置を変えたとしても、雑魚相手に浪費させられて終わってしまう。永続的に使える能力にすべきでしょう」
「でも痛みを代償にする能力を与えたら、気絶して殺されてしまったのじゃ」
「なら力を更に弱くするという方向でしょうか」
マヘキさんはメガネをクイッとした。
確かに彼の言う通り、力を弱体化させて使い勝手を良くする方がいいだろうか。
「それだと魔王に勝てぬ気がするのじゃが」
「魔力が通常の人間より多い、くらいではどうでしょうか? それで異世界で修行してもらえば、いずれは魔王に勝てるかもしれません」
「異世界転生作品でもたまにあるな。魔力の量はチート気味だけど、魔法の技術は自分で磨き上げるってのが。それなら最初に与える力は軽いから、デメリットも減らせるんじゃないか?」
この魔力チートのいいところは、魔法自体は自分で積み上げた技量というところだ。
神様から与えられた才能こそ根源にあるものの、それ以降は自分で磨き上げたというのが自分の力と誇れる。
地球だって生まれもっての才能はあるしな。両親が両方とも身長高くて運動神経抜群とか。
「た、確かにそうじゃ。無条件で与えるのは問題あるが、異世界に転生してから自分達が学ぶなら大丈夫なのじゃ!」
「そうだね! 持ち前の魔力が多いくらいなら、代償も足が少し不自由とかくらいでいけるんじゃないかな!」
新米女神ちゃんもヴィナス様も好感触だ。
これならいけ……いやお二神はいつもだいたい好感触な気がする……。
ここはマヘキさんの意見次第で期待度を変えることにしよう。
「ところで転生者に少女はいないのですか?」
「異世界に飛ばされるような悪事を働いた者は、大抵が成人済みじゃのう」
「それにだいたいが人を殺してるからねぇ。やっぱり女性より男性のほうが力も強いし多くなるかな」
「そうですか、それは残念です」
心底がっかりしている様子のマヘキさん。ダメだこの人。
「そもそも魔法少女って善人では? 悪人が転生した時点で無理なのでは」
「悪でしたが改心する敵魔法少女もいますよ」
「なるほど……」
「よし魔法チートの転生者よ! 今度こそ三日の壁を突破するのじゃっ!」
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