第15話 Bランク昇格試験
「それではこのあと11時から試験を行いますので演習場までお越しください。」
「え?」
Bランクダンジョンを攻略した後、まだBランクダンジョンは危険と判断しCランクをいくつか攻略した。
夏休み中が終わると授業でダンジョン攻略が今のペースでできなくなるので実際かなりのペースでの攻略になった。
探索者ランクがBランクの基準を満たしたので探索者協会の本部へ申請に行くと受付で試験があると言われ驚く。
Cランクまでは基準を満たせば書類申請で通り、Bから試験があることは知っている。
だが通常は試験官の準備などで申請から2週間前後かかるはずで数時間後に試験を受けることなど無いはずだ。
「ええっと、今日の11時ですよね?申請して1時間くらいで試験受けられることなんてあるんですか?」
「すみませんが試験日は個別に決まりますので時間がかかることもあれば早いこともあります。」
「それは分かりますがこんなに早いことってあるんですか?」
「今までで一番早いと思います。これまでは早くても一週間はかかっていたと思います。」
「何か不都合でもありますか?本日受験できないのであれば日付の調整をいたしますが・・・」
「いえ、受けますが早すぎるのが少し気になって。」
たまたま別の人が午後から試験を受けるからそのついでということはあるのだろうか。
いや、それにしたってまず書類審査があるはずでそんなに早く終わるとは思えないが・・・
葉月は探索者協会に連れてくると正体がすぐにばれることは無いと思うが、
それでもリスクを避けるために家に置いてきていた。
1時間ほどあったので協会内のショップなどのぞいて適当に時間を潰し演習場へ向かった。
「11時からBランクの試験を受ける予定の橘です。」
「橘樹さんですね。第一演習場へお入りください。」
受付を済ませると第一演習場へと向かう。
演習場はサッカースタジアムくらいの広さで、壁は魔鉱が使われ魔核によって壁面が強化されているようだった。
とりあえず中心に行って待っていると俺が入ってきた入り口から、よく知る人物が入り近づいてくる。
「・・・・島津先輩、、、」
「ああ、私の事を知っているのか?申し訳ないが私は橘の事は今日初めて知った。」
「今年は1年生の夏でBランク申請する者が多くて驚いた。しかもCクラスからなんて前代未聞だ。」
「島津理事長・・・・」
島津先輩は俺の前世でのパーティーメンバーだった。
隣にいるのは先輩の父親で探索者協会と学校のトップである島津忠良氏だった。
AAAランクの探索者で、今は一線を退き若い探索者の育成に務めている。
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前世で特別な才能も無い俺がAランクになれたのは先輩のおかげだった。
面倒見も良く頼りになる先輩だった。頭がおかしくてやばいが。
「なぁ、橘。お前ちょっと貧弱じゃないか?」
「は?」
「姐さんがおかしいだけで俺だって平均的な探索者より強い方ですよ?」
「いやだってダンジョン攻略するとき橘だけいつもボロボロだろ?」
「A級ダンジョンなんて行ったらそりゃ無傷ってわけにはいかないでしょ。」
「お前以外ほとんど誰もダメージ受けてないぞ?」
見渡すとたしかに誰もダメージを受けてないように見えた。
だがおかしい。例えAランクパーティーであっても楽にA級ダンジョンを攻略できない。
このメンバーが異常なのだ。だがそれを言っても姐さんは聞き入れない。
「言い訳するな。別に責めてるわけじゃやない。心配しているんだ。」
「あ、ありがとうございます?」
「よし。じゃあ特訓するか。」
「はい?」
地獄だった。特訓?姐さんがひたすら俺をボコボコにしているだけだった。
だがたしかに効果はあった。圧倒的な速さに慣れることが出来たし、
殴られ続けることで物理的な防御力がかなり上がった。
だが基本耐えるだけで攻撃面はあまり成長しなかったのだ・・・・
その後、他のメンバーも特訓と称して俺を魔法の的にしたり実験台にしたりひどい目にあったのだ。
ただそれが無ければ俺はBランク止まりだったと思う。
Aランクに上がり、なおかつあの年まで生き残れたのは間違いなく皆との特訓のおかげだった。
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「たまたま本部に来ていたら我が校の生徒がBランク申請しているのに気づいてね。」
「しかもAクラスどころかBクラスでも無いんで驚いてね。直接試験を見させてもらうことにした。」
「今年は既にAクラスから3人もBランクに昇格している。」
「最年少記録を更新しているわけだがこの3人は親もAAAで全員期待されててある意味誰も驚かない。」
「でも君のことは悪いが誰も知らない。所属クランも無く親からのサポートも無い。」
「どうやって規定数の魔物を倒してダンジョンを攻略したんだね?」
「夏休みひたすらダンジョンに籠ってただけです。攻略は運も良かったので。」
「・・・・ふむ。まぁいいだろう。それで試験だが。」
「アタッカーは攻撃力をみるんですよね。俺は登録通りヒーラーですので回復力を見せればいいですか?」
「通例だとそうなるが、今試験の見直しをやっててね。」
「最近、Bランク探索者のダンジョンでの死亡率が高くなっている。」
「威力の高い攻撃だけできても自分の身を自分で守れないようじゃ意味が無い。」
「それで今後は実戦試験をやって、B級ダンジョンでも戦える者だけを昇格させようと思ってね。」
「いや、俺ヒーラーなんで・・・」
「ヒーラーは盾役が守りますよね?戦闘力求められてないですよね?」
「それに死亡率って言うならヒーラーがそれこそ重要でしょう。」
「高ランクヒーラーを増やすことが死亡率を減らすことに繋がりますよね?」
「一理あるが、結局その貴重なヒーラーに簡単に死なれては困る。」
「今後はBランク昇格試験はAランクによる実戦によって実力を見せてもらうことにする。」
「分かりました・・・それで試験官はどなたですか?まさか理事長自らじゃないですよね?」
「ああ、それは・・・・・」
「私だ。」
試験官を宣言したとほぼ同時だった。無警戒のところに突然全力で殴って来やがった。
なんとかガードが間に合うも威力を殺しきれずに10m以上飛ばされる。
「お前!頭おかしいだろっ!」
いきなり攻撃された怒りから言葉を選ぶこともできずに言い放つ。
「試験時間は既に過ぎている。試験中だからな攻撃して何が悪い。」
「それに魔物相手にいきなり攻撃するなんておかしいなんて言うつもりか?」
「ダンジョンで生き残れるか試す試験なんだ。暴言を吐かれる謂れは無いぞ。」
島津彩という人はこういう人だった。何も悪びれもせず堂々と語る。
たしかに言っていることは間違いではない。
いや、やはりおかしい。ダンジョン内で気を抜いたのならともかく、
探索者協会内で昇格試験会場で会長と話している途中で奇襲を受けることなんてどう考えても無い。
それでも頭のおかしい人に言っても仕方ないのだ。
俺はひとまず落ち着いて無理だと思いつつも一応反論する。
「・・・・言っていることは分かりますがやり過ぎでしょう。」
「今の攻撃って下手したら死んでますよ?というか魔法職にしていい攻撃じゃないでしょ。」
「橘はたいしてダメージ受けてないじゃないか。」
何が悪いんだと言う態度は全く変わる様子が無い。むしろ機嫌良さげに話している。
「ダメージ受けたけどヒーラーだから自分で回復したんです。」
「だがすぐ回復出来たんなら大きなダメージじゃなかったんだろ?」
「正直驚いたぞ。一撃で終わると思ったら、普通に立ち上がって来るじゃないか。」
「一撃で終わると思った?って最初から殺る気満々じゃねーか!」
「あ、いや、中身の無いBランクが増えてるから今後は試験で一発厳しさを教えるって話になったからな・・・」
「・・・・会長、やりたいことは分かりますけどそれを彩先輩にさせないでくださいよ、、、」
「手加減とか上手にできるタイプじゃないでしょ?」
「いや、本当に死んでたかもしれないんですからね?」
「・・・・すまなかった。次からやり方はしっかり考えよう。」
「で、もう試験は終わりでいいですか?Aランクの本気の奇襲防いだんだからある程度の実力は見せられたと思うんですけど。」
「ああ、、、」
「駄目だ。」
「え?」
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